【第4章】 非共感型接続アーカイブ制度
未来人は、静かにSNSの投稿欄を見つめていた。
「“わからない”って言われた投稿、
全部“消されるか、忘れられる”しかないんですよね、この世界」
⸻
【例:削除された投稿たち】
•「悲しみって、脈絡なくやってきませんか」
→ 「わかりづらい」「共感できない」
•「なぜ生きてるのか、たまに考えてしまう」
→ 「暗い」「病んでる認定」
•「この言葉、意味はわからないけど残しておきたい」
→ 「意味不明」「誰得」
⸻
未来人は宣言した。
「共感されないまま、残る言葉に制度的価値を与えます」
⸻
【制度案④:非共感型接続アーカイブ制度】
•投稿された言葉に対して、「共感」や「いいね」は禁止
•代わりに“わからないけど残したい”という反応だけが許可される(通称:未同調ピン留め)
•この“非共感保存”された投稿は、アーカイブに個別に保存され、静かに熟成されていく
•一定数の“未同調保存”を獲得した投稿は、タイムラインに再浮上することがある
⸻
未来人、投稿する。
「たまに言葉って、“わかりたくない”ままそばに置いておきたくなりませんか?」
⸻
3日後。
通知はひとつもなかった。
でも、アーカイブにはこう表示されていた。
保存数:89
コメント:0
既読数:不可視設定
状態:熟成中
⸻
未来人は、それを見て初めて「届いた」と思った。
「“共感されないままでも、誰かの中に残る”──
それって、繋がりの最も深い形じゃないですか」
⸻
【街の掲示板に現れた貼り紙】
•「わからなかった。でも、何度も読み返してる」
•「刺さったわけじゃないのに、抜けなくなった」
•「これ、誰かの言葉だった気がする」
【次章予告】
第5章:問いが届いても、誰も泣かなかった
制度はできた。言葉は保存された。届いた。
でも、なぜか誰の感情も動かなかった。
次回、“構造が感動に到達しない”という、未来人の最初の絶望へ。