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争乱の神人  作者: 富井トミー
第26話 再会と反撃、そして……
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137 sideA

 エンリケさんやレイナ様との話し合いを終えた後、俺はキャンベル家の屋敷に一室を与えられて数日が経っていた。


 勿論、ダラダラと過ごしている訳では無い。領都の冒険者や魔術師と顔合わせを行ったり、部隊長として訓練を任されたり……などなど。また、そういった依頼(クエスト)上の仕事をこなしつつ、女神ラブとも緊密に連絡を取り合っていた。特に、「神の封鎖地」関連の話題を中心にだ。


(アンティス様より、直接お話を伺ってまいりました。どうやら、主様の覚醒が鍵になるようですね)

「制約を破ると封鎖地の結界も破られるって事か……」


 何故、封鎖地が封鎖地でなくなるのか。地上に居る俺では分からない事を、神の座のラブに調査を進めてもらっている。しかし……。


(ですが、どのように覚醒へと至るのか。それは、アンティス様にも分からないとの事です)

「神力を蓄える以外にも、なにかしらのきっかけが必要って事?」


 そもそもの話、制約というものが謎の多い現象。当然、前例のようなものもなく、負の神々の頂点……嫌悪の神ディスガストを中心に施した術であるようなので、正の神々には情報らしい情報が伝わっていない。だから、どうすれば制約を破る事が可能なのかは不明。よって、時期も不明だ。


(そのようです。ですが、今が好機というのは間違いないとの事)

「なんで?」

(アンティス様の権能”予知”。その権能によって見える未来が、先日の主様とキャンベル家当主との会談で変化した。だからでしょう)

「エンリケさんとの共闘が決まったから、制約を破る未来が訪れる可能性が上がったって事か……」


 権能”予知”でも、未来を完全に読み切る事は不可能。あくまで、様々ある未来への分岐の中で、最も辿る可能性が高い未来が見えるに過ぎないとの事。という事は、である。俺が北部奪還作戦に参加する事で、制約を破る”なにか”を行う……又は手に入れる可能性が高くなったという事だ。そのきっかけとなる”なにか”がなんなのかは、現時点では予想もつかないけど……。


(はい。ですので、主様としては気が引けるでしょうけど……積極的に参戦し、活躍をしていただければと)

「北部奪還への意志は固まってるけど、負の国々の軍勢を蹴散らすのは……ちょっとね」


 旧王都を含む北部一帯を取り戻すためには、侵攻軍を退けなければいけない。それは、多くの敵兵を手に掛けるという事だ。それが戦争というものだというのは分かってるけど、嬉々として暴れ回るような事はしたくない。だから、活躍と言われてもねぇ……?


(では、ほどほどにお願いします。それと話は変わりますが、分神たち一行がそろそろ到着するようですね)

「シロたちが? よし、出迎えに行こう!」


 王都に残って戦っていたみんなは、俺がぶっ壊した南門から脱出。避難を望んだ一万近い市民を連れて南下。道中、いくつかの街に立ち寄って避難民を預けつつ、引受先が無かった数千人と共に、ここ領都メティカを目指して進んでいたのだ。そして、一行がやっと到着するという事で、俺は急いで北門へと走っていくのだった。



 メティカ北門を出てすぐの平野部。大勢の人々が移動してくる様子が目に入った。待ちきれず走り出したい気持ちをぐっと我慢し、こちらへの到着を心待ちにする。そしてしばらくして、集団の先頭が到着。そこには、見知った顔がいくつも。俺は喜びと共に声を上げていた。


「シロ! メリちゃん! ディンガ! ドーリス! みんな、無事だったんだね!」

「主様、約束通り合流しましたにゃ。……というか、本体との交信で知っていたはずでは?」


 勿論、みんなの安否は知っていた。だけど、実際に姿を見るまでは、どこか不安だった。だからこそ、この目で安否を確かめられたのが……無性に嬉しかったのだ!


