12話 コスモス加入
音速を超える速さで県外まで移動した僕たちにとってここは見知らぬ地。
帰りも走って帰りたいところではあるけど、帰り道は壊したものはもとに戻らないのであきらめて公共交通機関を使う必要がある。
僕たちはバスを利用して帰ることにした。
幸いなことに席に座ることができたし、それからはコスモスについての存在や、確認されてるスターダストについての情報をいろいろ教えてもらった。
僕としてはコスモスの敵対組織が少し気になった。
敵対組織といっても、正面切ってバチバチにやりあってるわけではなくヤクザと警察のような関係だ。
その敵対組織としている人たちは江戸時代まで幕府に仕えてスターダストと戦っていたらしいが、明治時代にまで時代が進み、民主主義の世の中となると本当にその存在が定かか把握することができない役人たちが彼らに渡す報酬を渋って払わなくなっていった。
命の危険もある戦いに身を投じているにも関わらず、報酬が出されなくなると当然怒る。
本来ならスターダストとわざわざ戦わなくても適当に強盗すれば証拠を残すことなくできるような連中だ。
彼らは仕事をボイコットし始めるようになり、新たな職業としてヤクザの護衛やヤクザの事務所を立ち上げ始めるようになった。
すると当然のようにこれまでにない大規模な自然災害が頻発するようになり、国家予算から報酬が支払われるようになり多くの人がもう一度コスモスとして戦線に戻ったが、それでも一部の人たちはその事業を辞めずに現在に至るというわけだ。
僕がこれから関わることはないだろうけど、やはりそういう存在はいるのかと思った。
さすがにしばらく移動を続けていくにつれてとっさに思い出す話題も少なくなってきたらしく、僕も受験を控えた身としてバスの中で暗記物を覚えていた。
優衣さんも同い年で受験生勝つ理系だったので科学の問題を出し合ったりして何気に有意義な時間だったと思う。
「それじゃあ、これからでもコスモスに入る手続きでもしに行こうか」
乗り換えを何度かしたところでようやく僕たちの実家近くのバス停に止まると優衣さんが突然言い出す。
「……?今ってもう八時過ぎてますよ……さすがに市役所も閉まってますよ」
「ああ、あれよ。あれ。……婚姻届けって二十四時間受理されるじゃない。それと同じでスターダストはいつ現れてもおかしくないから二十四時間受付されてるのよ。もちろんこの時に住民票を移したりするような手続きも頼めばやってくれるよ」
僕が不思議そうに言うと優衣さんは知識の乏しい僕に楽しそうに教えてくれる。
僕のこれまでの生活で全く知らなかった組織ではあるけど、思ったよりも世間に浸透してある組織であるようだ。
「へぇ……じゃあ、今度から順番とか気にせず手続きをやってもらえるようになるんだ」
「まぁ、そうね。営業時間が終わった後に来てマイナンバーカードを作ってたコスモスの人たちもたくさんいるし」
そうはいってもわざわざ市役所に行かなきゃいけないような用事なんて学生の僕にはめったにない。
僕たちは夜間受付用の窓口へと向かう。
夜間窓口にいる人にコスモスのバッチを見せると市役所の地下に連れて行ってもらえて、様々なサービスや手続きができるらしい。
これでも一応命を懸けることにはなるんだ。
対価として何がいただけるかはしっかりと確認しておかないと……
「亜樹、こっちよ」
優衣さんが指をさす方向に行くと結構広い、窓口が見える。
「ここがコスモス専用の窓口よ。これからはここにきたら報酬の受け渡しから武器の発注、支援金の申し込みにパーティーメンバーの募集とかいろんなことができるからね」
優衣さんに言われるがままに受付へ進んでいくと四十代くらいだろうか?
くたびれたおっさんが暇そうに座っていた。
「すみませーん」
僕が話しかけるとくたびれたおっさんは僕を視界に収め、新顔だからだろうか?僕の頭のてっぺんからつま先まで油断なくなめるように見つめる。
僕何かしたかな?
「健司さん、そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。私の推薦で今日からコスモスに入って私とパーティーを組む橘亜樹君です」
僕を警戒していたようだ。
それもそうか。
確かにここに来る人間ということは超能力が使えるということだ。
どんな人間か警戒してなくてはいけないと考えるのも当然だろう。
「はぁ、ならいいか。……推薦ってことは今日加入するってことでいいんだよね?」
「はい、よろしくお願いします」
さて……加入するには何か条件でもあるのだろうか?
超能力者の集団だ。
ただ書類を書けば加入できるというわけではないだろう。
「じゃあ、ちょっと埋めるべき項目が多くて申し訳ないけど、あそこの机でこの書類を埋めて行ってもらってもいいかな?」
そういいながら二十枚くらいだろうか?
