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正ヒロインがグイグイ迫ってきます

魔導学園の校庭には、訓練用の「模擬結界迷宮」が張られている。


今日の課題は――

《複合魔術演習・チーム対抗サバイバル》。


内容は、2人1組で結界内に放たれた魔物の討伐と制圧ポイントの確保。

ただし、それぞれの得意属性が試される魔法領域で構成されており、相性が勝敗を分ける。


リリアナの得意分野は【火・風】。

そして――致命的に苦手なのが【水・氷】。


しかし、今回の結界の主属性は「氷」。


つまり――不利。


さらに、クラス編成でくじを引いた結果、彼女のパートナーに選ばれたのは……


 


「よろしくお願いします、リリアナ様っ!」


「……また、あなたですか」


エミリア・ローゼンハイト。

氷・水属性の魔力適性が異様に高い、地味にすごい平民出身の転入生。

乙女ゲーム《薔薇の輪舞曲ロンド》のヒロインであり、王太子 セシル=アルフォードと結ばれる運命になっている。


そんな彼女だが、


「リリアナ様と組めるなんて光栄です!さあ、敵を氷ごと粉砕しましょう!」


「いや、あなた“氷ごと”って……氷の結界を守る側ですから今回は……!」


「な、なるほど!」


(どうしてこの子、すぐバトルマンガみたいなノリに……)


なぜか、私に懐いている。何故なのかは分からない。


ーーそもそも、作品では悪役令嬢だったリリアナがヒロインを目の敵にして勝手に嫌っていただけで、エミリア自体が嫌っていた描写は描かれて無かったわね…


なんなら話しかけていた描写もあったような…


だからこんなにも馴れ馴れしいのかしら…?

それにしてもこの距離感はおかしい気もするけれど…



困惑していたリリアナに、魔導訓練教官から指示が出る。

 

「氷の迷宮・第一階層から順に、2人1チームで攻略してもらう!

下の階層に行けば行くほど、段々強い魔物が出るため、注意が必要になってくることを忘れないように!」


ーーなるほど。あとは自分たち次第で攻略していけってことね。

ちょうど使いたかった魔術もあることだし、有り難い訓練だわ。



「リリアナ様っ!頑張りましょうね!!

背中はこのエミリアに任せてください!!」


「…頼りにしているわ」


「リリアナ様ー♡!!」


(本っ当に、急にどうしちゃったのかしらこの子…)


ーーー



敵出現! 氷属性の魔獣ブリザ・フェング


リリアナは咄嗟に攻撃魔術【爆炎弾】を構築するも――


「氷結結界が吸収していく……!」


「リリアナ様、私に任せてくださいっ!」


エミリアの詠唱は鮮やかで――


《水よ、凍てつく刃と化し、我が盾となれ――《氷槍陣アイスランス》!》


放たれた氷槍が魔獣の関節を狙い撃ち、一撃で行動不能に!


 


「……見事ね。まさか、これほどとは」


「えへへ、氷ならちょっとだけ……得意で……」


氷結地帯を先導しながら笑うエミリアの背中は、いつもよりずっと頼もしく見えた。


(この子、普段は天然だけれど、魔術となると……本当に芯が強い)


 


第二階層:罠地帯にて


突然、足元が抜け、2人は狭い落とし穴の中に落下。


エミリアがリリアナを庇って着地した結果――


「り、リリアナ様!? 大丈夫ですか!?」


「ええ……って、ちょっと!? どこ触って……!」


「だって落ちてくるリリアナ様、姫様抱っこで受け止めたくて!」


「あなたは何の騎士なの!?」


「百合の騎士です!」


「うるさい!!」


でも、ほんの少し――笑ってしまった。


 

こうして思ったより着々と攻略は進み、

 


訓練終了後、成績発表となった


ーー


チーム“リリアナ&エミリア”は、なんと総合得点【1位】。

魔獣の討伐数と、エリア制圧スピードが突出していた。


周囲の生徒たちは驚きの目で2人を見る。


「……リリアナ様が、あのローゼンハイトと手を組んで、しかも笑ってる?」


「え、もしかして仲良し……?」


 


リリアナは、人々のざわめきを背にしながら、そっとエミリアを見た。


「今日は……助かったわ。感謝しているわ、エミリア」


「ひゃ……っ、初めて名前で呼んでもらいました!!」


「そこ! 叫ばない!」


「でも嬉しい! 記念にその瞬間をスケッチブックに――」


「やめなさい!!」


 


でも、リリアナの表情はどこか柔らかい。


(魔術だけじゃない。……この子のまっすぐさは、時に私の鎧を溶かしてしまう)


(それが、怖い。でも、少し――心地いい。

まさかの敵キャラと仲良くなるなんてね…

いつからルートが変わったのかしら、そもそもこんな場面無かったのに。

私が婚約破棄したところで変わってしまったのね。)



「リリアナ様?」


考え事をしていたリリアナを心配し、覗き込むエミリア


「なんでもないわ。」


(まぁ、とりあえずいい方向に向かってると思っておきましょうか。)


「リリアナ様ー待ってーー!」


リリアナは段々と変化していく運命を感じることとなった。

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