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君とこれからも幸せを見つけていきたい

 夏希と連絡が取れなくなって、一ヶ月が経つ。もちろん学校も始まっている。今まではなんの目標もなく、過ごしているだけだったけど、今では夏希を見つけることを目標に生活している。

 「ひぃー!お前の体臭臭うわ〜。さっさと消えろよ。お前がいるだけで、気分が損ねるわ」

今日も一段と酷い。「いつもの日常だな」と安心してしまう僕がいる。授業終了チャイムが鳴って、それぞれ皆んな行かなくてはならない場所へ行く。部活だったり、塾だったり、家だったり。でも僕は皆んなと違って、人を探しに行く。夏希を。

 学校を出て、うろちょろと歩いていると夏希と顔がそっくりな男の子を見つけた。大体小5だろうか。怪しまれないようにそっと近づいて言う。

「もしかして、夏希さんの弟さんですか?」

すると彼は驚いた表情で、

「え…はい!どうして分かるんですか?」

僕は正直に話す。

「夏希さんとの知り合いで、最近夏希さんと連絡がとれてなくて…もし夏希さんのことで知っていることがあるなら、教えてほしいんですけど…」

すると彼は

「一旦家に上がってくれますか?」

そう言いながら、彼は自分の家、夏希の家に案内する。

 

 「姉は一ヶ月前、足に腫瘍が見つかったんです。姉の意思のもと治療をして腫瘍を取り除けたんですけど…二度と歩けない足になってしまったんです」

僕はハッとする。夏希に腫瘍?手術?二度と歩けない?

「だからだと思います。きっと姉は、足のことをあなたに知られたくなくて…でも僕は貴方とは初対面だけど、話さなくてはと思い、話させていただきました。姉は今××病院にいます。行ってあげてください。お願いします」

 僕は急いで家に帰って病院に行く準備をした。母に嘘として「学校に忘れ物をしたから出かけてくる」と言おうと思ったが、母が

「春希、行きたいところがあるんでしょう。行ってらっしゃい。でもくれぐれも、悔いのないように。そしてまたこの家に帰ってくること」

と言った。母の目は全てを見抜いているような目で、「行ってらっしゃい」と言われて僕は家を出た。外は雨が降っていた。「まるで夏希と会った日みたいだな」と思いながら、携帯でマップを開き、弟さんに教えてもらった××病院に向かった。


 病院の受付に行って僕は、

「夏希さんの病室に行きたいんですけど」

と言った。すぐさま受付の人は案内してくれた。「ありがとうございます」と言いながら、ゆっくりと病室のドアを開ける。病室は静かで、雨の音が微かに聞こえていた。ドライフラワーが飾られている横に、雨を見ている夏希がいた。

「夏希!…」

夏希はまだ僕に気付いてないのに、驚かせるように大声を出してしまった。自分で自分を叱っていると夏希が、

「春希…私がここに居るってよく分かったね。色々あったんだね。まず、ここに来てくれてありがとう。でも、歩けない私を見て、春希がっかりでしょ?」

「私実はね?遊園地に行こうとしていた日に、すっごく足が痛くなったの。歩けないぐらいで親に相談したら、すぐに病院に連れて行ってくれてー。そしたらお医者さんに『腫瘍が見つかりました。すぐに手術をしましょう』てなってー。当然私はびっくりしたよ?手術?腫瘍?ってね。」

「その後に手術をしたの。麻酔が切れて目が覚めたら、足が動けなくなっている状態でさ。本当に絶望したなぁ。そのことを、春希に知られたくなくて連絡を返してなかったの。ごめんね」

「そんなことはいいよ」と僕は言う。

「もう一つ連絡を返していなかった理由があってさ。一ヶ月前の話なんだけどさ、私が春希に会ったこと覚えてる?」

「うん」と言った後、夏希は話を続ける。

「『君に幸せを教えてあげる』って言ってさ、幸せを叩き教えたじゃん?そのときは本当に幸せが、目の前に見えているって状態だったから言えたけど…。今は全然…。真っ暗闇にいる状態」

夏希は笑いながら言う。

「それを春希に知られたくなかったのも理由の一つ。私意外と強がりでさ。強がっちゃうんだよね」

「そんなことどうでもいい」と思いながら続きの話を聞く。

「知られたから、言っちゃうけど…今でも私に幸せはあるのかな?…」

震えた声で言う。

「歩けなくなって、走れなくなって。私に幸せはあるのかな、…」

夏希は泣きながら言う。

「ちょ!春希?なんか言ってよ〜、ベラベラ喋って私が変みたいじゃん」

僕は夏希に対しての想いを言葉に噛み締めながら言う。

「夏希、今まで夏希が教えてくれた分、いや幸せを与えてくれた分、夏希に幸せを与えたい。足が使えなくたって、僕が支える。サポートする。夏希が悲しかったら、僕が励ます」

「夏希に幸せを返したい。夏希が足を使えなくたって、僕が幸せにする」

「足が使えなくたって、不十分だからって、幸せは訪れる」

夏希はひたすら泣いていた。僕はとにかく励ます。


 僕たちはいつまでも、互いを支え合い、助け合うだろう。

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