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3:出逢いを思い出す




「この二週間、君との日々を思い出していたんだ……別れるのがつらくて。そこでふと思ったんだよ。君は伯爵家の娘にしては、帝国の内部のことを知りすぎている気がする、と」


 ――――あ。


 私の身分は、アシュレイ様やこの国に伏せたままにしていました。

 なぜかというと、アシュレイ様と出逢ったときのせいというか、おじいさまとの約束のせいというか。


 それは、私の祖国である帝国で開催された夜会での出来事でした――――。




 ◆◆◆◆◆




「ローザ、頼むから今度の夜会では面倒を起こさないでくれよ?」

「あら、おじいさまったら! 私は、面倒を起こしてはいませんのよ? ただ相手が私の地位を利用しようとするから、面倒なことになっているだけですわ」


 おかげで、二〇歳を過ぎても婚約者がいません。

 流石にまずいなと、お見合いパーティーと言っても過言ではない夜会に参加しても、近寄ってくるのは諦めが悪い地位狙いの脳みそ空っぽ令息ばかり。


「男運が悪いのよねぇ」

「いやぁ……まともな男はローザの手綱を握れ――――」

「あ?」


 口をツルツルと滑らせているおじいさまにメンチを切っていましたら、お母様がうふふふと笑いながら、姿を変えて身分も隠して夜会に参加したらいいじゃないの! なんて、楽しそうに言われました。


「でもこんな赤髪なのは私くらいでしょ? すぐにバレてしまうわ」


 赤くうねった髪の毛を指に巻きつけつつ口を尖らせていると、お母様がまたもやうふふと笑い、今回招待している国からの献上品に髪の染め剤があるのだと教えてくださいました。そして、それを使って身分を隠して参加してもいいんじゃないかと。


「あぁ、コンラッド王国じゃな。あそこはああいった産業は強いんじゃがなぁ」


 コンラッド王国は、帝国から船で四日ほどかかる距離にある別大陸のひとつの国。近隣の王国の力や主張が強いこともあり、かなり目立たない国なのですが、おじいさまが言われるように、産業にとても力を入れており、目新しいものをよく献上品としてくださいます。

 お母様のお気に入りの国で、建国祭や大きなイベントの際には必ず招待状を送っています。


「あそこの陛下、可愛いのよねぇ」

「なんじゃ、再婚狙いか? 流石に国王は無理じゃぞ?」


 お父様が亡くなって王城に住むようになってもう十五年でしょうか。家名はお父様のデラクシー伯爵家を名乗っていますが、一応王女とその娘という形で住んでいます。

 これまでお母様には再婚の話も持ち上がってはいましたが、お父様一筋だと断っていました。

 もしや、とうとう……?


「違うわよぉ! こう、アイドル的な? 観賞用っていうのかしら? 無骨な不器用さが可愛いのよね」


 ただ単に観察して楽しんでいるだけでした。

 コンラッド王とはご挨拶はしたことあったはずですが、あまりこれといった印象がありません。今度の夜会で観察してみようかしら。




「えっ……凄くない!?」

「はいっ! 凄すぎますっ!」


 髪染めを手伝ってくれていた侍女と、真っ黒に染まった髪を見ながら大騒ぎ。真っ赤な髪が、真っ黒に変貌したのです。しかも、その場限りのものではなく、しっかりと髪の芯から染めているようなのです。


「凄いわね。髪の色だけでこんなにも印象が変わるなんて!」

「ドレスは何色にしましょうか!?」


 こんなにもワクワクと準備する夜会は初めてね、なんて話しながらドレスや装飾品などを決めて行きました。

 明日の夜会、なんだか楽しめそうな予感がするわね。




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