不死者の女王 人の転生を面倒くさいで片付けるな!
こんにちは、初めての方は、はじめまして、カイン・フォーターです。
誤字、脱字がありましたら報告してくださると幸いです。
今日の天気は、雨ときどきトラックでしょう。
私は、そんな言葉が私の脳内で反響する。
そして、次の思考が始まる前に、私は飛んできたトラックに押し潰された。
「キャアアアアアア!!」
私は、今更悲鳴を上げる。
「本当に今更だね。」
!?
誰?
私が振り返ると、まるで蝶の様な羽?を持つ目元を隠した女性がいた。
うわ〜本当にきれいな人って顔が半分くらい隠れてても、きれいってわかるんだ。
「フフ、ありがとう。」
え?
もしかして、心が読める感じですか?
「そうだけど?というか、普通に喋ってくれない?」
「あ、ハイ」
「わざわざわかりやすく『白い部屋』にしたのに、今回の子は察しが悪いね。」
え?これ私怒られてるの?何もしてないのに?
「何もしてないからだよ、『トラック』『死亡』『白い部屋』もうこれでわかるでしょ?」
「・・・転生?」
「そうだよ、それだよ。全く察しが悪い。」
いや、別に私悪くないね!そもそも自分が死んだという事実を完全に受け入れきれてない状況で、『転生だよ、察しろ』とか、ちゃんと考えて言ってるコイツ?
「神様に対してコイツは不敬じゃない?」
「へぇ、あんた“それでも”神なんだ?」
「ええ、“これでも”神よ?」
こんなやつが神なんて、世も末ね。
「なに?隠すきないの?心が読める事くらい知ってるよね?」
「あら?心が読めるのにそんなこともわからないの?」
「いや?知ってるけど、聞いてみただけ。」
はあ、話しが進まない。
「そうだね、じゃあ進めるね。転生させてあげる、どんなことをお望み?」
「静かに暮らしたい。」
「オーケー、面倒くさい。」
「はあ!?」
コイツは今、なんて言った?
「面倒くさい。」
「知っとるわ!!」
駄目だ、何考えてもコントみたいになる。
取り敢えず、一回話題を変えて落ち着こう。
「私の死因は何なの?」
「トラックに押し潰された。」
「それは知ってる。」
「うん、私も貴女が知ってる事を分かってて言った。」
殴りたい、この笑顔。
「守りたい、じゃなくて?」
「むしろめちゃくちゃにしたい。」
「貴女面白いね。詳しく言うと、飛んできたトラックは、下に爆弾が仕掛けられていてその爆弾が爆発、その勢いでトラックがぶっ飛び近くを歩いていた貴女の上に落ちて来た、って感じ。」
う〜んと、つまり私はとばっちりで死んだと。
「まぁ、爆発を仕掛けるよう誘導したの、私だけど。」
「はあ!?」
「結果的に私に殺された訳だね、反省するつもりはないけど。」
「はあーーーー!?」
遂に私はプッツンした。
「ふざけんな!お前のせいで私は死んだんでしょ?謝罪くらいしろよ!その上反省するつもりもないだと?いい加減にしろよクソ女神!!」
「女神じゃないよ。」
「は?」
「女神じゃなくて、『蝶の神』だよ。」
知るかそんなこと!
「私は、地面に頭擦りつけて、『私が悪かったです』って喉が潰れるまで謝罪してほしいだけなんだよ!誰もお前の名前なんて聞いてない!!」
「そういえば、貴女も聞いてなかったね。」
「そうじゃない!!」
何だこのストレスマシーン!
「私は機械じゃないよ〜。」
「黙れ!」
二度と話したくない!
