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ク〇クラゲ

 ダイオーの飛び蹴りは大阪のドグルシャクモルを一撃で貫いた。

 風穴を開けられたドグルシャクモルはゆっくりと地面へ落ちていく。

「へっ! 雑魚が!」

 操縦席でニヤリと笑うエイホ。

「チムチム、次はどこが近い?」

 通信で千村に呼びかける。

「このまま向かう気ですか?」

「ダイオーの継戦能力ならまだまた行ける!」

「了解。えーと、近いのはK国ですが軍隊が頑張っているので、T国かR国の……アレ? ちょっとまってください。ドグルシャクモルの様子が……」

「どこの?」

「全部のです!」

 モニターに映るドグルシャクモルは、暴れるのを止めて高度を上げていく。世界中のドグルシャクモルが一斉に。

「なんだかわからんが攻撃は続行。弱体化はしているか?」

 秋月は(グレイのUFOの攻撃で地球人達の恐怖が薄れたのだろうか?)とも考えたが、形成が逆転するには至っていないので可能性は薄いと思いつつ一応確認した。

「いえ……耐久力は変わらずです。ただ、どこを見ているかわからんようなやつなのですが……どうも全目標は共通する一点に向いているような……」

「共通する一点とは?」

「大阪です」

「エイホさん、気をつけて! 何かするかも!」

「お? なんだコッチ来るなら好都合だ。まとめてかかってこいオラァ!」

 ダイオーが腕を振り上げてぴょんぴょん飛び跳ねる。

「エイホ、地面が壊れるからやめて」

 トオナに叱られた。

「トオナどこにいるの?」

「R国の手薄な場所を防衛中」

「大丈夫なの?」

「キビシイ状況だったけど、なんか大人しくなったから撃ってる……あ、消えた」

「世界各地でドグルシャクモルが消え始めています」

 千村が少し嬉しそうに言う。

「勝ったか?」

 エイホが脳天気に聞く。

「いや、気をつけろ、どうやら君を脅威だと判断したらしい」

 秋月の言葉が終わらぬうちに、ダイオーを取り囲むように多数のドグルシャクモルがいつの間にか大阪に現れていた。

「ダイオー付近の目標数10……15……20……まだ増えます!」

「数を増やせば勝てるとでも思ってんのか?」

 ダイオーが前方へ急突進する。膝関節も無いのにどうやってそのスピードを出しているのか。宇宙技術である。

 左へ微旋回しつつ右手を振り上げてアッパーカットを繰り出す。

 そこにいたドグルシャクモルが殴りつけられてのけぞる。ダイオーはそこから後方宙返りをしてのけぞったドグルシャクモルを上から踏みつける。

 そしてその場で高速錐揉み回転しつつ胸部ビーム砲をばら撒く。発射された光弾は一発も外れることなくダイオーを囲んだドグルシャクモルに撃ち込まれて次々に爆発する。

「すごい! エイホさん!」

「コレが私のダイオーの実力だ!」

 光弾を撃ち込まれたドグルシャクモルは絶命はしないまでもダメージは負って怯んでいる。恐怖を煽って得たパワーアップよりもまだダイオーの火力が勝っている。

 だがダイオーに乗られて回転されたドグルシャクモルは地面にめり込んで流石に絶命しているようだ。

 それを近くで見たドグルシャクモル達はダイオーから離れた。

「何だあ? 集まっといてビビったのか?」

 エイホの言葉に反応したのかはわからないが、ドグルシャクモル達が一斉に触手を叩きつけようと伸ばす。

 ダイオーは軽やかに跳躍し、振り回される触手の間を掻い潜って別のドグルシャクモルの上に乗る。

 乗られて何をされるのか察したドグルシャクモルが「ギイイイイィ!!!」と喚いて身体を震わせて自ら地面に身体を擦りつけた。

 ダイオーは飛び退いて宙返りして地面へ着地した。

 そしてエイホはわざわざ外部スピーカーを最大音量にし、

「ククク……ゥウェハハハハハハハァ!!!」

 と狂気に満ちた笑い声を放った。

「エイホ、それ気持ち悪いからやめてって前に言ったよね」

 トオナが通信で窘める。

「久しぶりにダイオーのカッコイイとこ見せられてるんだから良いでしょ! 私とダイオー強えー! うおー!」

 叫びながら腕をグルグルさせたり目を光らせたりしてはしゃぐダイオーの姿に、ドグルシャクモル達は危険を感じたのか身を寄せ合い始めた。


 ――――――――――――――――――――


 モニターでソレを見ていたザクシーが誰にも聞こえない小さな呟きを漏らした。

「……そうか……そうか……」

「どうしたの?」

 フラフラと歩き出したザクシーを慌ててカースが追いかける。

「……少し、行ってくる。心配要らない……君はみんなの手伝いをしていてくれ。……それと、あとで君に頼みたいことがある……ここに居てくれ」

「行ってくるって……大丈夫なの、ザクシー?」

 無表情で頷き、ザクシーは部屋を出ていった。

 心配そうにそれを見送るカースだが、ここに居てくれと言われたので追わなかった。ザクシーが言うのだから、それが必要な事なのだと理解していた。

