1/11
断罪イベント前日に目覚めた悪役令嬢は、もう全部ぶち壊す覚悟を決めようと思います
――おかしい。
目を覚ましたとき、私は豪奢な天蓋付きベッドの上で、フリルだらけの寝間着を着ていた。
部屋の隅にはメイドが控え、窓の外にはバラ園。ドレッサーの上には、見覚えのある金髪碧眼の少女が、目を見開いて映っている。
「……え、これって、リリアナ・ヴェルシュタインじゃない……?」
そう、乙女ゲーム《薔薇の輪舞曲》の悪役令嬢。ヒロインをいびり倒し、最後は断罪されて国外追放――もしくは処刑エンドすらある、悲劇のポジション。
そして記憶が蘇る。私は事故で死んだ……そのはずなのに、今、私は乙女ゲームの中にいる。しかも、一番最悪なタイミング――明日が断罪イベントの前日!
「ちょっと待って!? このままだと、私、死ぬじゃないの!? いやいやいや、こんなの絶対イヤッ!」
なら、やるしかない。原作のシナリオなんて、粉々にしてやる。運命を変えるために、まずは――
「王太子様に、婚約破棄を申し出ましょうか」
メイドが目を剥いた。私も同じく。これは、恋と波乱と策略の幕開けである。