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争乱の神人  作者: 富井トミー
第4話 驚きの王都
18/149

017

「メリは馬鹿じゃないのです! ちょっとうっかりしてただけで……」

「そういう事にしておくにゃ。そんな事より、主様は神力が視えるようになって、なにか思い出した事はありますにゃ?」


 シルバは首を横に振った。しかし、なにか気付いた事があるようで、確認するかのようにシロたちへと問いかける。


「神力って何色に視える?」


 その問いかけに、シロたちは首を傾げた。そして、確認するように神力を視た後、こう答えた。


「色という概念は無いですにゃ。正と負の違いも加護持ちと神々の格の差も関係なく、ですにゃ」

「メリも同じ意見なのです。ぎゅっとしてピカピカしてるけど、眩しい訳じゃない光のようなものなのです」

「じゃあさ、シロやメリちゃんの神力が白く視えるのは……異常って事?」


 メリサンドは首を傾げたままだが、シロはなにか思うところがあったようで、シルバへと提案する。


「主様、神力視を切った状態で私たちを見て下さいにゃ」

「了解。……あれ? 同じ色だ」

「以前、主様が言っていた白黒判定の色と、私たちの神力の色ですにゃ?」

「そうそう。神力視にその色が影響してるって事なんだろうね。でも、神力を持ってない人でも白黒で見えるのは……なんでだろ?」


 今度はシルバが首を傾げてしまった。しかし、シロは確信を得たようで、自信満々にこう言った。


「主様! 多くの人が白くなるように行動して下さいにゃ! そうすれば、神力の溜まりも早くなるはずにゃ」

「あれ? でも、白黒に見えるのって……愛の神とは関係ないって言ってなかった?」

「だからですにゃ! 友愛や親愛の情では、私や私の本体へと多くの神力が流れてしまいますにゃ」

「いやいや、神人とか加護持ちって、そういうものでしょ?」


 何故、神々は人に加護を与えるのか。人を神人へと取り立てるのか。それは、己に信仰を集めるため。神々にとっての信仰とは、己を崇め奉らせるだけではない。それぞれの神が司る感情を、生物……特に人類が抱く事が信仰となる。よって、神人や加護持ちの使命とは、己が神の司る感情を自身や周囲の者が抱くように仕向ける事。グレイがシルバを羨望し、周囲の者がグレイを羨望する事で、信仰という名の神力が羨望の神やグレイへと捧げられたのだ。


「一般論で言えばそうですにゃ。ですが、主様は違いますにゃ。……これ以上は制約に掛かるので言えないですにゃ」

「じゃあ、俺が白黒に見えてる感情がなにかに気付いて、より多くの神力を溜めれば……」

「記憶を取り戻す可能性が高いですにゃ!」


 喜ぶシルバとシロ。メリサンドも、巻き込まれる形で喜びの輪に入るのだが――


「ゴールは分かったのです。けど、手段はどうするのです?」


 メリサンドの冷静な指摘に、シルバたちはすんと平常心へと戻っていた。


「さて、シロ。俺はどうすればいいのか分からないから、今後の指針を示してくれないだろうか?」

「潔い頼りっぷり……それでいいのですにゃ、主様! それでは、私としてはギルドに加入する事を提案するにゃ」

「ギルドって、冒険者とか商人とかの?」

「そうですにゃ。主様やメリサンドなら、冒険者ギルドと魔術師ギルドがおススメにゃ」


 ギルド、それは国家を超越した巨大組織。特に、冒険者・商人・職人の三大ギルドは絶大な力を持ち、人々の生活とも密接に関わっている。そして、争乱が続く世にあって人々が生活を続けられるのは、それぞれのギルドが役割を放棄する事無く機能しているからなのだろう。