奨学金を申し込む際の必要事項よりも多いくらい書くべきことがありそうだ。
内容は命の保証ができないということから報酬の払い込み先まで多岐にわたる。
「よし!手伝うから一緒に書こうか」
「よし!ようやく書き終わった!」
「じゃあ、これを出してバッチを受け取ったら晴れてコスモスの仲間入りだね。パーティー申請は私のほうでしておくね」
実技とかそういったものは一切なかった。
ちょっと思ってたよりも登録に時間がかかってしまってすでに午後十時を過ぎてしまっている。
この時間帯にいくら強くても美女一人で歩いて帰すわけにもいかないか。
「そろそろ帰りますか?」
「まぁ、そんなとこでしょうね。亜樹も私も受験生ですしね」
優衣さんに出会ってから僕の一日の勉強時間は格段に減ってしまったけど大丈夫かな?
僕って地頭がいいわけでもないし、一応地元の国公立大学を目指しているわけだけど……
もともと放課後に友達と一切遊ぶことなく勉強してようやく受かるか受からないかのレベルだったのに……
優衣さんの受ける大学がどこかはわからないけど……大丈夫なのかなぁ?
「亜樹って理系ってことだから国公立大学を受ける感じ?」
僕が受験生というワードに敏感に反応していたことから何かを感じ取ったのだろうか?
「まぁ、そうですね。一応僕って進学校ですからそこに入れてくれた両親的にそこがボーダーラインかなって思ってます」
一応地元の国公立大学を第一志望にしている。
「反応を見る限り、そのボーダーラインも怪しいってことかな?」
優衣さんは片眼をつむりながら当てちゃったかな?って表情をする。
あれ?僕、煽られてる?
「それは受験生には禁句でしょ」
てか、僕、優衣さんの口車に乗って一週間学校を休んでスターダストが来るのを待ってたけど、僕の学校、明後日からテストじゃん!
定期テスト、それは受験生にとっては模擬試験には劣るものの、試験本番の練習にもなる貴重なイベントであり、自分の理解ができてない内容や苦手分野を明らかにしてくれる大切なイベントだ。
年に三回から四回しかないテストに本気を出せない奴の受験がうまくいくはずないとクラスで最も成績の悪い竹中君が言ってた。
竹中君が言うんだから間違いないはずだ。
「……僕、明後日からテストだけど、優衣さんはこんな時期に一週間一緒にいたけど大丈夫なんです?」
まぁ、優衣さんから誘ってきたことなんだし、優衣さんは勉強ができる人なのだろう。
テスト勉強をしなくてもいいくらい。
羨ましい限りだ。
「テスト勉強か……私は大丈夫だけど、亜樹ってずっと私と一緒にいたけど、テスト勉強大丈夫なの?」
逆に聞かれた。
「僕の今の表情を見て大丈夫だと思います?」
できるだけ絶望に満ちた表情を作ってみる。
「亜樹っていつもそんな表情じゃない?」
あれ?
僕っていつもそんなに精気のない表情をしてた?
「いや、僕は普段はいつも笑顔ですよ!」
「――えっ……あっ、ごめん」
謝るな!
まぁ、テスト勉強をしなきゃいけないって言っても僕の高校は進学校で、もう受験までに進めなきゃいけない内容は一周終わってるし、何とかなるかな?
「……そういえば、私がスターダスト毎日倒そうって誘ったんだっけ?あっ、なんだか悪い気がしてきた……勉強今からでも見てあげようか?私の教え方はスパルタだけど」
「えっ!いいの!」
スパルタだなんて本当に?
すごくうれしい!
「まぁ、私たち、もうチームだし、これくらいの交流くらいあってもいいんじゃない?ついでにもうチーム組んだんだから敬語じゃなくていいよ。命を助けたことなら、亜樹だって人の命を助けることができる立派な人なんだから」
「そっか、じゃあ、さんをつけないほうがいい?」
「まぁね。社会人のチームならチームメイトでもさんとかつけるのかもしれないけど、私としては仕事仲間じゃなくて一緒に戦う仲間が欲しいからね」
「じゃあ、ゆいぴょん……明日いつから勉強始めようか?」
「ゆ、ゆい……ぴょん……」
なんだかゆいぴょんの表情が険しくなったが、きっと僕のせいではないだろう。
「なんだかんだ今日は疲れたでしょう?集中のできてない状況での勉強の効率は悪いから明日八時に集合しようか。定期テストでしょ?科目も多いだろうし私が亜樹の家に行ってもいい?」
ぼ、僕の家にゆいぴょんが?
確か明日は両親も妹もいたはずだ。
大丈夫かなぁ?
「もちろん。ってか、僕のために朝からすごくありがたい」
「まぁ、もしもいつかカルナクスの螺旋みたいな強敵が現れたとしたら前線で体を張ることになるのは亜樹なわけだし、今くらいは前払い分だと思って私の厚意を受け取ってよ」
「まぁ、僕の命救うっていう対価ってものをその時はゆいぴょんに教えてあげるよ」
「それはどうも」




