表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
争乱の神人  作者: 富井トミー
第20話 露見と畏怖
102/149

101 sideA

 俺たちは、やっとの事で迷宮(ダンジョン)に到着する。ただ、森林型であるこの「獣種混成の森林」という迷宮は、大氾濫(オーバーフロー)中という事もあり……どこからが迷宮内なのかの境目が曖昧だ。どこが入り口という訳でもなく、どこからでも侵入できるし、迷宮内外問わずに、魔獣(モンスター)の数は嫌気がさすほどに多い。なので、到着を喜ぶ間もなく、迷宮へと飛び込んでいく。


「こっからは……メリサンド! 進む方向を指示してくれ」


 ディンガがメリちゃんに向けて言った。今回の迷宮攻略(ダンジョンアタック)は、依頼(クエスト)を受けてのものではない。なので、迷宮地図は未所持。まあ、地図があったところで、森林型迷宮だと……あまり役には立たないけど。


 これまでに大氾濫を起こした洞窟型と比べ、森林型は通路のようなものは無い。地図があろうとなかろうと、現在地と目的地を把握するのは難しい。だから、メリちゃんの出番なのだ。


 森人(アールヴ)であるメリちゃんは、森林地帯でこそ最も輝く。森を知り、共に生きてきた森人だから。そして、優れたマナ感知能力までも持ち合わせている。なので、目的地である最奥部……今回の場合は、迷宮中心部。そこを目指して進むのなら、メリちゃんの感覚に従うのが一番という訳だ。


「任せてなのです! とりあえず……しばらくは直進なのです」


 水を得た魚もとい、森を得た森人と化したメリちゃんの導きで、俺たちは奥へ奥へと進んでいった。だが、それは魔獣側も同じで、本領発揮ともいえるホームグラウンドでの獣系魔獣の襲撃は、苛烈さを増していく。


 機敏な動きでこちらを翻弄するデスウルフ。強力な突進が脅威のデスボア。並みの攻撃ではビクともせず、手痛い反撃を繰り出してくるデスベア。それらが共同で、木々などの地形を巧みに利用して襲い掛かってくるのだから……たまったものではない。特に、弓士であるディンガと火属性魔術師のジゼルさんは、苦戦を強いられている様子。


 木々という遮蔽物は、弓士にとっては非常に厄介。その上、ちょこまか動くウルフが相手とあっては、相性最悪である。


 それに、ジゼルさんの火属性魔術も、使い勝手が悪い。迷宮内の木々は、不思議な事に燃えづらい。だが、それは……多少の火では燃えないというだけであって、強力な火炎であれば延焼するのが必至。使い方を誤れば、自身らを火災に巻き込んでしまう恐れがある。


 そんな訳で、地形に関わらず戦う事の出来る俺とドーリス、森での戦闘を熟知しているメリちゃんを中心に、頻繁な襲撃を撃退しつつの探索が続いていったのだった。



 そして、迷宮突入後最初の夜。俺たちは、どうするべきかを考えていた。睡眠のための休憩を入れるか、あるいは……夜を徹して、迷宮を進むかを、だ。


「メリは反対なのです。夜の森は、進むべきではないのです」

「だがよ、ここで休憩を入れるっていっても……なぁ?」


 魔獣には睡眠が不要。夜であっても、魔獣は活動する。とはいえ、昼に比べれば、魔獣の活動も若干落ち着きはする。夜の闇は、魔獣であっても避けたいものなのだろう。だからこそ、意見が分かれてしまっている。夜の森の怖さを知るメリちゃんとしては、無理に進むのを良しとしない。一方、ディンガは、魔獣の活動が盛んではない時間に距離を稼いでおきたい。


 どちらの言い分ももっともで、どちらを選んだとしても……厄介でもある。


 夜の森を進むのが厄介なのは、勿論……暗闇の中を進むからだ。明らかに目立ってしまう「発光(ライト)」の魔術を使う訳にはいかないため、視覚に大きな制限が掛かる。獣系魔獣に比べ、唯一勝っているであろう視覚が、お互いにとはいえ役に立たないのだから……かなりの危険を冒す事になる。