「ギルドに加入するのはいいとして、そこで俺はどうすればいいの?」

「活躍するのですにゃ! 多くの人を助けたり、魔術の発展に寄与するんですにゃ」

「それが、白黒に見える意味の解明と神力を溜める事に繋がるの?」

「間違いないですにゃ。それに、お金にもなりますにゃ。特にメリサンドは、しっかりと稼いで欲しいにゃ」


 シロは硬貨の入った革袋へと視線を向けた。しばらくの生活には問題ない程度の金額は入っているが、収入の基盤を整えなければ遠くない内に尽きてしまう程度でもある。なにより、この所持金の全ては、シルバがキャンベル家で働く事で得た給金。森に住む森人(アールヴ)だったメリサンドは、一ディトすら持っていなかった。現状だけで言えば金食い虫である。


「うっ……。森の外の世界は、なんとも世知辛いのです……」

「シロ! メリちゃんをいじめちゃ駄目じゃないか」

「主様。旅の仲間だと言うのなら、そういった事はしっかりすべきですにゃ。金銭問題で仲違いして暴力沙汰、そんな話は五万とありますにゃ」

「シルバさん、シロ様の言う通りなのです。働かざるもの食うべからずと言いますし、メリの分の食い扶持はメリが稼ぐのです!」


 メリサンドが胸を張って言い切ったのを見て、シルバは微笑みながら頷いた。しかし、そんなシルバの様子を見て、シロは更に小言を続ける。


「主様、笑い事ではないですにゃ! 困っていたり頼られると、すぐさま手を貸してしまうにゃ。それは、主様の美点でも欠点でもありますにゃ。ですから、時には厳しく――」

「シロ、ストップ! そういう所は自覚してるよ。でもさ、信じて助けたくなっちゃうじゃん?」

「やはり変わらないのですね、貴方は……。仕方ないので、ある程度は大目に見るですにゃ。ですが、一つだけ……絶対に守って欲しい事がありますにゃ」


 これまで以上に真剣な声色のシロに、シルバは表情を硬くした。そして、シロのくりくりとした瞳を見つめながら答える。


「凄く大切な事なんだね。聞かせて?」

「もし、その身に危機が訪れたならば、何を犠牲にしてでもお逃げ下さい」


 そのシロの声には、神力が込められてでもいるような抗いがたい迫力があった。しかし、シルバはぐっと堪えながら口を開く。


「そんなの駄目だ! 逃げるのは構わない。だけど、誰かやなにかを犠牲にしてまでなんて……絶対に駄目だ!」

「いいえ、約束してください。これは、本体である愛の女神の考えでもあるのです」

「神からの願いであっても、聞き入れる訳には……」


 頑なに拒むシルバと、それでも退かないシロ。膠着状態に陥ったところに、メリサンドが口を挟む。


「シロ様、そもそも危機とはなんなのです? シルバさんは最強だと言っていたはずなのです」

「メリサンド、考えてみて下さい。個で最強だったとして、万の敵が押し寄せたら? その中に、神人や加護持ちが多く存在したら?」

「それは……勝てないのです。そして、そんな危機が訪れる可能性があるのですね。……あと、語尾を忘れてますにゃ」


 メリサンドの指摘にはっとしたシロは、にゃんと短く鳴いた。その様子を見て、シルバはクスリと笑いながら言う。


「シロは心配性だな。とりあえず、犠牲を許容は出来ないけど、シロが心配するような事が起きないよう徹底する。これじゃ駄目かな?」

「……主様も頑固ですにゃ。仕方がないので、それで手を打ちますにゃ」

「ありがとう。だったら、俺は何を気を付ければいいのかな?」


 シルバの問いに、シロは注意点を並べ立てていく。シルバが神人であるとばれない事。シロが分神だとばれない事。神力の大量行使をしない事。それらを聞いて、シルバは難しい顔をした。


「グレイとかレイナ様たちにばれてるけど……平気?」

「彼ら自体は、逆に信頼が出来ますにゃ。主様を狙っている以上、神人だと発覚すれば手が出しにくくなると理解してますにゃ」

「なんとも不思議な信頼の仕方だね。じゃあ、気を付けるべきは、明日からの俺たちの行動だけって事だね」

「そういう事ですにゃ。では、夜も更けてきたので解散ですにゃ」


 こうして、王都での最初の一日を終えたのだった。

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