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争乱の神人  作者: 富井トミー
第22話 信ずるがゆえに
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111 sideA

 早々に西部の中心都市ベロニカを発った俺たちは、北部の中心都市「魔導都市ガーベラ」へと急いでいた。道中、女神ラブが遠見の術によって集めた情報ももたらされ、市井に出回る噂以上の部分まで知れたというのは有難い事だ。特に、これまで掴めていなかった各国や各勢力上層部の考え。これらを入手出来るというのは、女神様様といった感じだろう。


 ただし、情報が得られたからといって……その全てが吉報な訳では無い。それどころか、凶報のほうが多いくらいだ。


 凶報の中でも最大のものとしては……神託。負の国々には、俺を追討する指示が。正や中立の国々や組織には、俺の身柄を引き渡すような脅迫めいた言葉が届いているらしい。そして、正の国々では完全拒否の上、秘匿。中立国やギルドなどの中立組織も、秘匿しつつ要調査といった対応との事だ。とりあえずではあるけど、魔導国内で急に捕縛されるなんて事にはならないようで一安心だ。


 しかし、負の国々では……そうもいかないらしい。神託を受けてすぐ、国民へと布告。曰く、”銀の髪を持つ只人(ヒューマン)の冒険者兼魔術師、名をシルバ”と、俺の風貌や情報を開示した上で、”発見した場合、可能なら捕縛。不可能であれば、報告を義務とする”との事らしい。負の国々に入国してしまうと、俺はお尋ね者として突き出されてしまうようだ。


 そして、話はそれで終わらない。やはりと言うかなんと言うか……追討軍という名目での侵攻軍が参集を始めていて、魔導国内の大氾濫(オーバーフロー)終息を待っている状況との事。俺がこの国にいるせいで、とも考えたのだが……。


「主様が居ようと居まいと、負側の国は攻め込んでいたですにゃ」


 と、シロから釘を刺されていた。俺が落ち込むことが無いように、と……。


 確かに魔導国の存在は、負の国々にとっての目の上のたんこぶ。弱った魔導国へと攻め入るのは自然な流れだ。しかし、そこに神々の意志が乗っかってしまったのは、俺のせいに違いない。簡単に「はいそうですか」と、割り切れるものではないのだ。だったら、俺がやるべき事は……少しでも大氾濫による被害を抑え、魔導国の戦力や国力の低下を阻む事だ。具体的に言えば、苦境が続いている北部戦線を救援。そして、大氾濫を起こしている迷宮(ダンジョン)を攻略だ。


 やはり、北部へ向かうという判断は、間違っていなかったという事。その時は、俺もそう考えていたのだった……。



 馬車に揺られる事二十五日。いよいよ、ガーベラの街が見えてきた頃。見えたくも無いものまでもが、俺の視界に映り込んでいた。……魔獣(モンスター)の群れだ。


 ガーベラの城壁にまで押し寄せている魔獣。城壁上には街の守備隊と冒険者や魔術師。ガーベラを出て防衛線を構築するのは魔導兵団。街を中心に、激しい戦闘が繰り広げられていた。戦況としては最悪の部類。なんとか戦線を押し上げたいところである。


「ギリギリだが、間に合ったようだな! 俺たちも戦闘に参加するとしようぜ!」


 ディンガの指示で、俺たちは魔獣への攻撃を開始。俺と、俺の加護(?)を得たらしいハイランドさんが斬り込み、メリちゃんやジゼルさんが強烈な魔術を見舞っていく。ディンガとドーリスはというと、堅実に守りが薄い部分を補強し、戦線の維持に奔走しているようだ。



 そんな感じで、数日。魔獣を狩り続けた結果……戦線の押し上げに成功。とりあえず、絶体絶命の危機は脱したようだ。


「あんたたちが、噂の神人様御一行か! 本当に助かったよ!」


 防衛線の維持を魔導兵団に任せ、一度ガーベラの街へと戻ると……多くの人々に囲まれ、感謝の言葉が降り注いだ。それにしても、人の噂というものは恐ろしいもので、北部であっても俺が神人である事が広まっている様子。だけど……悪くない。流れ込んでくる神力の温かさや人々の笑顔に、俺も笑顔を浮かべていると……。