というか、こいつに転生先決められるの?何その地獄。
「酷い言い方だね。」
「自覚はあるのね。」
「まあね!」
「胸を張るな馬鹿!」
「なに?自分が貧相に見えるって?」
人のコンプレックスを堂々と…。
「本当に話しが進まないね。」
「いや、お前のせいだから!」
「それで、『静かに暮らしたい』だっけ?うん、面倒くさい。」
「ふざけんな!」
このやり取り、さっきもしたな。
めちゃくちゃ無駄な時間。
「もう面倒くさいし、適当に力あげるから自分でやって。」
「はあ!?」
「新しい名前をあげるよ、そうだね~『ミララビス・リーブラ』とかどう?」
「勝手に話しを進めないで!」
「そう、喜んでもらえて嬉しいよ。今日から貴女の名前は『ミララビス・リーブラ』よ!」
その時、自分の名前が『ミララビス・リーブラ』になるのを感じた。
は?コイツ勝手に人の名前変えやがった!
私には、『神河 沙莉』って言う名前があるのに!
「というわけで、ミララビス…長いしミラでいっか、よい来世を〜。」
「ふざけんなーーーーーーーーーーーーー!!!!」
その言葉を最後に、私は転生した。
マジでふざけんな!
「う〜ん、ここは?」
私は、花畑に寝転がっていた。
「あの世とかじゃないよね?」
だとしたらマジで許せん!
ただでさえ、余罪があるのに更に罪を重ねやがって!
「取り敢えず、家を作ろう。」
二階建てだけど小さい家がいいな。
ん?
「どうして、私はこんな思考をしてるの?」
というか、家ってどうやって作るんだよ!
ああ、鞄にいろいろ入ってるんだった。
は?
「開けてもいないのにどうしてそんなこと知ってるの?」
私は、取り敢えず鞄を開く。
中には、3つのビンと手紙が入っていた。
「蝶の模様が描いてある手紙、嫌な予感しかしない。」
私は、手紙を開ける。
何ともない。
まさか、本気でふつうの手紙?
手紙には、
『ミラちゃんへ
やっほ~ミラちゃん!私だよ蝶の神だよ!ミラちゃんには力と知識を渡しておいたから、それで憧れの“静かな暮らし”を“自力で”手に入れてね!
追記 何かあると思ったでしょ?ざんね〜ん何もありませ〜ん!』
私は、手に入れた炎魔術の練習をする。
すると、手紙はあっという間に燃えて…焦げてすらない!
ふざけんな蝶の神!
無駄に頑丈に作るな!
取り敢えず手紙を的にして蝶の神から貰った魔術の練習をしよう。
「う〜ん、取り敢えず私は、闇、空間、死霊に適性があるみたい。」
特に死霊、万単位のアンデッドを操れる、動物がほとんどだけど、3割くらいは人骨だ。
これ以上のアンデッドを操れないのは近くに死体が無いからだろうし、場所を変えよう。
というか、こんな花畑の中で数千の人骨が出てくるってどうなってるのよここ?
「ん?」
後ろに生物の気配を感じる、うん雑魚だね。
まぁ、神格存在である私からすれば、神か神格存在以外全部雑魚だけど。
というか神格存在って、神と同格かそれ以上の力を持ってるってことでしょ?
いくら面倒くさいからと言ってやり過ぎじゃない?
「ガアアアアアア!!」
熊か、五メートルくらいあるかな?
まぁ所詮獣、
「畜生風情が、頭が高い。」
私は死霊術の1つ、即死の術を使う。
すると、畜生(熊)は抵抗すらできず即死した。
さすが神格、チートにも程がある。
「死体が増えたね。そうだ、元が強いとアンデッドも強くなるのかな?」
私は、倒した熊をアンデッドにする。
「人骨はもったいないから、獣の骨でいいかな。」
私は、熊と獣の骨を戦わせる。
すると、熊の圧勝。
今度は、十匹の獣の骨と戦わせる。
またもや熊の圧勝。
「アンデッドの強さは元の強さで決まるのね。後から強くできないのかな?」
私は、手に入れた…蝶の神から貰った知識を探る
「あっ、あった!」
どうやら自分の力を分けるか、神力を流し込む事でアンデッドを強化できるらしい。
自分の力を分ける方は、『眷属化』と言って、かなり強力な契約の一種らしい。
眷属にすると、しっかりとした自我と意識をもたせる事が出来る。
その上、勝手に強くなるから少量の力を渡して強力な契約を結ぶ事が出来るみたい。
さらに、眷属が死ぬと、眷属化に使った神力は帰ってくるうえ、利子が付いてくるらしい。
つまり、『眷属化』はローリスクハイリターンな契約方法らしい。
欠点を言えば、眷属の数は主の強さで決まるため、私だと100ちょっとが限界だろう。
神力を流し込む方は、普通に『強化』で、神力に限らず力を流し込む事で、従属が扱える力が増えて強くなるらしい。
「普通に考えて後者だよね?『眷属化』ってかなり重要な契約だよね?普通の強化みたいにポンポン使って良いものじゃないはず。」
私は、『強化』を使った獣の骨5体と、熊を戦わせる。
結果的にいえば熊の勝利。
でも熊はかなり苦戦していた。
「ただの獣の骨がここまで強くなるとは、強化も充分強いわね。」
強化でこれなら、『眷属化』はどなんなに凄いことになるだろう?
