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真相の考察

連日、リョウくん失踪のニュースで世間はざわついていた。

誰にも相談出来ず、どうしたらいいか分からなかった。


「リョウくん。私、どうしたらいい?

 警察に出頭した方がいいのかな…?」

リョウは花奏の頬に優しく触れながら、

「どうして?俺が俺の意思でここにいるのに、花奏が何を気負っているの?」

純粋な日本人の割にはやや薄い茶色をしたその瞳は、真っ直ぐに私の瞳を見つめていた。


「でも、毎日リョウくんのニュースで…

 ファンの人達もすごく心配してるし…事務所だって…」

「俺は毎日花奏に触れたいし、一緒に眠りたいよ。

 花奏だってそうじゃないの?」

「そうだけど…」

リョウくんとは絶対離れたくない。それだけは間違いない。

でも、いつまでこんな生活が許されるんだろう。


「花奏…俺はどういう状態で死んだの?」

リョウは唐突に質問してきた。

「よく分からないんだけど、夜中に私が車で轢いちゃったんだと思う。でも、轢く前にリョウくんの姿を見てないの。変な音がしたから車の外に出て見たら、冷たくなったリョウくんが道に横たわってたの。」

「冷たく…? 」

そういうとリョウは黙り込んで何かを考え始めた。


「ああ、そう言う事か…」

リョウは暫く考えた後、顔を上げて笑顔で私の顔を見た。

「花奏。自首する必要はないよ。俺は花奏に殺されたんじゃない。俺は花奏の車の事故前に既に死んでたってことだよ。」

リョウの自信に満ちた考察に首をかしげるしかなかった。


「どういうこと?」

「花奏は俺を轢いてすぐ車外へ出たんだろ?だったらその時の俺はまだ死んでないか、もしくは死んだばかりのはずだ。だったらいくら外が寒かったとしても冷たくなってたっていうのはおかしくないか?」

そうか。冷たくなっていたという事は、他に死に至る要因が私の事故よりも前におこっていたはずだ。


「俺、そこら辺の記憶がないんだ。事務所の発表によると、20時頃に行方不明になったっていってたし。

花奏が事故現場を通ったのって何時頃?」

「たしか…終電がうに無くなってたから、夜中の1時は過ぎてたと思う。」

「5時間か…」

リョウはまた暫く考え込んだ後、

「花奏、ちょっと会って来て欲しい人がいるんだ。」

と、その人の名前の書かれた名刺を渡してきた。


「真栄田…圭介…?」

「うん。俺が絶大な信頼を置いてる人だよ。

俺が死んだ時に、このスマホと財布だけは身につけていたんだよな?

 という事は、物盗りの犯行じゃないし……だったら()()()が絡んでる気がするんだ。」


「あの女…?」

「花奏を危険な目に合わせたくないけど…これだけはお願いしたい。真栄田さんに会って、俺の現状を知らせて欲しい。」

「現状って言っても…」

「そうだよな。信用して貰えないかもしれない。花奏さえよければ、ここに連れてきてもらえるかな?」


…難易度高い…このコミュ障の私にそんな高度な芸当が出来るんだろうか……


「う…うん…分かった。真栄田さんって人に会ってみる。でも期待しないでね…」

初対面の人にこんな非常識な状況を理解してもらうという難題に不安な顔をしていると、

「大丈夫だよ、花奏なら。だって俺には普通に接してるじゃないか。」


そういえばそうだ。いつの間にかリョウは家族の他に唯一と言っていいほど気を許せる人になっていた。


「リョウくんのために頑張ってみる。」

「取り合えず…」

と、暫く電源を切りっぱなしだったスマホを取り出し、電話をかけ始めた。


「もしもし、真栄田さん? 俺。リョウ。」

電話の向こうから驚いたような大きな叫び声が聞こえてくる。

「ちょ…ちょっと、耳痛いから少しボリューム押さえてよ。

明日、嶌崎花奏という子が真栄田さんに会いに行くから……うん…電話では話せないんだ。

うん…うん…そうだね。彼女の仕事が終わってからだから、夜になるよ。

あ、後さ、俺から電話があった事、今はまだ誰にも話さないで欲しいんだ。

うん…それじゃあ、明日宜しく。」


明日の仕事終わり…?

緊張して仕事なんか出来ませんけどぉ…



次回は明日の22:00更新予定です。

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