【第三話 1】
「おーい、近藤! やべーよやべーよ!」
一難去ってまた一難、シマシマ模様の神馬に乗ってパトロール中のカウボーイ、近藤愛之助が赤羽神社へと戻る道すがら、やんちゃな小学生たちが呼びに来たのだ。
「お前ら、近藤『さん』な! 今度は何があったんだ、小童ども」
「『おこちゃま』な! 聖夜さんが変な女にキレてんだよ!」
「聖夜がキレた!? なんで?」
近藤の部下で心霊保安官の足利聖夜は彼らの遊び相手で兄貴分だ。そのため、国家アイドルで神社の神主である近藤よりも尊敬している。
「俺たち、聖夜さんとタロクエしてたんだけど、女子高校生がやって来てさ、近藤のことを話しているうちにケンカになって、とにかく来てくれよ!」
「あー、わかったわかった! だけどお前ら、先に宿題をやったよな?」
ギクッと、冷や汗をかく子供たちだ。子供を躾ることも大事な職務だ。
「女子供だろうが、桜ノ宮だろうが、俺の兄貴をバカにする奴は許さねぇからッ!」
「バカにしていませんって、誤解ですって」
カウボーイが鳥居をくぐると、お賽銭箱前でアサギ色の袴を履く、明るい茶髪でピアスをする足利聖夜が白桜髪の少女に怒っていた。ベージュ色のブレザーを着ている、霊道学院の学生のようだ。
「あれ~、誰だと思ったら、愛月ちゃんじゃん。おひさー!」
「近藤さん、ご無沙汰しております」
シマコを馬小屋に運んだあと、近藤はゆっくりと歩み寄る。
軽く会釈するのは桜ノ宮愛月、日本合衆国を建国した三ノ宮の一角、桜ノ宮家のご令嬢だ。世間からは「桜の姫」と呼ばれている。
プードルのよう品のある顔立ちで、華奢な体型ではあるものの、鍛え抜かれた曲線美は同性から嫉妬の対象になるほど努力の結晶と自負する。
近藤との関係は彼女の兄が彼の同期生で、また彼の両親と兄妹の母親が霊道学院の同期生にもあたる。護衛が必要なほど高貴な身分なのだが、一人で来たようだ。
「最後に会ったのはいつだっけ?」
「たぶん、去年の秋の実戦演習じゃないですか?」
近藤が心配ご無用と思うのは、彼女が現時点で少佐相当の実力があるからだろう。
「あー、そうだった! でもさ、今日って、れいちぇるずのオーディションでしょ? 勇月から受けていると聞いたけど、終わったの? どうだった?」
「あー、そのことなんですけどー……」
「合格したらしいです。で、断ったと」
「えー、すごっ! え、断ったの? なんで?」
少女はキッパリという、「私、恋愛したいんで」
カウボーイが疑問を抱く。
「国家アイドルは恋愛禁止の誓約があるのに、オーディションに応募したの?」
「話すと長くなるんですが――」
桜ノ宮愛月は兄が勝手にオーディションに応募したこと、オーディションで合格したが、恋愛がしたいので断ったこと、代わりに赤羽神社でインターンをすることになった件を伝えた。




