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ミミックボランティア 留年妖魔と偽りの土地神少女  作者: ムタムッタ
chapter 2 碧海サル殻合戦

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2-2(6)連続出勤と人材派遣②


「さてと………」


 ゴミ袋を広げ、軍手をつけ一人で『お仕事』を始める。とりあえず道に落ちているゴミを見ても強制返戻は起きない。擬態の時にやれるだけやっておかないと街中を妖魔もとの姿で尻ぬぐいする羽目になるからな。


 とまぁ面白くもないモノローグを展開していると、目の前にコーヒーの空き缶が転がってくる。今日日自販機の横にゴミ箱があるというのに、なぜこんなところにあるのか。何となく肩にのしかかってくるダルさを自覚しつつ、空き缶に手を伸ばそうとする──が、背後からやってきた者に颯爽と拾われる。


「あっ………あ?」


 顔を上げるとそこにはキックボードに片足を乗せ、トングで缶を掴む黒スーツにサングラスの男が一人。どこかで見たことあるそいつは俺と同じくゴミ袋を携え、今まさに缶を入れた。


「…………」


 なんだコイツ。………本来なら何か礼でも言った方が良いのか。しかし男の持つゴミ袋を見ると、コーヒーの空き缶の他に分別した方が良いゴミがちらほら。ひとまとめに入れてると後が面倒だぞ……

 無言のまま突っ立っていると、男は踵を返して地面を蹴りキックボードを走らせ去っていく。反対側の歩道にもスケボーを駆りつつゴミ拾いをする輩がいた。


「…………ありがたいねぇ」


 そういえば前にも今の奴らいたな………なんなんだ?


「これはこれは! 従者である漆葉様に感謝いただけるとは恐悦至極!」


 突然背後からもう一人男が現れる。


「ぬぁッ! って………あんた確か………えっと、さ、さ……」

「猿山、キンジでございます、はい!」


 先刻の男と同じ黒スーツに赤いネクタイを締めた人物『sape』の人間、猿山キンジである。


「あぁ、そう。猿山猿山。……でなに、アレあんたのとこの社員?」

「はい、度重なる妖魔の出現で支部の皆様が行っていた清掃活動にも支障が出ているようなので! 支部にご提案させていただきこの度我々『sape』がお手伝いさせていただきます、はい!」


 はいはい一々うるさいな…………つーか、外部と協力しないんじゃなかったんかい。


「へぇ……そりゃご苦労なことで」

「おっと! これから会議がありますのでこれで! はい、では!」


 駆け足で猿山は去っていった。

 そういえば、サルも黒の背広だったような………


「いやいやいや…………さすがに安直だろ」


 単純な偶然、妖魔も洒落っ気を出していると考えるのが妥当か。しかし、ゴミ拾いもままならないんじゃいよいよどうにかしないとなぁ。


「つってもなぁ………」


 サルの実体の居場所がわからない限り如何ともし難いのが現状。さっさとどうにかして炙り出したいが………


「……ま、とりあえず協力してくれるならいいか」


 気を取り直して、支部へ向かいながら目につく小さなゴミでも拾い上げ歩を進めた。


 ◇ ◇ ◇


 支部には目にクマを作って帰ってくる者や、宿舎に殻装姿のまま直行しようとして止められる者など、疲弊の様子がよく分かる光景があった。


「うぅ、もう連続12連勤だぞ…………勘弁してくれよ」

「これなら前の偽黒蜥蜴のがマシでしょー最悪土地神様一人で戦ってくれてたし」


 ゴミを分別していると後からやってきた職員の愚痴を耳にしてしまう。なんともブラックな職場じみた会話である。この調子では土地神の過労が問題視されるのもわからんでもない。


 と、そんな愚痴をこぼす職員と目が合う。


「漆葉〜、なんとかならないのか?」


 えーと、名前がわからん。フランクに絡んでくる顎髭の男は前にも喋った気もする。


「無茶言うなよ……つーか、前だってかなり必死だったろ」


 何か言うなら白神に言ってほしいものだ。


「だって従者でしょ? ゴミ拾いとか公園の復旧もいいけど、妖魔を倒すのが土地神様と漆葉の本業でしょう? もう少し頑張ってほしいわ」


 れまた名前の覚えていない、顎髭の隣にいたショートカットの女に嗜められる。


『申し訳ございませんが、妖魔討伐は土地貢献に含まれません』


 以前土地神の刀────『さくらみこと』は俺に言った。未だに真意はわからないが、他人から妖魔との戦いについて問われると思い出す。


「へいへい、白神にも発破かけときますよー」


 職員の不満を適当に流しつつ、ゴミをまとめる。今回は『sape(セイプ)』の協力? もあって大して拾う量も多くなかったな。

 と、若干の物足りなさを感じていると支部の建物から榊女史がやってきた。何だか目の下のクマがくっきり見える。


「精が出るわね、漆葉君」

「あ、支部長……ご苦労様です」


 わざわざあちらから出張ってくるとは。


「猿山に会いましたよ、結局あの『sape』とかいう組織に協力してもらうんすね」


 白神が断ったというのに、掌がドリルでできてるのか妖魔対策支部というのは。

 榊女史は苦虫を嚙み潰したような表情を作りながら遠い目で街を見る。


「そうなります………漆葉君の発案で始めたゴミ拾いだけどね……いつのまにか碧海市民には当たり前になってて、このところ少しでもゴミがあると苦情の電話が市に来るそうなのよ」


 ……そんな事になっていたとは。


「こちらとしては妖魔対応以外にも地域貢献になるからあくまで善意で行っていましたが……今回のサル出現で他のことが後手後手になっている現状で通常の運営をすることはできないの」

「はぁ……なんかすいません」


 元は土地神の力に関係しているからなんだが、そんなに負担になるかねぇ。


「別に構いません………それに、先方は支部内に入らずあくまでボランティアという名目で協力をしてくれるそうなので………言ってしまえば無償の人材提供になりますね」


 まぁ……俺としては現状維持ゴミひろいをやってくれるならそれでいいんだが、できれば支部の人間がやった方がいい気がするんだがなぁ。


 何より、擬態にんげん社会ではタダより高いものはないと思うが。


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