 しかし、睡眠を取るのも案外危険なのだ。それは、ここに居るのが五人のみだから。交代で夜番に立つとするなら、少ない人数で、闇に覆われた森の中を、全周囲警戒する。なかなかにハードな任務だ。


 なので、どちらの意見にも……決定打が無い。と思っていた矢先、五人に含まれていなかった存在が、闇に溶け込みながら口を開いた。


「私は睡眠が不要ですから、夜番には私が立つにゃ。それに、いいアイデアがありますにゃ」

「いいアイデア?」


 シロへと訊き返すと、なにやら魔術の詠唱を開始していた。そして、「土の壁(サ・ウォル)」の魔術を発動する。


 土で出来上がっていく壁を巧みに操り、ちょっとした小屋が完成した。どこか自慢げな様子のシロは、みんなに向けて言い放つ。


「この中であれば、デスブルが急に突っ込んできても大丈夫ですにゃ。だから、しっかり休むにゃ」


 反対する余地を失ったディンガは、大人しく睡眠を取る事を決めた。メリちゃんやジゼルさんは、「土の壁」の新たな使い道に目を輝かせていたが、シロに窘められて睡眠へと向かった。そして、俺はというと……。


「シロ、ありがと」

「これくらい、なんていう事もありませんにゃ」


 さも当然というように返してくるシロに、俺は訂正の言葉を告げる。


「この事だけじゃなくて……この迷宮に突入するって決めた事とか色々、だよ。なにも言わずについてきてくれて、ありがと」


 シロは、トラディス王国から離れたがっていなかった。大氾濫などの、管理者側の思惑に首を突っ込みたがっていなかった。それなのに、俺についてきてくれている事への感謝だ。


「はぁ……。自覚があるのでしたら、もう少し大人しくしていて欲しいですにゃ。まっ、無理だと分かっていますけど……」


 ため息を吐きながら言うシロに、俺は苦笑しながら頭を掻く。極力善処しようと思いながら、俺も睡眠を取りに向かうのだった。



 翌日、再び探索を開始する。徐々にマナ濃度が濃くなっていくのを感じつつ、その影響で強化されている魔獣を駆逐しながら進む。そして、夜。


 メリちゃんの見立てでは、そろそろ中心部が近いという話だ。そのため、万全を期するという事もあり、更に一泊する事になった。そして、夜が明け、早朝。


「さて、今回のボスの顔を拝みにいくぞ! 特にシルバ。頼りにしてるからな」


 出撃してない限り、居るであろうキング格の魔獣。前回の大氾濫時、キング不在の迷宮は魔獣が少なかった事を考えれば、ここの迷宮のキングは……確実に居る。これまでは人に近い姿のキングばかりだったから、獣系魔獣のキングは……初めての相手だ。でも、やる事は変わらない。互いに退けないのなら、倒すのみ。いつか、魔獣とも共存できる未来を信じて、今は剣を振り続けるしかないのだ。


「了解!」


 その後、しばらく歩くと……マナが一際濃い場所へと到着する。これまでのように、立派な扉は無い。それ以上に、大氾濫を発生させるための封鎖すらも無かった。これまでとの違いに若干戸惑いながらも、マナ流入口のある少し開けた空間へと足を踏み入れる。すると――


「なんという数……」

「骨が折れますわね……」


 ドーリスもジゼルさんも、あまりの魔獣の数に呆れを含んだ声を発した。洞窟と違い、俺たちが来た方向以外からも、続々と魔獣が集まってくる。現時点でも、その数は数百は下らないし……なおも増え続けている。そんな大群の中央に、明らかに異質で、巨躯を誇る個体が居た。


「デケェが……なんじゃ、ありゃあ? 狼に猪、熊まで混ざったような姿だな」

「色々混ざってるのです! しかも、マナの保有量的に、キングっぽいのです!」


 獣系魔獣が()()ぎ。それも、互いの長所を取り入れるような形で、だ。ならば、こう呼称すべきだろう。


「キメラ(合成獣)キング」


 俺の付けた名前に、みんなが頷く。そして、俺たちは戦闘モードに切り替わり、キング率いる群れに対峙するのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