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恐怖!宇宙人と巨大怪獣

 ドグルシャクモルが集まって来てダイオーに返り討ちにされている時に、ザクシーにはわかった事がある。

 ドグルシャクモルも恐怖を覚えるのだと。

 考えてみれば、恐怖を糧にしているのだからそれがどういう物なのかはドグルシャクモルにもわかっていて当然だ。どうすれば煽ることが出来るのかもわかっていたフシがある。

 そして同族をズタズタにして暴れ回り、狂気に満ちた笑い声を響かせながら目が光ったり腕をグルグル回したりするダイオーに恐怖を感じて合体した。

『根源』についてはどうだろうか?

 一方的に攻撃されるだけの関係なのか?

 そうではない、とザクシーは直感した。

 ユーシー星人の『根源』テクノロジーは、地球人で言えば『魂』『本能』『感情』を用いた技術だ。

 怒りによって力が湧く、悲しみで涙が出る、恐怖で身が竦む、そういった『存在しない物が生むエネルギー』を全種族が一つになり協力し、長い年月をかけてテクノロジーとして昇華させた物だ。

 超個体的な在り方はドグルシャクモルと共通する点でもあった。故に『根源』を直接攻撃される様な事が起きたのかもしれない。スズメバチがミツバチを襲うように。

 だがニホンミツバチが熱殺蜂球でスズメバチを退治する事もある。ましてや高度なテクノロジーを持つユーシー星人であれば――。

 ドグルシャクモルの目がエイホに向いている間、ザクシーはドグルシャクモルに対して、同族を捕捉する時のように『根源』を使った。

 そして『根源』でドグルシャクモルを認識する事が出来た。地球人的に表現すると、ひとり不安に知らない道を歩いている時に人影を見つけて、とりあえず他にも人がいて安堵する感覚。

「やれんのかって! チビ!」

 エイホの声がして、ザクシーはやった事が無い事をする覚悟を決めた。

「ああ……見てろ!」

 叫んでザクシーが光を放った。光る事が目的では無かったが、過去にやったことが無い程に『根源』の出力を上げた結果光ったのだ。

 地球人的に言うと、知らない道で出会った相手を、全力で『殺す』と決めて刃物を振り下ろす感覚。温和なユーシー星人どころか地球人でも普通は考えもしない――最大限の殺意を直接相手に叩きつける行為である。

 ザクシーも以前ドグルシャクモルに同じ事をされていなければ出来なかった。身を守る為では無く、憎しみでもなく、単純に相手を殺害する為の全力の殺意など、普通は抱かない。ザクシーはそれを、巨大なドグルシャクモルの中心へ向けて放った。

 ザクシーから放たれた光がドグルシャクモルへ吸い込まれていくのを全員が見た。

 何の破壊的な作用も無く、光は音もなく染み込むようにドグルシャクモルの中へと消え、不発に終わったのかと考えた者も居た。

 ドグルシャクモルは動きを止めた。ザクシーの目の前の巨大な個体だけでなく、世界中のすべてのドグルシャクモルが。

「……なんだ?」

 秋月達もモニターを見つめて息を呑んでいる。

「……巨大化の件もある、一度離れろ」

 秋月が悔しそうにそう告げる。

 内心ではこれで良いのかと自問している。攻撃のチャンスなのではないかと。が、直後に――

 ドグルシャクモルは狂ったように触手を振り回したり体を回転させたりと暴れだした。世界中のドグルシャクモルが同じように。

「危ねえ! 離れてて良かったぜ」

 ベーケイが焦った様子でそう言うと秋月は大きく息を吐いた。

「おいチビ! 何が起きてる?」

 エイホが跳躍してザクシーの強化ボディにしがみついて登ってきた。

「逆にアイツの『根源』をぶち抜いてやった」

「ほぉー、やるじゃん。で、お前は大丈夫なのか? もう怖くないのか?」

「怖くないわけないだろ。今も震えてるよ。でも見ろよアイツを」

 ザクシーは暴れ回るドグルシャクモルを指差す。

「怖いからヤケクソで暴れ回る。私がした事も同じだ」

「ふーん……まあ、一発かましてやったのは確かだ。スカッとしたろ?」

「……まあ、そうなのかもな。コレがざまあみろって感情なのかも知れない」

 二人はニヤリと笑い、エイホはザクシーの頭に乗ってペシッと叩いた。

「しかし、あんなに暴れられたら近寄れないぞ。疲れる様子もないし、どうするんだ?」

「それは今カースが……」

「カースが……戦うのか?」

 エイホが首を傾げる。


 暴れ続けるドグルシャクモルをモニターで見ている一同は焦っていた。

 どうやらドグルシャクモルが苦しんでいるらしいのだが、狂ったように暴れ回るのでグレイも宇宙海賊も遠距離からの攻撃になり、思ったように攻撃を集中させられない。地球人軍のミサイルも命中はするもののドグルシャクモルの表皮にダメージは与えられるが致命打にはならない。

 時間がかかればドグルシャクモルの調子も戻ってしまうかもしれない。核兵器を使うという選択肢は秋月の中にはもう無かったが、このままでは……と秋月が焦りを見せた。

「大丈夫です、来ます」

 カースがそう言うと、モニターに映る世界中の映像に光の玉が現れた。色とりどりの無数の光の玉。

「発光体多数出現! 正体不明!」

「あれって……」

 千村は見覚えがあった。

「色は違うけと、ザクシーさんみたいな……」

「はい! ユーシー星人の援軍です! 強化ボディを使える人が全員来ました!」

 カースが満面の笑みで飛び跳ねて喜んだ。


 そこからは淡々としたものだった。

 世界中のドグルシャクモルはユーシー星人によって跡形もなく消し飛ばされ、さしもの巨大ドグルシャクモルも時間はかかったが処分された。

「終わったのか……?」

 モニタールームでは全員が画面を見つめて立ち尽くしていた。

 世界中の人々が、何らかの媒体に映るユーシー星人を眺めていた。

 山奥のおばあちゃんも相撲中継が入らないので仕方なく見ていた。

 

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