私は、人骨に命令を出す
《一対一で戦い、最も強いものを決めろ。ただし、相手を殺すな。》
これで、最強が決まるでしょ。
取り敢えず、アンデッドを増やしながら森の外に向かいましょう。
一ヶ月後
アンデッドの数は人骨だけで100万まで増えた。
全体の数なんて数えたくもない。
それくらい数が増えた。
後、私について分かった事がある。
私は、転生してから飲食睡眠を一切とっていない。
神格ならこれくらい出来るかと思ったけど、私自身、アンデッドになっていた。
どうしてかって?
それは、あのゴミカスイカれサイコドS女神こと、蝶の神が私の事をアンデッドとして転生させやがったからだよ!
マジ許せん!!
何が転生だよ!もう私死んでるじゃん!!
ていうか、体が前世の私のと何一つ変わってないのそういうことかよ!!
これ異世界転生じゃなくて、異世界アンデッド化じゃん!!
転生してないから!
死んだままだから!
フー、落ち着け私!
暴れてもいいことはない。
深呼吸、深呼吸…
しても意味ないか…
ダメダメ!そういうこと考えるとまた怒りが湧いてくる。
意味なくてもやるの!
ん?
人骨から思念が飛んできた。
決まった?
ああ、最強が決まったのね!
《すぐに来なさい》
これで、すぐに来るでしょ。
10分後
「お前が最強なのね。」
やってきた人骨は首を縦に振る。
「じゃあ『眷属化』するね。」
私は、人骨を眷属にする。
すると、私は、体が削り取られる様な感覚を感じた後、人骨に私の力が流し込む。
10万分の1くらいの力しかあげてないけど、大丈夫かな?
人骨に流れ込んだ力は、やがてかつての肉体を復元して、肉が、血が、皮ふが蘇る。
そこで分かる。
「貴女、女だったのね。」
「はい、我が主。」
うわ、喋った!
声に出さなかった私、偉い。
「貴女、名前は?」
「よろしければ、名前をいただけると幸いです。」
「その感じだと、あるけど使わないって感じかな?」
眷属は首を縦に振る。
「名前ね、…ラビスなんてどうかしら?」
「ラビス、ですか?」
「ええ、私の名前、『ミララビス・リーブラ』から取ったの。どうかしら?」
ラビスはハッとして、
「かしこまりました!私、ラビスは貴女様によりいっそうの忠誠を誓います。」
「これから頼むわよ、ラビス。」
「ハッ!我が主。」
The、騎士って感じの眷属が出来たね。
「そういえば、この辺りはやたら人骨が多かったけど、戦争でもあったの?」
「…この辺りは昔、とある王国の王都だったのです。私はその王国の近衛騎士団長でした。」
「なるほどね、貴女が人骨として出てきた辺り、その王国は滅びたのね。」
私は、顎に手を当て考え事をしようとする。
「ずいぶん遠慮なく言いますね。」
ラビスが声をかけてきた。
「貴女は、そんなに過去を悔やんでいるの?」
「それは…もちろんです。周辺国家最強の剣士と呼ばれ、剣聖の名を冠していたにも関わらず、私は国を守ることが出来なかった。」
「何があったの?」
「それは…」
ラビスの話しの内容をかなりざっくり言うと、『強力な魔物が、万以上の群れを成し、数多の国を呑み込んだ』という感じかな。
「私は、国を、民を守ることが出来なかった。」
ラビスは涙を流しながら語る。
これが励ましになるか分からないけど、一応言っておこう。
「人間の力なんてたかが知れてるわ。全て助けられるなんて全知全能の神くらいよ。どんなに強くても、『人間』である以上、どんなに頑張っても神にはなれない。」
「はい?」
「貴女が、かつて人間であり国を守ることが出来なかった様に、人間の限界はそんなもの。神のような力が欲しいなら人間を辞め、さらなる高みを目指さないといけない。」
ラビスは目を丸くしたまま固まっている。
「それが人外の化け物であったとしても、何事にも代え難い自分の信念の前には、人を辞める覚悟なんて綿のような障害でしかない。」
「…」
