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実際に戦ってみたけど加護は反則でした


 額から汗が垂れる。文献をめくる指先が震える。冷静に考えろ! 何が必要だ!


 つまり、

①同じように魔力を身体能力強化に使うことによりアルナードのパワーとスピードの優位を崩すこと、

②加護を抜く魔法を考えること

③①と②に使う魔力を確保して魔力切れを起こさないようにすること

④その為に対人戦特化のみを考える。範囲は絞っていいこと


を、満たすようにすることだ。コントロールは難しくなるが、魔力を収束させることで無駄な魔力の消費を抑え、威力を上げる。並列して身体能力の向上をを行う。


 身体強化は、魔力で体全体を巡らせる事で力や防御力を上げる技術だ。

 体内の魔力と空気中の魔素を一点に集中して魔法に変換するのとは方法からして違う。毎日日常的にできるようになるまでには相当な苦労が必要だった。


 魔力切れにならないよう薄く全身に魔力を巡らせ日常生活を送る。はじめの頃は均一に身体を覆うことができず、大量に纏うことですぐに魔力切れを起こした。勉強しながら失神しそうになったこともある。なんでこんな苦労をしないといけないのだと叫びそうになったこともあった。だが、考えても俺に残された道はこれしかないのだった。


 三ヶ月ほどでなんとか常時魔力を纏えるようになった。アルナードほどではないが、通常の倍くらいの速度では動くことができる。よし、このまま纏える魔力を大きくしていくのだ。


 魔法の収束は、身体強化に比べれば楽だった。一点に集めた魔力をそのまま放出するのではなく、圧縮して放つ。単純節魔術が二節になるが、これはそれほど難しくなかった。魔力のコントロールに関しは俺は得意な方なようだった。


「収束・炎刃」

「圧縮・風弾」

「圧縮・強化・氷槍」

 三節魔法くらいまで、制御言語と属性の相性を確認しながら試していく。


 魔法を教えてくれているお抱え魔道士は、収束に関しては詳しくなかった。というよりも貴族の魔法は広範囲の敵を倒すものだから魔力を余分に消費して範囲を狭く威力を上げる事に意味がないと言われた。


 どうやらこの辺りは少数で魔獣と戦う冒険者の領域らしい。確かにダンジョンで広範囲に魔法は危険すぎる。行き詰まったら冒険者に相談してみるのがいいかもしれない。


 ただ、三節魔法を使える事については非常に驚かれた。八歳で三節魔法は天才的な素養という事だ。加護持ちのことがなければ素直に喜べたのだけれど。いくら天才でも加護持ちに勝てなければ意味はないのだ。 


 結局地道にどの組み合わせが効果的か、魔力の制御言語と属性を組み合わせて試していく。アルナードの加護が発覚してからはほとんど毎日この二つを試して過ごしていた。

 加護持ちに勝たなければならないという焦りはあったが、自分が強くなっているのを実感できるのは楽しかった。


 半年後、加護について色々と調査をされたアルナードが帰ってきた。偽りがないか、どの程度の力があるか、本当に魔法が撃てないのか、適性は、現在の最大値は、これからの教育は、待遇は、魔法庁の偉いさんと毎日検査、訓練の日々だったらしい。


 俺にとって幸いな事に、魔力を集めることができないアルナードは魔法は本当に使えないし、今後も使えることはないだろうという事だった。幸いでないのは訓練によってアルナードの身体能力が更にあがっていたことだった。


 毎日気絶しそうになりながら身につけた自己流身体強化を嘲笑うかのように、アルナードは王都で数倍の力を身につけてきていた。なんでも騎士団員を何人かのしたらしい。本人は笑い話として話していたが、本気でジャンプしたら教会の三階の屋根に飛び乗ってしまいしこたま怒られたということだ。次元が違う。


 試しに模擬戦をしてみたが、動きが圧倒的に速くなっていた。全力で吐きそうになりながら身体強化した俺の三倍は速いスピードで縦横無尽に駆け回る。加護を受けたものは金の髪になるが、速すぎて金色の閃光のようだ。試しに魔法を放ったらノータイムで無効化された。


「おま、なんだよそれ! ノータイムで無効化って反則だろ!」


 と声が出てしまった。動きが直線的でフェイントがなかったのが幸いで、あっという間に距離を詰めてくるアルナードに全力の収束氷弾を当てたら


「いてえよ!レスティ兄本気でやんなよ! もうやだ! 僕の負け!」


と不貞腐れてしまった。流石六歳児。


 前回と同じく形の上では義弟の降参だが、スピードでは全然追い付かず、全力の収束魔法は前回よりは効いたがゲンコツで殴られた程度の威力、それでこちらは魔力切れギリギリ。


 アルナードがゲンコツ三回分くらいを我慢して突っ込んでくるか、フェイントをいれれば、こちらは殴り倒されて意識不明か下手したら死亡だ。恐ろしく差がある。それでも前回よりは形になった。このまま鍛えていくしかないだろう。

 ちょっと心が折れそうだが。


 アルナードは、垂れ目気味の目をニコニコと細めて褒めてくれた。


「流石レスティ兄! 王都じゃ全身包むような炎とか、でっかい石の玉とか受けたけど、大人がうった魔法よりレスティ兄の魔法の方が痛かったよ!」


 どれくらいの熟練者かわからないけれど大人の撃った通常魔法よりは俺の三節収束魔法の方が威力はあったらしい。正直差が開いているような気がするが収穫もあった。


 アルナードをよくみていると、身体強化の魔力は纏うのでなく循環させていた。試してみるとこちらの方が少量の魔力で安定しやすく、移動の起点や攻撃の起点となる時に魔法の要領で魔力を集中すると、スムーズに何倍もの力をだせるのが分かった。

 明日からはこれを特訓だ。


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