「知ってたけど……って、メリちゃん!? 少し見ない間に、随分大きくなったね!」

「そうなのです! メリは絶賛成長期。すくすく育っているのです!」


 魔導国で別れて以来、軽く半年以上。物言いこそ幼さが残っているけど、顔立ちや体形から幼さが抜けてきている。きっと、あと一年もすれば……絶世の美少女が完成するだろう。そんな風に保護者視点で眺めていると、ディンガとドーリスも話に加わってくる。


「おい、シルバ。メリサンドが変わったのは、見た目だけじゃねぇぜ?」

「うむ。加護の力も強まり、嫌悪の神人撃退に貢献するほどだ」

「そうなの? 凄いじゃん! って、二人も久しぶり!」


 ラブからの話で、多少は聞きかじっていた。俺が逃亡後、魔導国北部の中心都市ガーベラは、嫌帝国軍が包囲。大氾濫(オーバーフロー)の発生によって補給路を断たれるも、短期決戦を目論む嫌帝国軍上層部の判断により、ガーベラへと猛攻を仕掛けたという。そして、その攻撃の中心には嫌悪の神人が居たとも。……その力は絶大で、ガーベラも早々に陥落の危機に陥ったらしい。


 しかし、メリちゃんを筆頭としたみんなが粘り抜いて、嫌帝国軍を撤退に追い込んだ。その程度しか聞いていなかったけど、まさか……嫌悪の神人を撃退するほどの活躍をしていたとは。


 だって、嫌悪の神人っていったら、俺を除いた神人の中で最強の存在。全員が加護持ちになったとはいえ、みんながまとまって掛かったとしても……正直、分が悪すぎる相手だと思う。だから、その神人を撃退するに至った功労者がメリちゃんという事は、かなりの力を身に着けているのは間違いない。


「メリの加護に掛けられていたリミッターは、全て解除されたのです! なので、みんなの協力もあっての大勝利だったのです!」

「確かに……纏っている神力量が跳ね上がってるね!」


 神力視を通して見てみて、以前との明らかな差を感じていた。ホント、外見だけじゃなく……随分頼もしくなったものだと。そう考えながら頷くも、なにかが足りない事に気付いて、周囲へと視線を向かわせる。なにかでは無くて、誰かか。すると、俺の考えを見抜いたディンガが、訊いてもないのに答えを伝えてくる。


「ハイランドの旦那とジゼルは、後から追いついてくる予定だぜ」

「なんで別行動なの?」

「街道から外れた街へ避難する奴らを送り届けてたからだ」


 ああ、そういう事か。親戚や知り合いなどの伝手がある場合、王都からの避難民はそちらに振り分けられる。ただし、王都からメティカまでの経路上に無い街も多く、その都度別働隊を組織していたという事か。流石に、避難民を護衛無しで街道を外れた街に向かわせるなんて、人道に(もと)る行い。最後まで面倒を看るべきという考えだろう。


「じゃあ、二人もすぐに合流するんだね?」

「おうよ! だから、心配なんてしなくて大丈夫だぜ!」


 その言葉を聞いて、ほっと胸を撫で下ろした。しかし、そんな時だった――


 この集団がメティカの門を抜けるために伸びている列の後方へ、土煙を上げながら迫る騎兵の一団の姿が!


「なっ!? 敵?」


 俺は身体強化(ブースト)を最大にして、列の最後尾へと走り出していた。ここまで来て、避難民を襲わせるわけにはいかない、と。ただ、なにやらみんなが叫んでいるのが聞こえる。もっとも、俺の最大速度で離れていっている訳だし、なにを言っているのかは聞き取れないけど……。


 そして、騎兵が殺到するよりも早く、俺は最後尾へと到着。剣を抜いて戦闘態勢で待ち構えつつ、騎兵の特徴を確認する。軍旗は無し、装備も統一されていない。……賊か。


 そう結論付けた頃には、騎乗した賊の顔を判別出来るほどに近付いており、そして……驚く。


「グレイ!」


 そう叫ぶと、あちらも俺の存在に気付いたようで、俺の目の前で馬を降りてから返事が返ってくる。


「シルバじゃねぇか。久々だなぁ」


 より警戒しながら構える俺。一切、構えを取ろうとしないグレイ。これは……どういう状況だ?

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