「高みを目指すなら、まずは己を知りなさい。自分が何をしたいのか、何をするべきなのか、何が自分にとって代え難いものなのか。そうれば、過去の過ちは悔いるものから、乗り越えるものに変わるわ。」
私も、前世で何度も失敗した。
折れそうにもなった。
でも、死んだ祖母が言っていた、『高みを目指せ』の言葉の意味が理解できた時、私を縛り付け、重りになっていたものは、煙のように消えていった。
高みを目指す信念の前には、過去の過ち、失敗は、高みを知るための踏み台でしかない。
失敗を踏み台にできて初めて、人間は1つ上に行くことができるのだ。
もっと、私はそれをする前にあの蝶の神とかいう、クソ女神に殺されたけど。
「少し、考える時間を下さい。」
「いいわよ。」
今、ラビスには考える時間が必要だ。
私は、ラビスが来るまで森の外を目指そうかな。
ラビスも、私の背中を追いかけて走って来るでしょ。
あれから更に一ヶ月後
私は、前を、高みを目指す事を選んだラビスに案内され、人の街があるであろう方向に進んでいる。
「森が!」
ラビスが声を上げる。
森が燃えている、雷の音は聞こえなかった。
ということは、火を使うナニカがいる。
案の定、複数の生物の気配を感じる。
「生物の気配が1つ、いやふたつこっちに向かって来てる。」
「敵ですか?」
「いや、逃げてるだけね。」
そして、ふたつの気配が私達の前まで来る。
「ヒッ!」
私達を見た“ソレ”は慌てて踵を返す。
しかし、突然の事に脚がもつれその場に倒れる。
「こ、来ないで!」
“ソレ”は悲鳴に上げる。
そして、瀕死の“ソレ”を隠す。
私が手を伸ばすと、“ソレ”は目を瞑って構える。
「大丈夫?」
私は、再生の術を使用して優しく語りかける。
“ソレ”…おそらく『エルフ』は目を開ける。
「助けてくれるの?人間なのに。」
「人間?私達は人間じゃないわよ?」
「え!?」
エルフの少女は驚愕している。
「はい、これで治療は終わり。」
私は、瀕死のエルフと、エルフの少女の治療を終えた。
「あ、あの!」
エルフの少女が声をかけてくる。
「里を、みんなを助けて下さい!」
なるほど、そう来たか。
「いいわよ。」
「いいんですか?」
「ええ、ただし、報酬は貰うけどね。」
私は、次の言葉を無視して、生物の気配を感じる方向へ向う。
案の定、エルフの村を襲っていたのは人間だった。
「ラビス」
「ハッ!」
「人間共を蹂躪しなさい。」
その言葉にラビスが駆け出す。
「何だおま、」
「どうし、」
「何が起き、」
ラビスは人間の首を次々切り裂いていく。
「あの女を殺せ!エルフ共は後回しだ!」
指揮官らしき人間が指示を出す。
これは好都合、空間魔術で散らばっているエルフを回収する。
「え?何?」
「急に移動した?」
「どうなってるんだ?」
困惑するエルフ達を治療する。
「お母さん!」
「ミミイ!」
さっきのエルフの少女は、ミミイという名前なのね。
後でじっくり聞こう。
取り敢えず、周囲にエルフの気配はもうないね。なら、
私は、大量のアンデッドを召喚する。
《人間を殺せ、一人も逃すな!》
「ミミイ、これはどうなっているの?」
「あのお姉ちゃんに助けてって言ったら、こうなったの。」
「失礼ですが貴女は?」
ミミイの母親が質問してくる
「私の名前はミララビス・リーブラ、森を放浪しているアンデッドの死霊使いです。」
「アンデッド…」
「私と敵対しないならこちらから攻撃はしませんのでご安心下さい。」
うん、全然安心できてなさそう。
まぁ、そりゃ目の前で殺戮してるのに、『攻撃しませんよ〜』とか、嘘としか聞こえない。
「ラビス、戻りなさい。」
すると、ラビスが飛んでくる。
「お呼びでしょうか我が主。」
「なっ!イリア!?」
「ん?エルテル!?」
「知り合い?」
というか、ラビスの昔の名前ってイリアって言うんだ。
この二人、知り合いみたいだけど、仲はあんまり良くないのかな?
