表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/6

一途なプラン

 兄さんを愛している


 それはもう、最初に出会った瞬間から決まっていた。


 けれど、私はあくまで「妹」。たとえ血が繋がっていなくても、それは世間的に恋愛対象ではない立ち位置──同じ屋根の下で暮らすという莫大なメリットもあるが、基本的には“不利”だ。


 結衣には、その不利な状況を覆すために用意した、二つの行動プランがある。もちろん、完璧とは言えず、予想外の事態が起こる可能性もある。

 今日は、そのプランを見直す日。結衣は定期的に、現状と照らし合わせながら内容を更新している。



 第一プラン。


 本命、理想の形。兄さんと自然に恋仲になり、最終的には結婚する。

 そのために、日常のあらゆる場面で兄さんの隣にいる。食事、洗濯、目覚まし――すべて“自然な妹”として支える。


 少しずつ距離を縮め、視線や仕草、声のトーン、軽いスキンシップで異性として意識させる。 最初は自然な形で、でも徐々に、それとわかるほどに露骨にしていく。


 兄さんがどれだけ鈍くても、嫌でも私の好意を理解するように。

 無視できない存在として、意識の奥に深く染み込ませる。


 そして“いける”と判断した、その瞬間に告白する。

 もちろん、判断以外にも告白する条件はつけているが、ほぼ達成している。

 ――兄さんが私を女性として意識していること。

 ――他の女性と明確な進展が見られないこと。

 ただでさえ不利な立場なのだ。こちらから仕掛けなければ、何も始まらない。

 待つことは、最も愚かな手段になる。

  ――ただし、肉体的な既成事実を作るような手は取らない。

 それは兄さんの意思を尊重するためであり、私の愛は“強引さ”ではなく、“自然に選ばれること”でなくては意味がない。……もっとも、もし兄さんのほうから求めてきた場合は、その限りではない。 拒む理由など、どこにもないのだから。


 関係が深まれば、大学卒業までに両親を説得し、兄妹から正式に夫婦になる。

 このルートの将来設計は別冊にまとめてある。


 問題は、万が一、告白して断られた場合である

 その場合、私は絶対にあきらめないと、その場で兄さんに宣言する。

 こうなった以上、本心を隠して行動するのは逆効果だと思う。


 泣きながら兄さんに抱き着いて、困らせてやるつもりだ。

 少しくらい感情的になるのは、仕方ない。

 振られても一緒に過ごせるのは兄妹の強みだ。


 そして、第一プランは一度終了と判断し、即座に第二プランへ移行。



 第二プラン。


 ※このプランはいまだ検討の余地あり。

 内容はシンプル。兄さんが高校を卒業する前に、特定の彼女ができるように仕向ける――その関係を私が選び、導く。


 もし兄さんが大学に進学すれば、人間関係や生活圏が急激に広がってしまう。

 私の手が届かない場所で、知らない誰かと恋に落ちるかもしれない。

 それだけは絶対になんとしても避けなくてはならない。絶対に。


 だからこそ、今のうちに“選択肢”を限定する。

 対象は、美羽先輩か、秋月先輩。

 兄さんのそばにいて、私の目が届きやすく、そして信頼関係を築ける相手。


 まず、兄さんとの関係性が良さそうなほうを見極め、対象を一人に絞る。

 そしてその人に、兄さんのことをしっかり好きになってもらわないと困る。

 この時点で時間は一年も残されていない。失敗の猶予など、存在しない。

 だから私は、兄さんの魅力を全力で推して、とにかくその気にさせる。

 同時に、その彼女とは信頼し合える関係を築いていく。


 表向きは妹として、裏では同じ目線で兄さんの隣に立つために。

 なぜなら、これから先の人生――私たちは兄さんを挟んで共に歩む可能性があるのだから。


 そして、兄さんと彼女の関係が順調だと判断したとき。

 私は静かに、すべてを明かす。


 自分もまた兄さんを愛していたこと。

 告白して振られたこと。

 それでも気持ちは消えなかったこと。


 続けて、懇願する。

「兄さんの恋人があなたでも、私も隣にいていいですか」

「兄さんを取り合うより、一緒に抱きしめた方がいいと思いませんか?」

「あなたと並んで、兄さんの“彼女”でいさせてください」

「私は、兄さんを愛しています。あなたも、そうでしょう?」

「ねえ、ふたりで、兄さんを幸せにしませんか?」


 半ば脅しのように聞こえるかもしれない。けれど、それでもいい。

 私は本気でその人と親友になったし、心から信頼している。

 だからこそ、その関係に甘えて、最後の願いを託すのだ。


 ――今度は、ふたりで兄さんにアタックする。

 恋敵としてではなく、共犯として。

 抜け目なく、逃げ場を与えずに、じわじわと追い詰める。


 うまくいくかはわからない、だけど、なりふり構ってはいられない。

 文字通り、運命をかけたギャンブルになると思う。



 第三プラン。


 ***********


 ***************


 ******************



 「本質」を忘れてはいけない。


 理想は、もちろん。兄さんと、両想いで、夫婦になって、ラブラブで過ごすこと。


 でも、それは“ベスト”なだけ。


 “絶対に達成すべき目的”は、 兄さんのそばで生きること、そして兄さんと愛し合うこと。


 そのためなら、他の女性が隣にいても構わない。

 ハーレムであっても、共有であっても…。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