「これが……神力が流れ込む感覚、ですか」


 ハイランドさんが、不思議そうに呟いていた。西部から北部へと向かう途中、神力を纏っての魔獣との戦闘は、何度か経験をしていた。しかし、神力を使うではなく受け取る。それも大量にというのは、初めての経験だったようだ。


「ハイランドさん。気分はどうですか?」


 もしかしたら、不快なのかもしれない。そう考えて問い掛けるも、ハイランドさんはニコリと笑いながら答えてくる。


「とても……温かいですね。加護を授かったと知った時は、正直複雑な気持ちでした。ですが今は、良かったと思えます」


 俺が冒険者となった際、ハイランドさんは言っていた。修練で得た訳でない力は、危険でもあると。ハイランドさんなりに、加護や神人の力というものに……思うところがあったのだろう。そんな力を俺は、同意も得ずに与えてしまったのだから、ずっと不安だった。嫌がっていないだろうかと。努力を積み重ね、A級の二つ名持ち冒険者にまで至ったハイランドさんのプライドを、傷付けてしまってはいないだろうか、と……。


 だけど、この言葉を聞けて、この笑顔を見られて……不安は全て吹き飛んだ。


「俺も良かったです。加護を授けた相手が、ハイランドさんで……」


 この人なら、力を正しく使う事が出来る。そう信じられるから。より多くの人を救うため、力を振るってくれると信じられるから。



 人だかりから抜け出した俺たちは、宿屋で一泊。そして、翌日。戦況の一発逆転を目指して、大氾濫を起こしているB級迷宮「海辺の要塞」へと向かっていた。当然ながら、厳しい道のりが続く。強く、大量の、様々な魔獣が襲い掛かってくるのだから、迷宮に辿り着くだけでも至難の業。というのも……。


 今回目指している迷宮は、上級に分類される建物型……もっと言えば、砦型迷宮。中級以下の迷宮と比べ、魔獣が強いのは当たり前。それ以上に厄介なのは、湧き出る魔獣の種類が多いという事だ。


 中級以下の迷宮では、多くて三種ほど。一般的には、単一種のみの魔獣が湧く。一方、建物型迷宮では、少なくとも三種。多ければ十種近くの魔獣が産み出されるらしい。そのため、それぞれの魔獣に合った戦術を適宜、入れ替えながらの戦闘が要求される。まあ、俺たちの場合……力尽くでもなんとかなりはするけど、後の突入を考えると、少しでも効率の良い戦闘を意識したほうがいいだろう。


 そのため、頻繁にパーティ隊列を組み替え、使用魔術の系統に注意し、心身共に疲れるような戦闘が続いていた訳だ。なので……。


「やっと……着いたのです! 突入前に、少し休憩を挟むのを希望するのです」


 敵地のド真ん中。今も迷宮から魔獣が溢れているとはいえ、みんなの疲労は順調に蓄積してしまっている。なので、周囲一帯の魔獣を狩り尽くした後、短いながらの休憩を挟む事に。とはいえ俺は、無為に時間を過ごすのは勿体ないと思い、ギルドで貰ったこの迷宮の地図を確認していた。


 俺たちが休憩のためにもたれ掛かっている城壁は、そこそこの大きさの街がすっぽり収まるほどの規模。その中には、地上三階からなる巨大な砦。……砦? 間違いなく、城と言っていいサイズ感なんだが……?


「あの、ハイランドさん。なんでこの規模で……砦型と呼ぶんですか? どう考えたって、巨城って規模ですよね」

「ああ、それは……見栄みたいなものですよ。魔獣が住処とする場所を城と呼ぶのを、昔の人々は耐えられなかったって事でしょう」


 納得。そして、少しだけ呆れてしまう。まあ確かに、イメージというのも大切だとは思う。城に住む魔獣と聞いただけで、萎縮してしまう冒険者だっているのかもしれないし。


 とりあえず、疑問は解消された。あとは、みんなの体力が回復し次第、迷宮へと突入するだけか……。

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