「イリアって、お母さんが言ってた“くそびっち”の人?」
「ミ、ミミイ、ちょっと静かにしててね。」
「う、うん?分かった。」
エルテルがラビスに向き直ると、
「エルテル?貴様娘にどういう教育してるんだ?」
「な、何のことかしら?」
「隠しても無駄だぞ?誰が“くそびっち”だって?」
ラビスは目に見えてキレてる。
「あの二人仲悪いの?」
私は、近くにいたエルフに聞いてみる。
「仲悪いどころか、永遠の宿敵って感じだ。何度殺し合った事か。」
「な、なるほどね。」
「このままだと、また殺し合いになるかもしれないな。エルテルさんのお腹には3人目がいるのに。」
それはまずいわね、早くラビスを止めないと。
ってやばい!完全に殺る気になってる!
「ラビス!待ちなさい!」
ラビスはあともう少しで剣先がエルテルに当たるところまで、剣を振っていた。
「ラビス、貴女の怒りは分かりますが、妊婦に手を出すとは何事ですか!?」
「も、申し訳ありません!!」
「謝る相手が違うでしょう!」
しかし、ラビスは、
「コイツに謝るなんて死んでも嫌です!」
「はあ!?」
「我が主の命令であっても絶対に進んで謝ることはありません!」
眷属への強制効果でラビスは謝るだろう。
しかし、無理矢理やらせているだけで、本気で謝ったりはしないだろう。
「そんなに嫌?」
「はい。二度と会いたくない、そう言えばわかりますか?」
「あー、よく分かるわ。私も人生の一大事を『面倒くさい』で済まされ二度と会いたくない奴がいるわ。」
「そ、そうですか。」
私にとっての蝶の神とかいうクソ女神が、ラビスにとってのエルテルなのね。
「よく分かったわ、もう謝れとは言わないから変なことしないでね?」
「ハッ!」
私は、エルテルさんの方に向いて。
「それで、エルテルさん大丈夫ですか?」
「え?はい、大丈夫です。ミララビス様。」
「ミラでいいわ、長いし。」
「そ、そうですか…子供達を守ってくださりありがとうございます。」
ちゃんと礼儀は弁えてるのね。
「眷属の無礼、主として謝罪させて下さい。ラビスが失礼しました。」
「い、いえ!悪いのは私です!ミラ様が謝らなくても…」
「礼儀知らずな主にはなりたくありませんので、これくらい当然です。」
これでも数百万のアンデッドを支配する支配者、礼儀知らずでは笑われてしまう。
「それと、イリアでしたっけ?今はラビスという名前ですので、そっちで呼んてあげて下さい。」
「そ、そうですか。」
「我が主、私はどちらでも構いません。ただ、主にはラビスと呼んで欲しいです。」
ラビスって以外と主人に口を出すタイプなのね。
「分かったわ。それと、どうやら殲滅が終わったようね。」
「そのようですね。」
「それで、報酬の件なんですが。死体を貰えませんか?」
エルフは皆して目を丸くしている。
「つまり、死霊使いであるミラ様には物や金よりも亡骸の方が価値があると、そういうことですか?」
「ええ、そういうことよ。」
「分かりました。しかし、全員が亡骸を差し出してもいいというとは思えません。」
だろうね、家族の亡骸を、よくわからない奴に使われるなんて嫌すぎる。
私だって拒否する。
「強制はしませんのでそちらで決めてください。」
「ありがとうございます。」
今回の収穫は装備を持つ死体が手に入った事かな?
