逆襲の宇宙人
リベンジの機会はすぐに訪れた。
というか訪れさせた。
エイホはもう一度ダイオーでザクシーと戦うため、毎日しつこく連絡した。
修理しろ、戦え、と毎日うるさいのでザクシーはユーシー星のテクノロジーを用いてダイオーを修理した。
修理に際し、パワーアップや機能の改善案も出したが、もとのままで良いというエイホのこだわりを尊重した。
そして今、ザクシーとダイオーが向かい合って立っている。
場所はエイホが決めた日本の山間部。
「ザクシー、お前の宇宙人強さランキングスレッドで殿堂入り1位の座は今日で私のものになる」
「え、なにそれ。お前、そんなもののために再戦したかったのか?」
「今にそんな口を利けなくしてやる」
「まだ『そんな口』に該当する発言してないだろ」
「黙れドチビ! 行くぞ!」
エイホが操縦桿を操り、ダイオーはゆっくりと前進を始めた。ゆっくりと。
「……まだ攻撃したら駄目なのかな?」
右足ズシン。左足ズシン。一歩一歩が遅いダイオー。
「膝関節もないし股関節も回転しないからまっすぐしか歩けないだろソイツ」
「いいぞ、撃ってみろ!」
「避けれないだろ……まあ撃つぞー」
ザクシーが手から青い光弾を放つ。横にステップ出来ないダイオーが避けられる軌道ではないが……。
ダイオーは前傾姿勢のまま倒れるかと思うほど傾いたが、そこから右足を前に出し、右足の外側を支点にして左半身を後ろへ回転し、光弾を避けた。
「すごい!」
ザクシーは素直に驚いた。
横移動を想定していない機体で、無理矢理それを可能にしたエイホの操縦技術に。
「見たか! 機体の性能の違いが戦力の決定的差では無……」
パァーン!
2発目が命中し、エイホのセリフの途中でダイオーの頭が飛んでいった。
「あ……」
ドーンと遠くで爆発音が聞こえた。
「……コレはマズイな」
倒れたダイオーの胴体を見つめてから、ザクシーは天を仰いだ。
――――――――――――――
「クソッ!」
翌日、エイホの声でおばあちゃんが振り返った。
エイホがスマートフォンか何かを見ながら悔しがっているが、おばあちゃんは特に何も言わず床に置いた新聞に目を戻した。
「最下位殿堂入りだと……」
宇宙人強さランキングスレッドである。
「もう一回だ……次こそ……ん?」
再びリベンジを誓ったエイホの目に他のスレッドタイトルが入った。
『やっぱり宇宙人対決ってヤラセじゃね?』
「あっ」
こうならないための宇宙人同盟だったのだが、失敗した。
「リベンジはしばらくやめておいてやるか……。ザクシー怒ってるかな?」
流石に少しだけ反省した様子のエイホだった。
だが、良い事もあった。
飛んできたダイオーの頭部が、住民の反対を押し切って建設されたメガソーラーを吹き飛ばした事により、一部ではダイオーへの感謝の声が上がっていた。
宇宙人がやった事だし、周辺調査のために太陽光パネルの再設置も認められず、その地域ではダイオー人気が急上昇したという。