「チムチムさん、ザクシーはどこかに行きましたが大丈夫ですので」

「えっ? そ、そうなの? いいの?」

「はい、では私もお手伝いしますね」

「ああ、うん、ありがとう」

 いいの? とカースよりも心配そうにキョロキョロとザクシーの姿を探す千村だった。


 ――――――――――――――――――――


 ダイオーの周りにいたドグルシャクモルは数を増やしながら身を寄せ合っていく。

「固まったならまとめて駆除しやすい。食らえっ」

 ダイオーの放つ光弾がドグルシャクモルに次々に命中して爆発する。

 自衛隊のミサイルもやっと出番とばかりに飛来して炸裂した。

「いいねいいねー! 世界中にいたやつ全部ここにいるの?」

「いえ、地球側の攻撃が弱い地域にはまだ残って暴れています」

 千村が各地の状況をモニターでチェックして続ける。

「地球人の軍が向かいにくい僻地はグレイと海賊のみなさんが応戦してくれているので、エイホさんの所が片付けば……今、近隣国の応援も向かっていますから、頑張って!」

「あいよ!」

 エイホが力強く答え、ミサイルと光弾がさらにドグルシャクモル群を捉え続ける。

 ここで攻撃を止めて煙が晴れるのを待てば煙の中から反撃される……そんなお約束が頭をよぎり、誰も手を緩めなかった。

 が、予想外の事が起きた。

 煙を吹き飛ばして、巨大なドグルシャクモルが現れたのだ。

 ここに集まっていた数十体が合体しても計算が合わないほどの巨体。合体と膨張を同時にしたような巨大化だった。元の大きさが大体50メートル四方に収まるくらいだったが、今は1キロはあろうかという大きさだ。

 そんな物がいきなり出てきたのだから、ダイオーは吹き飛ばされて海へ落ちた。

「エイホさん!」

「エイホ!」

 千村とトオナが呼ぶが、返事は無い。

「まずい! ダイオーは水中で活動するようには出来てない!」

「浮いてこれないんですか?」

「……出来るはずなんだけど、吹き飛ばされた時にどこか壊れたのかも……」

「俺が助けに行く」

 ベーケイの戦闘機ギャプゼルが猛スピードで飛来し、海へ飛び込んだ。

「……攻撃は続けますか?」

 自衛隊員が秋月に聞く。

「ああ、やるしかない。世界中のグレイも海賊も、地球の軍も応援に向っている。最悪、核兵器の使用も計画されている。それが有効かどうかはわからないが……」

 秋月が唇を噛む。

「どこならいいってわけじゃないですが、よりによってこの国でそんな事にはなって欲しくないですね……」

 桂も珍しく悲痛な面持ちでうつむく。

 ミサイルや駆けつけたグレイの円盤の謎光線、宇宙海賊のギャプゼルの光弾が無数に飛び交い、巨大ドグルシャクモルへ命中するが効いている様子はない。

 長くなり数も増えた触手を回転しながら振り回し、自分に向かってくるもの全てを薙ぎ払った。

 ミサイルもグレイの円盤も海賊のギャプゼルも、木の葉のように吹き飛ばされてしまった。

 その一薙ぎで全員が思ってしまった。

 ――あ、コレは無理だ、と。

 それでも攻撃の手を緩めるわけには行かない。負けたら即ち人類滅亡なのだ。

 秋月のみならず、世界中の指導者も核兵器の使用が頭をよぎったその時、ドグルシャクモルの前に青白い光の玉が現れた。

「あれは――」

「ザクシーか?」

 光の玉が人の形に変わり、ザクシーの水色の強化ボディが姿を表す。

「何を……?」

 何故わざわざ天敵の前に姿を現したのか、誰にもわからない。

「オイ、ザクシー」

 全員の通信機にその声が聞こえた。

「やれんのか?」

 エイホだ。

 ベーケイのギャプゼルの上にびしょ濡れで生身で跨がっている。

 エイホがギャプゼルから跳躍し、巨大なドグルシャクモルに手刀を叩きつけた。

 肉を裂きはしたが、サイズが違いすぎてダメージにはならない。が、ドグルシャクモルは突然現れたザクシーよりもエイホに注意を向けた。

「やれんのか?」と聞かれたザクシーはまだ返事をしない。

 ドグルシャクモルは地面に着地したエイホに向けて全ての触手を開いた。ハエトリグサの様に開いた口に沢山の牙、その奥にぬらぬらと光る目玉。ドグルシャクモルがザクシーの『根源』を破壊した時の仕草である。

 一度はダイオーに向けられたが平気だった。今度は生身である。

 エイホは仁王立ちで睨み返している。

「エイホ、逃げなさい!」

 トオナの叫ぶ声がするが、エイホは動かない。

 ドグルシャクモルを睨んだまま、叫ぶ。

「やれんのかって! チビ!」

 ドグルシャクモルの触手が閉じたり開いたりして、どうやら精神攻撃をしているようだが、エイホは微動だにしない。

「ああ……見てろ!」

 ザクシーが叫んで、激しい光を放った。

 

 

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