ラビスでさえ、裸だったし。
ラビスの場合、鞄から服と剣が飛び出してきたけど。
ん?
あれは、もしかして『レイス』とかいうアンデッドかな?
アンデッド化を行っていると、半透明な、よくオバケと言われてイメージするあれがいる事に気付いた。
今は夜だし、濃密な死の気配を感じて来たのかな?
私は、レイス達を服従させる。
すると、一体だけ抵抗が激しいレイスがいた。
『ぐうう、私は屈しないぞ!』
しっかりと人の形を残したレイスがいた。
「エルフ?」
そのレイスは耳が長い、エルフの特徴を有していた。
それにこの顔、どこかで?
私は、服従を解く。
『貴様!この里になんのようだ!?』
「たまたま、通りかかったらエルフの里が人間に襲われているのを見つけただけよ。貴女こそこの里に何のよう?」
『娘の様子が心配で見に来たんだ。母親として、娘の安否を確認するのは悪い事か?』
なるほど、娘の様子が気になって成仏出来なかったタイプか。
「ねえ、私の眷属にならない?」
『何?』
「そうすれば、娘さんと一緒にいられるわよ?」
もっとも、生きていたらだけど。
『…分かった、そなたの眷属になろう。ただし、「我が主!」ッ!?』
その時、ラビスがやってくる。
『イリア!?死んだはずでは!?』
「エルテナ!?どうしてお前が!?」
また、このパターンか。
しかし、エルテナか、もしかして、
「エルテルさんの母親なの?」
『ああ、エルテルは私の娘だ。』
ああ、やっぱり。どうりで似てる訳だ。
『お主、死霊使いか?』
「そうよ。それがどうかしたの?」
『そうか、どうりでイリアから同類の気配を感じたのか。』
同類の気配、アンデッドの気配のことかな?
その時、私は、生物の気配が近づいてくるのを感じた。
「お母さん!?死んだはずじゃ!?」
『エルテル!会いたかったぞ!』
エルテナはエルテルに抱きつこうとする。
しかし、通り抜けてしまう。
『そんな、私はもう娘を抱きしめる事ができないのか?』
「私としては、嬉しいけど。」
『な!?』
エルテルさん、母親に向かってそれは酷くないですか?
「娘を抱くために襲う様な真似をするからです。当然の報いですね。」
「「は?」」
「この変態は、娘の事が好き過ぎて抱くような奴です。私の初めては、母親に奪われました。」
ええ、コイツそんな変態だったの?
『安心しろエルテル、すぐにお前を触れるようになってやるからな!』
「嫌!なんのためにお母さんを殺したと思っているの!?」
「「はあ!?」」
今なんて言った?
お母さんを殺した?
マジ!?
「エルテルさん、どういうことですか?」
「それは、『私が説明しよう!』お母さん!!」
『エルテルが里長と結婚することになってな、それが嫌で里長を殺そうとしたら、里長を守りに入ったエルテルに殺されてしまったのよ。』
「エルテナさん、あんた何してるんですか?」
娘の婚約者殺そうとするってやばすぎでしょ。
結果、返り討ちにあって娘に殺されてるし。
「そうだ!ミラ様はアンデッドを支配できるんですよね?」
「ええ、アンデッドの支配は私の十八番よ?」
「じゃあ、お母さんを支配して、私への接近禁止命令を出して下さい!」
『なんですって!?』
確かに、こんな要注意人物、私が支配して接近禁止にしておかないと。
「というわけで、エルテナさん私に支配されて下さい。」
私はエルテナさんに支配をかける。
『ぐうう、嫌だ!私は屈しないぞ!もう一度娘に触れる様になるんだ!接近禁止になんてされてたまるか!』
「ちなみに、私の眷属になると態度次第では、エルテルさんに触らせてあげても良いよ?」
『よし!乗った!』
「ミラ様!?」
ビックリするくらい簡単に支配を受け入れるエルテナさん、いいのかそれで?
