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宇宙人・オブ・ザ・デッド

「エイホ、これはどういうことなんだ?」

 ザクシーの基地にエイホが居る。ザクシーが連れてきたのだ。外部者のエイホをわざわざ転送装置に登録してまで、すべての陸地から最も遠いとされるこの海上基地へ。

「何がだよ?」

 エイホはと言うと椅子の背もたれに限界までダラリともたれかかり、興味なさそうに基地内を眺めている。

「このSNSを見てくれ」

「んあー?」

 謎のパソコンらしき機械のモニターをかじりつくように睨み、右手で端末を素早く操作して画面をスクロールさせるザクシー。

「さっきトオナに提示された作戦をやって来たんだ」

「あー、なんかやってたね。なんだっけ。お前がただ見てるんだっけ」

「ザックリしすぎてるなあ……。いつも悪い宇宙人を出してから私が現れるパターンだから、先に私が現れてから少し遅れて宇宙人が来る。私が睨みつけるだけで悪い宇宙人を退散させる、という演出だ。対処だけでなく予防も出来るのだと示す狙いだとトオナが提案してくれた」

「あーそうなんだ。で、それが失敗して今度は私に泣きついてきたのか?」

「失敗してない! 上手くやったし地球人の反応も良かった。だがこのSNSのトレンドワードがおかしいのだ。トオナは仕事中で忙しいと言って取り合ってくれないからお前に相談しているんだ」

「あー?」

「見てくれ、トレンドになった『ザクシー』と言うワードを辿ると……」

「んー」

「ほら、全く関係ない動画や、全く同じ文章を投稿する奴らが沢山いて、ザクシーが何をしてトレンドになっているのかわからない状態なんだ!」

「あー、ゾンビだな」

「ゾンビ?」

「自分のコメントの視聴数を稼ぐためにトレンドになったワードに便乗しようと適当な動画や文章を大量に投稿する。いわゆるゾンビって奴」

「どうすればいい?」

「どうもできない。このSNS側のシステムが変わらない限り。視聴数に応じて報酬が貰えるらしい。私もよく知らないけどな。それでなりふり構わずこうして金を稼いで暮らしている奴らも居るって話だ」

「じゃあこれは地球人的には許される行為なのか?」

「いやお前と同じ理由で怒ってる人も居るし、デマの拡散もするから問題にはなってる」

「じゃあ私がシステムに介入してこいつらのアカウントを全滅させてもいいんだな?」

「ワハハハ、すげーキレてんじゃん! そんなんしたらザクシーがSNS操作してるってすぐバレるぞ?」

「ぐぬぬ、じゃあどうやってちゃんと私の話をしてる地球人の投稿を見つけたら良いんだ!?」

「ゾンビを1匹ずつブロックしたらいいじゃん」

「え?」

「お前が」

「いっぱいいるぞ?」

「がんばれ」

「いっぱいいるんだぞ?」

「私おばあちゃんに入れ歯洗浄剤買ってきてって言われてるからさ、帰してくんない?」

「……ゾンビ……」

「戦えザクシー! 日没から夜明けまで、てな! いやアレはゾンビじゃないか……まあ頑張りな」


 エイホを帰してからザクシーはチマチマとゾンビのブロックを始めたが、やがてやめた。

 少しだけ地球人が嫌いになった。

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