突然の告白
今朝のニュース番組も、リョウの行方不明のニュースがトップで放送されていた。
私は振り返り、ベッドに横たわるリョウくんの亡骸を見て途方に暮れた。
「どうしよう…自首するべきかな…?」
でもリョウとの、この甘々な生活を手放したくない。
毎日毎日、どんな辛いことがあっても、家に帰るとそこに癒してくれるリョウの笑顔があって欲しい。リョウの温かい手に触れてほしい。
私はとりあえず会社に向かいながら考えていた。
「いくら考えても、分からないものは分からない。
帰ってからリョウくんと相談しよう。」
と、お気楽に考えていた。
通勤の満員電車の中で、女子高校生たちが、
「ねえ、リョウくん大丈夫なのかなぁ…」
「ヤバいよね…早く見つかって欲しい…」
「この前のライブでは元気だったのに…」
と会話している。中には泣いてしまってる子もいた。
みんな、リョウくんのこと好きなんだな…
途端に自分がとんでもない事していると痛感した。
やっぱり自首するべきか…
会社でも、リョウのことばかり考えてしまって全く仕事に身が入らなかった。
「おい、嶌崎どうした? おまえのエクトプラズムがふよふよ浮いてるぞ。
捕まえてゴミ箱に捨ててやろうか?」
「河口先輩…」
「河口君。嶌崎さん困ってますよ。そういうこと言わないであげて。」
隣の席の派遣パートの小川さんが助け舟を出してくれた。
この河口昂生という先輩は、何かというと私にチョッカイを出してくる。
そんなに、この陰キャの私を揶揄うのが楽しいんだろうか…
どう返していいか分からないから、急いで席を立ち給湯室へ逃げよう。
「あの、コーヒー淹れてきます。」
「ごゆっくり。」
小川さんが笑顔でそう言ってくれた。
が、河口先輩は、
「俺もー。」
と、一緒に付いて来てしまった。
コーヒーを淹れたら急いで席に戻ろう…
そう思っていたのに、狭い給湯室で入口側に立ちはだかって退いてくれない。
「あの…」
「嶌崎さぁ、そろそろ俺の気持ちに気付いてもいいんじゃないの?」
「え? どういうことですか?」
「俺がこんなにお前に構うのは訳があるって言ってんの。」
「訳…?」
河口は私が手に持っていたコーヒーを取り上げて台の上に置いたあと、私の両腕を拘束しながら壁に押し付けた。
「何するん…んっ」
突然、本当に突然、全く意識もしていなかった河口からキスをされた。
「俺、お前の事好きなんだよ。
その位察しろよ。」
河口は、呆然としている私に台の上に置いたコーヒーを手渡し、頬を赤くして給湯室を出て行った。
何?
一瞬、何が起こったのか分からなかった。
どの位の時間そこに立ちつくしていたんだろう?
河口先輩が私を…? まさか…揶揄ってるだけよね? でも、こんな事するなんて…
我に返ると途端に恥ずかしさで顔が真っ赤になるのが分かった。
自席に戻ると、
「大丈夫?顔赤いけど…?」
と心配してくれた小川さんに、
「大丈夫です。」
と消え入りそうな声で答えるのが精一杯だった。
河口の視線は、自席からしっかりと私を捕え、
「嶌崎の唇、柔らかかったなぁ。絶対に済し崩しに俺のモノにしてやる。」
とつぶやいていた。
河口のやる気とは裏腹に、花奏に思いが伝わるのはまだまだ先になりそうなのに…。
次回は河口の妄想暴走SSバージョンです。
明日22:00更新予定です。