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宇宙人と悪の組織

『チムチム、悪の組織とか無い?』

 エイホから突然連絡が来た。

「あ、悪の組織ですか?」

『うん、誰がどう見ても悪いヤツ。最低のクズみたいなヤツ』

「えーっと、詐欺グループとかですかね?」

『なんでもいいよ。ソレどこに居る?』

「いや、それはちょっとわかんないですけど……どうしたんですか?」

『ザクシーが自慢して来たのよ。自分は人気があってフィギュアも出てるって。ムカついたから殺してもいいんだけど、私が本気になればアイツの人気なんかすぐに超えれると思うんだよね。その方がアイツも悔しがるだろうし。だから悪いヤツをやっつけようと思ってさ。悪い宇宙人退治はアイツがやってるから、私は悪い地球人を退治しようかなって』

「あぁ……なるほど……」

『あとさー、トオナ? 十腰内? まあどっちでもいいんだけど。通信しても出ないんだけどなんか知ってる?』

「あ……なんか秋月さんと一緒に偉い人との会議に行ってます」

『偉い人って?』

「大臣とか、政府の人です」

『それは別に偉い人じゃないでしょ。本当に偉いのはチムチムとか、現場で働いてる優秀な人達だよ。大臣とかあーいうのは偉そうにしてるだけで大したことしてないよ』

「えへへ、そ、そうですか? あ……じゃあ悪の組織に詳しそうな経歴の隊員を紹介しますね」

『よろしくねー』

 電話を切り、千村仁美は立ち上がった。

 対策本部の事務所の隅で、いつも静かに事務仕事をしている男がいる。

 中肉中背でメガネをかけたこれと言って印象に残る特徴のない男。物静かだが暗いわけではなく、隊員同士の雑談にも参加する。協調性はあるが率先して皆をまとめるタイプではない。普通なのだがとこか掴みどころのない男。

「桂さん」

 千村仁美に声をかけられ、桂は「はい」と即応した。話しかけられるのがわかっていたかのように。

「桂さんって」

「はい、公安です」

「今でも?」

「はい、今でも」

 笑顔を浮かべる桂。

「つまり」

「出向して来ているという形ですね。自衛隊の皆さんと同じです」

「あの」

「はい、自由はある程度利きます。単独で動いても十腰内博士や秋月さんのように他国の工作員に狙われるような事はありません」

「先読みしないで下さい」

「電話の話が聞こえておりましたので。悪の組織を紹介すればよろしいのですね?」

「はい、そう、エイホさんに」

「宇宙人関係の任務ということであれば問題なく動けます」

「うーん大丈夫かなあ。この人とエイホさん会わせて」

「まあ怒らせるようなことはしないように気をつけます」

「なーんか、混ぜたらだめな組み合わせな気がしてきた……」

 宇宙人に極力協力するように、と言う取り決めがなされているので断りはしないが、桂がエイホを制御する姿が思い浮かばない。エイホが桂を振り回すのは想像できる。

「うーん、まあいいか。おまかせしますね」

 千村仁美は命令を守っただけだ。後のことは考えない。それが彼女が身につけたメンタル維持方法だ。


 

 後日。都内某所のビルの一室にてエイホと桂は落ち合った。

「桂と申します。会うのは2度目です」

「じゃあ私の事は知ってるね。よろしく」

 エイホが手を差し出し、桂がその手を握る。

「悪の組織を御所望との事ですね。最初は詐欺グループの拠点などでいかがでしょうか? 近いし潰してしまっても問題ありません。背後にいる組織のことはもう掴んでありますが、制圧する人員が確保できずに放置されている、といったところです」

「話が早くていいね。ちなみにどういう詐欺をしてたのかな?」

「お年寄りを中心に電話をかけてお金を振り込ませたりカードを騙し取ったりしている様ですね」

「ふむふむ。じゃあ手加減ミスってもいいね」

「全く問題ありません。あ、エイホさんこんな物を用意しましたが使いますか?」

 桂がバッグから取り出したのは、

「お面?」

「仮面、と言った方がカッコイイかと。正義の味方といえば正体を隠すものです。そのほうが何かと動きやすいでしょうし」

 仮面は顔全体を覆うタイプで、目だけ穴が空いたシンプルなデザインだ。色は青。

「いいね! カッコイイ」

「息苦しさや喋りにくさを感じるようでしたら改良しますね。あとエイホさんは髪色が個性的ですのでカツラもありますが」

「かぶるかぶる。変身! なんつってね」

 仮面をつけ、ストレートの黒髪ロングタイプのカツラを被ってポーズを取るエイホ。

「良いですねえ。スーツも作るべきかも知れません。宇宙人っぽいやつを」

「元々使ってたスーツもあるんだけど、宇宙人っぽさに欠けるしボロボロなんだよね」

「ではコチラで用意します。デザインの要望があれば連絡を下さい」

「わかった。あのさー、桂ってザクシーと同じ種類の宇宙人だったりしない? 話が早すぎて地球人と話してる気がしないんだよね」

「生粋の地球人の日本人です。愛する地球の為に悪い奴らの退治をよろしくお願いします」

「よし、じゃあ今日は仮面とカツラで行くぞ! カツラと桂ってメッチャ紛らわしいね?」

「私もそう思ってました。でもウィッグって呼び方はちょっとおじさん的に照れるんですよねえ。無理して使ってる感あります」

「おじさんって歳なの? 35歳くらいに見えるけど」

「35はおじさんでしょうー。あ、私43ですけど」

「へえー若く見えるねー。私は地球人換算だと何歳だろう。わかんね」

「宇宙だと1日って概念どうなるんです?」

「ウチの組織はいろんな種類が居たから、バラバラだったねー。小さい奴らはよく寝てた気がする」

「すごい興味深いですね。トオナさんは隠してたからそういうの聞いたことないんですよねー。いつか教えて欲しいです」

「まあ悪者退治が今後も続いていけば、そんな回もあるかもね」

 エイホがニコッと笑う。仮面のせいで目しか見えないが。

 桂も笑う。

「じゃあ第一回悪の組織退治、よろしくお願いします」

 そう言って桂が勢い良く窓を開けると、すぐそこに向かいのビルの窓がある。

「私は後ろからついていって撮影させて頂きます」

「オッケー! 行くぞ!」

 エイホが窓から飛び出し、隣のビルの窓を蹴破った。

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