【第2章】 共感しすぎてSNSが爆発した件
「それな」
「マジでわかる」
「共感しかない」
「共感しか勝たん」
「みんな同じ気持ちで泣いたよね」
──SNSが壊れた。
共感ポイントが膨れすぎて、NowTimeの感情サーバーがバグを起こした。
特にやばかったのは、1投稿で「それな」が900万件ついたこの一文:
「人生、全部“わかる”で済むなら、それでよくない?」
その日のうちに、感情経済がバブル崩壊した。
“共感”で生きていた人たちが、口々に言う。
「わかってもらえなくてもいいのに、“わかってもらえなきゃいけない”になってた」
「でも、わかるが安すぎて、もう誰も“わかったふり”すらしない」
【未来人、冷静にモニターを見ながら】
「人間の発言が全部“わかる”になった瞬間、
“問い”が死にましたね」
「“わからなさ”の中にしか、問いは存在できないんです」
【制度案②:わからん通貨制度(理解不能経済モデル)】
・「共感されなかった投稿」に通貨が発生する
・共感率が低いほど報酬が増える
・問い・違和感・沈黙・誤解される言葉が“価値ある”と認識される
・結果、SNS上に“問い”が戻ってくる仕組み
街の投稿欄には、こんな言葉が増えていった。
「これ、正直よくわからないけど、ずっと考えてしまう」
「意味がわからない。でも、投げ捨てられない言葉ってあるよね」
「読んでも読んでも腑に落ちない。それが気持ち悪くて、ずっと気になる」
未来人はひとことだけ残した。
「“わかる”は承認の終点。
でも、“問い”は“わからない”の中にしか残らないんです」
【次章予告】
第3章:SNSは“問い”を封じる装置だった説
共感、共感、共感。
“伝わる”ことが正義になった世界で、
“問い”という伝わらない感情は、どこに行ったのか。
次回、SNSのアルゴリズムに問いを仕込む思想インジェクション編──