エルフの涙
レビュー執筆日:2018/8/9
●彼らの世界観がさらに追求されている一方で、やや間延びしている印象も。
【収録曲】
1.アダムの覚悟
2.イヴの決意
3.ヒナユメ
4.エデン
5.オムレット
6.赤い屋根の見える丘へ
7.滲み続ける絵画
8.ゴールドメダル
9.hey my men Feat. OK. Joe
10.Fly Fish
11.The FANtastic Journey
12.手紙返信
13.エルフの涙
Aqua Timezというバンドは「絵本のような世界観が特徴」とこれまで何度も紹介してきましたが、本作ではそれがかなり大きく表れていると思います。ジャケットのイラストも明らかにそんな感じですし、曲のタイトルにおいても『アダムの覚悟』、『イヴの結論』、『エデン』、そしてタイトルチューンの『エルフの涙』とかなりファンタジックな香りが漂ってきます。さらに、『エデン』の歌詞は「魔法がなくてもいい」ということをテーマにしており、この題材だけで一冊の絵本が書けるのではないでしょうか。
また、今作は前作でいう『オーロラの降る夜』や『MASK』のようなシリアスな印象のある曲は収録されておらず、全体的に明るく優しい雰囲気で統一されています。特に、アルバムを締めくくる『エルフの涙』は、約4分という決して長いとは言えない時間の中に壮大なサウンドと優しさの極致とも言える歌詞が凝縮され、まるでアルバム全体を温かさで包み込むような楽曲となっており、Aqua Timezの一つの到達点と言ってもいいでしょう。
しかし、アルバム全体で見ると、少し間延びしている印象は否定できません。一曲一曲が別段長いというわけではありませんが、前作と比べて丸みを帯びた雰囲気があるため、メロディにインパクトが少なく、アレンジに関しても少し緩急に欠けるところがあります。『hey my men』のようにノリの良いインパクトある楽曲もあるのですが、さすがに「ラーメンをテーマにしたヒップホップナンバー」はこのアルバムに合わないのではないでしょうか。(曲自体は面白いのですが)
まあ、色々と書きましたが『hey my men』が収録されていることを除けばアルバムの統一感で言えば彼らの今までの作品の中で一番ではないでしょうか。個人的には間延びしている印象が拭えないのでこの評価とさせていただきますが、聴く人によっては最高傑作に感じられるかもしれない、そう思ったアルバムでした。
評価:★★★★