最終話:離縁なんて、してあげません。
「アシュレイ様」
「……ん」
「離縁なんて、してあげませんからね?」
「まだ、好きでいてくれてるのか?」
少し不安そうなお顔で首を僅かに傾げて見つめてくるアシュレイ様。あまりにも可愛すぎます。
そっと手を伸ばし、アシュレイ様の両頬を包み引き寄せました。
屈強な騎士様のくせに、こういうときはなすがまま。
クスリと笑いながら、ねっとりと唇同士を重ね合わせました。
「当たり前じゃないですか。国を捨てるほどに、愛してるんですよ」
どんな貴方でも。
唇が離れるか離れないかの至近距離でそう付け加えて、もう一度キス。
ポタリと頬になにかが降ってきて、驚いて瞼を押し上げると、アシュレイ様の青く澄んだ瞳から次々に透明な雫がこぼれ落ちていました。
「きれい」
「っ……見ないでくれ」
「嫌よ」
どんなアシュレイ様も見ていたいもの。本当はお仕事をされている姿もずっと見ていたい。でもお仕事場に侵入したらご迷惑だから、ちゃんと我慢しているのです。
だから、今が誰にも見せたくない姿だとしても、譲ってあげません。
「アシュレイ様」
「っ……」
「私のことをこんなに愛してるくせに。馬鹿な人ね」
「分かってる…………私は馬鹿な男だ」
色々と諦めて出ていこうとしていましたが、全て取り止めです。
荷解きは後回しでいいでしょう。
もう……限界です。
「アシュレイ様、ベッドに行きましょう?」
「なっ……!?」
真っ赤に顔を染めたアシュレイ様を今すぐ押し倒してさしあげたいのは山々なのですが、本当にもう限界なんですよね。
「この数日、本当に眠れなくて…………限界なんです…………アシュレイ様、起きたらたっぷり愛して、あげますか……ら…………おりこうさんで、まっててね………………」
言い終わるかどうか。そもそも、自分がなにを言っているのかもよく分からないほどに眠気に襲われて、そのまま瞼を閉じて、深い眠りへと引きずり込まれてしまいました。
□□□□□
気を失うようにこちらに身体を預けて来た妻。
幸せそうに微笑んだまま、無防備に眠ってしまった。
この昂りはどう発散させればいいんだ。
文句を言いたいが、そんなふうに一言で私をここまで翻弄出来る相手を、限界まで追い詰めていたのは自分なのだと思うと絶対に文句など言えるわけがない。
「ローザ、本当にすまなかった」
お互いに意固地になっていたんだとは思うが、私の度量の狭さが一番の原因だろう。そう思うと謝罪の言葉が何度も口から漏れ出てしまう。
すやすやと眠り続ける妻を抱きかかえ、主寝室のベッドに移動した。
寝苦しいだろうと服を脱がせたが、そこで自身の精神力と一悶着。
起きた妻にそんなことを知られたら、どう思われるだろうか? 妻のことだから舌舐めずりで喜んでくれそうではあるが。
「起きたら、たっぷり愛してくれるんだよな?」
眠る妻の頬をぷにぷにと揉み、額にキスをして私も眠ることにした。
起きたらもう一度謝って、キスをして、全身を使って愛し合おう。そう心に決めて瞼を閉じた。
―― おわり ――
ちょいとゆっくりになりましたが、最後までお付き合いありがとうございました!
ブクマや評価などしていただけますと、作者が大喜びで踊りだしますヽ(=´▽`=)ノワヒョォォォ
ではでは、保留してた作品たちを書いて来ますです!
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