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9:またとない僥倖に恵まれ……。

 



 怒気を全身に纏わせながらこちらに近づいてくるアシュレイ様を恍惚と見つめていましたら、アシュレイ様がバサリと上着を脱ぎました。


 ――――あらまぁ、脱ぐ姿もスマートでカッコイイわね。


 ニマニマと見ていましたら、アシュレイ様が私の肩に上着を掛けてくださいました。

 そしてボトムスのポケットからハンカチを取り出すと、そっと押し当てるようにしてワインで濡れた顔を拭いながら、大丈夫かと聞いてこられます。

 まったくもう、なぜこんなにもメンタルイケメンなのでしょうか。


「ありがとう存じます。ですが、他の女性に優しくしすぎますと、婚約者様の機嫌を損ねてしまいますわよ?」


 その優しさはとても素晴らしいものですが、勘違いする者も出てしまうかもしれませんからね。私のように。

 にこりと微笑み、アシュレイ様から一歩離れると、なぜかアシュレイ様がムッとした表情になられました。


「こんな状況で、意地を張るな!」

「…………」

「っ、すまない」


 ピシャリと怒鳴られたことに驚いて、目を見開いてアシュレイ様を見つめていましたら、慌てて謝られました。


「憤りを君にぶつけるつもりでは――――」

「いえ、嬉しかっただけですわ」


 意地を張っていたつもりはなかったのですが、たぶんわずかな強がりはあったと思います。だから、心から心配してそう言ってくださったアシュレイ様の言葉が嬉しかったのです。

 私が誰とも知らないはずなのに、気にかけて声をかけてくださって、こんな面倒そうな状況に踏み込んでくださって。


「ありがとう存じます」


 アシュレイ様に向かってカーテシーをしてお礼を伝えましたら、そんなことしなくていい立ち上がってくれと両手を握られました。そして、少し耳を赤くしながら「婚約者はいない」とボソリと呟かれました。


 ――――へぇ?


 この瞬間、脳内で様々な計画を組み上げました。

 あまりにも完璧な計画が出来ましたので、クズミナ様とカスティ様にもお礼を述べておきました。彼女たちの短絡的な行動のおかげで、こんなにも嬉しい気持ちを味わえましたので。


「クズミナ様とカスティ様には特に感謝しておりますわ。後日、フィオレンツィ伯爵家から御礼状をお届けしますわね?」

「フィ…………っ! ロ――――」

「あ、そうそう。今後、私の名前も家名も、私に関する情報も全て、口に出されないでくださいませね? 虫唾が走りますわ」


 後日、書状をお送りしてサインもしていただきましょう。私への行いは、一応不敬罪が適応されますので。正直、使うことは無いだろうなと思っていましたが。

 このような、またとない僥倖に恵まれるなんて、自分の運が恐ろしいわね。

 お二人には本当に感謝の品をお送りしたいくらいだわ。


「アシュレイ様、体が冷えてしまいました。室内に戻りましょう?」

「あ……うん、そうだな。なんとか着替えの手配をしよう」

「まぁ! ありがとう存じます」


 ぶっちゃけますと、王城に着替えは幾らでもありますが、今後の計画のためにも、アシュレイ様に甘えてしまいましょう。

 バルコニーからの去り際、アシュレイ様が顔面蒼白になっているご令嬢たちに、サラリと嫌味を投げつけていました。


「君たちの立場や彼女との関係は一切知らないが、髪色を変えているだけだろう? それだけで相手を判別できないのは、いささか脳が足りていないのでは? あぁ、そうか。足りないからこんな頭の悪いことをするんだったな。すまない、配慮が足りなかった。後日謝罪文を送ろう」


 その謝罪文は、抗議文ですわね? たぶん、私が言った御礼状に合わせてくださったのでしょう。

 こういった機転も利くのですね。ますます好きになってしまいました。


 ――――もう、逃がしませんよ? 




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