戦え!宇宙人
渋谷上空を漂うドグルシャクモルは、思いの外人間の避難が早かった為か、触手の先の無数の目を使って辺りの観察をしていた。
しばらく観察し、何かを見たのか、はたまた近くで一番大きい建物だからなのか、スクランブルビルに狙いを定め、触手を振り上げた。
ドグルシャクモルに対する地球人の避難の鉄則は地下へ逃げることだったが、やはり全員が間に合ったわけではなく、スクランブルビルにも取り残された人々が居た。彼らはドグルシャクモルの触手が自分達がいるビルを攻撃しようとしているのを見て悲鳴を上げた。
触手が薙ぎ払おうとした瞬間、猛スピードでダイオーが飛んできて、頭上に上げた両手でドグルシャクモルを殴りつつ、そのまま上空へ飛んでいった。
衝撃で多少ビルの窓が割れて再び悲鳴が上がったが、ダイオーがドグルシャクモルを連れて行った事に歓声が上がった。
ダイオーは両の拳をドグルシャクモルにめり込ませたまま高速で飛行し、人のいない広い場所を見つけると急上昇し、すぐに急下降。地面へ突き刺さるように突っ込んだ。
大地を揺るがして轟音が鳴り響き、土や草が爆ぜた。
それらが落ちてくる前に、地面にめり込んで苦しむドグルシャクモルにダイオーが拳を振り下ろす。
「しゃあっ!!」
エイホが叫ぶ。ドグルシャクモルはなすすべ無く殴られ、肉片を撒き散らす。
ダイオーの胸部パーツが開き、光が収束するのを見て、ドグルシャクモルは触手を地面に叩きつけて跳躍した。
「逃すかっ!」
ダイオーが放った光線がドグルシャクモルを貫いた。
派手な爆発を伴い、ドグルシャクモルは弾けとんだ。
「次は大阪だ!」
エイホが勝ち誇り、ダイオーが両手を振り上げてガッツポーズをし、そのポーズのまま飛んでいった。
――――――――――――――――
「ダイオー、東京のドグルシャクモルを撃破。大阪へ向かって飛行中」
「えー! すごいすごい、強い!」
隊員の報告に目を輝かせて喜ぶ千村。
「撮影した撃破動画をネットに流しました。順調に拡散されています」
「よし、大阪での戦闘の撮影も頼む。他国での様子はどうだ?」
「A国の一体は軍による集中砲火で撃破出来そうです。C国は避難が想定より上手く行っていない様子ですが軍の攻撃は開始されています」
「大国は時間はかかるがなんとかなりそうか。軍事力の低い国は単独での撃破は難しそうだな。被害が出れば恐怖も煽られる。時間との戦いでもある」
秋月の額に汗が浮かぶ。
「S国のドグルシャクモル、宇宙海賊部隊により一体撃破」
「I国、避難の遅れと軍の混乱により被害拡大」
「T国、O国火力不足で都市部被害拡大、支援要請」
撃破報告はあるが、全体で見ると押されている。
ザクシーはそれらの報告を聞きながら唇を噛んだ。
「私は何を……」
呻くように絞り出した声を聞いて、カースが寄り添う。
「今こうして戦う態勢が整ったのもあなたの力あっての事ですよ……」
「わかっている……しかしこのままでは……」
大モニターに映る被害状況を睨み、ザクシーは『根源』を使おうとしてみるが、途端に顔は青ざめ息苦しくなってしまう。
「無理しないで、私達にできることはまだあります、地球人とエイホさんたちを信じましょう!」
そう言いながらも、カースにもこのままでは被害は広がりドグルシャクモルが強化されてしまうであろう事は想像に難くない。
秋月も千村も隊員達も必死に情報伝達やネット工作を続けては居るが、現実の苦戦はひっくり返しようがない。
巨大怪獣が触手を振り回せばビルだろうが橋だろうが吹き飛ぶし、多少ミサイルが当たったところで即死はさせられない。逃げ遅れた人間を見つけては恐怖を煽るように踊り狂い、力を増していく。
「マズイぞ……予想よりドグルシャクモルの強化が早い……戦力が足りない……」
モニターの支援要請が加速度的に増えていく。
「ぐぅお……」
ザクシーが苦悶の表情で『根源』を起動する。
視界に浮かぶモニターがノイズ混じりになって消えそうになるが、自らの腿あたりを殴りつけて無理矢理持ち直そうとする。
「やめて! そんな状態でアーマーつけても戦えるわけないでしょう! そんな事あなたがわからないわけない!」
「だが……このまま指を咥えて見ているわけには……いかないっ!」
カースはザクシーのその目に火が灯るような光を見た。
が、ザクシーは息も絶え絶えに倒れ込んでしまう。
千村が駆け寄り、抱き上げる。
「無理しないで……大丈夫、私達は負けないから」
千村がそう言って微笑むが、明らかに強がりだ。自分を抱き上げている手が震えているのをザクシーは感じていた。
「……みんな……すまない……」
ザクシーが悔しさで俯いた。
その時、隊員の一人が叫んだ。
「世界中に新たな未確認飛行物体多数出現! ドグルシャクモルへの攻撃を開始しました!」
全員が巨大モニターを見る。そこに映るのは……
銀色の円盤。
「あ……アレは!?」
無数の円盤が謎の光線を発射し飛び回っている。円板の小窓にズームアップすると、大きな目の何かが乗っている。
「グレイだ! 本当に居たのか!」
ザクシーが飛び起きて叫ぶ。
「ええ……本当に居たんだ……」
その場の地球人達もそう呟いて呆然とモニターを眺めていた。
最初に我に返ったのは秋月だ。
「なんにせよ援軍だな、うん! さあ反撃開始だ! まだ押されている状況は変わらない! われわれのチカラはまだまだ必要だぞ!」
「はい!」
千村もザクシーをカースに託して秋月の補佐へ戻っていった。
「頑張れ……」
ザクシーは祈るようにモニターを見つめた。
エイホのダイオーが大阪のドグルシャクモルに強烈な飛び蹴りをお見舞いしている所だった。




