断罪回避のために攻略対象全員に好かれてみせます
悪役令嬢リリアナ・ヴェルシュタインに生まれ変わった私は、状況を整理する間もなく、断罪イベントがやってくることになった。
この乙女ゲームの鍵を握る3人。
王太子・セシル=アルフォード。通称、氷の王子/本命ルートキャラ
性格は冷静沈着・他人に興味がないキャラ。
原作ではヒロインに心を開いていくが、悪役令嬢には冷たく、
【転生主人公の第一関門】「好感度マイナススタート」「でもこの人が断罪のカギ」と要素が多い。
次に第二王子・レオン=アルフォード。性格は、快活/社交的な問題児
自由奔放過ぎて、お兄様に叱られてた所をよく見た。でも、剣術の腕は一流。
一見、目立ちそうなキャラだけれど、この前作のゲームでは隠しキャラだった。
だけど、容姿端麗なルックスから問題児っぷりが母性をくすぐられた女性達の間で人気が高まり、今作では中心ルートのひとつに昇格した。
そして、最後。
公爵家の幼なじみ・ユリウス=ヴェルシュタイン。
表向きには、忠犬系幼なじみなんだけど……重めの執着心からくるリリアナへの思いの攻略には手こずった。
性格は、誰よりも冷静、でもリリアナには不器用なほど甘い。
厄介なのが、原作では“悪役令嬢リリアナの手先”だったってこと。ずっと邪魔されて、正規ルートから外されたり大変だった思い出が……
それでも、一番の味方はユリウス。味方だと心強い。
断罪イベントのこの日は、
私や攻略対象3人が通う、
王立ヴァレンティア高等魔導学園(通称:ヴァレンティア学園)で年に一度の王室主催舞踏会が開催される日。
貴族子女や功績ある平民の特待生などが通う、この学園で年に一度開かれるこの舞踏会。
来賓は主催の王族や公爵家、伯爵家だけではなく、多くの貴族や、学園に通う親族も含め賑わう。
華やかな音楽と、煌びやかな衣装。貴族の子女たちは一様に浮かれ、少しでも王家の目に留まろうと優雅に舞っている。
――私は、ずっと冷静だった。
なぜなら、今日こそが**“物語の転機”**であると、知っていたからだ。
この舞踏会は、ゲーム原作で“悪役令嬢リリアナがヒロインに断罪される”イベントの発火点。セシル王太子がヒロインを庇い、婚約破棄を告げる――その定められた筋書き。
でも今の私は違う。
だからこそ、その“未来”に、先手を打たねばならなかった。
「――リリアナ・ヴェルシュタイン。ご出席感謝する」
声をかけてきたのは、会場の中央に立つ、王太子セシル=アルフォード
銀糸のような金髪、整った容姿、堂々とした佇まい。誰が見ても“完璧”な第一王子。
だが私は、彼がこちらに一歩近づいてくるのを見て、深く息を吸った。
……来た。
「リリアナ。最近の君の言動について、いささか疑問があるとの声が――」
「王太子殿下」
私は、彼の言葉を遮った。
会場がざわつく。貴族子女たちが、興味津々にこちらを見ていた。
彼の背後には、金髪の平民出身ヒロイン(※ゲーム世界の主人公)が控えている。
ここで黙っていたら、きっとまた同じ結末になる。
だから、私は毅然と言った。
「本日は、お話ししたいことがあって参りました」
そして、一歩進み、スカートをたくし上げ、深くお辞儀する。
「――王太子殿下。これまで婚約者として、不相応な振る舞いが多々ありました。心よりお詫び申し上げます」
セシルが少しだけ眉を寄せた。
「……どういう意味だ?」
「誠に勝手ながら、わたくし、殿下との婚約を破棄していただきたく、お願い申し上げます」
会場が、凍りついた。
「……っ!?」
「え、リリアナ様が……!? 自分から!?」
「嘘……だろ……」
貴族たちの囁きが雪崩のように広がる中、セシルの表情はしばらく止まっていた。
やがて、ようやく言葉を紡ぐ。
「……君は、正気か?」
「はい。婚約者として、殿下にふさわしくある努力を、私には続ける覚悟がありません」
「だが、それは――」
「婚約は、義務で結ばれるものではありません」
私は、前を見据えていた。
「どうか、殿下ご自身のお気持ちで、真に愛する方をお選びくださいませ」
静かに、そう言い切った。
沈黙のあと、口を挟んできたのは、すでに駆け寄っていたレオンだった。
「お、おい、リリアナ? お前、自分が何言ってるかわかってんのか?」
「わかってますわ」
「本当に、セシルとの婚約を捨てて――この先どうするつもりなんだよ!?」
レオンの声には、心配とも怒りともつかぬ混乱が滲んでいた。
そして、ユリウスもまた、群衆の中から現れていた。表情は静かだが、その瞳は深く揺れている。
「リリアナ。それは、君の本心か?」
「はい。……あなたたちの誰かのためでも、誰かに見せる芝居でもありません。わたし自身が、そうしたいと決めました」
――自分の人生を、自分の手で選ぶために。
セシルは、視線を交わすことなく、しばらく黙っていた。
「……」
そして、頷いた。
「よかろう。――この場をもって、王太子セシル=アルフォードは、リリアナ・ヴェルシュタインとの婚約を解消する」
告げられた瞬間、空気が弾けたように喧騒が広がった。
だが、私は胸の奥で確かなものを感じていた。
これでいい――これで、ようやく私は、誰かの“付属品”ではない、“私”になれたのだ。
断罪なんてされてたまるか。私は転生したこの体、"リリアナ・ヴェルシュタイン" として生きてやる。
これが、本当の意味での“攻略ルート分岐”の始まりだった。