『さあ早く、私を眷属にしてちょうだい!』
「分かってるから!近い近い!」
私は、エルテナさん…エルテナを眷属にする。
私は、体が削り取られる様な感覚を感じる。この感覚、久しぶりね。
しかし、エルテナに目立った変化がない。
あるとすれば、透けていた体が少し色が濃くなったくらいで劇的な変化はない。
「フフ、フフフ、ウフフフ。」
「ヒッ!」
エルテナの気持ち悪い声に、エルテルさんが後ずさりする。
「エルテル〜〜〜!!」
「きゃあああ!!」
そして、エルテナがエルテルさんに向かって飛びかかった。
「あ〜数十年ぶりのエルテルの体、やはり素晴らしい!!」
「ミラ様!早くこの変態を接近禁止にして下さい!!」
「わ、分かったわ!」
《エルテナ、エルテルへの接近を禁止する!》
「なっ!?か、体が勝手に!?」
「ふ〜、助かりましたミラ様。」
とうぶんエルテナは接近禁止にしておこう。
一年後、
私は一年間をエルフの里で過ごした。
最初は、死んだはずのエルテナが現れて里は大騒ぎになった。
特に里長はエルテナの殺気に当てられ倒れてしまったり。
里長がエルテナに殺されそうになったり。
エルテナの接近禁止対象に里長と孫が追加されたり。
エルテナがやらかして、盛大に説教されたり。
うん、エルテナ関連しか思い出せない。
「ミラ様、エルテルさんが探してましたよ。」
「そう?分かったすぐ行くわ。」
エルテルさんが私を呼ぶなんて珍しい。
また、エルテナが何かやらかしたかな?
「エルテルさん、何かようですか?」
「ミラ様すいません急に呼んじゃって。」
そういうエルテルさんは、ベットで横になっていた。
「体調が良くないのですか?」
「ええ、それもかなり。」
私は、エルテルさんの容態を調べる。
ッ!?コレは!
「その様子だと、相当良くない状態のようですね。」
「…ええ、私ではどうしようもできない状態です。私は、本来治療…生命属性と真反対の死属性を扱います。簡単な再生の術を、大量の神力で無理矢理効果を引き上げていますが、エルテルさんが患っている病気を治せる力は、ありません。」
「そうですか…」
私は、神にも等しい神格存在。しかし、殺すことに、死属性に特化した神格存在である以上、難病を治すことはできない。
「ミラ様、このことは自分の口で言わせて貰えませんか?」
「いいですよ。」
「というわけで、私はもう長くありません。」
「そんな…」
「お母さん…」
エルテナとミミイが一番ショックを受けている。
しかし、エルテルさんは笑って、
「大丈夫よ、別にもう会えない訳じゃないからね。」
「え?どうして?」
エルテルさんは私の方を見て、
「この里にはミラ様がいる。ミラ様の配下としてアンデッドになれば、死は一種の通過点でしかないの。」
なるほどね、よく考えたわね。確かに、私の配下として、アンデッドになれば、死別なんてものはなくなる。
殺されなければ、だけど。
まぁ、少なくとも寿命を気にしなくても良くなるね。
「だから、私のことは病気で寝込んでるくらいの感覚で接してちょうだい。」
「うん!分かった!」
「ミラ様、これからもよろしくお願いします。」
「ええ、もちろん。」
しかし、死が通過点でしかない、か。
死霊属性も捨てたものじゃあないわね。
一週間後、
エルテルさんは病気で死んだ。
「ミラ様、お願いします。」
「わかってるわ。」
私は、アンデッド化の術を使いながら、エルテルの魂を体に戻す。
死んだ時に、肉体から離れてしまった魂を、私が捕まえて保護しておいたのだ。
これで心配することはない。
そして、エルテルのアンデッド化と眷属化が終わった。
そして、エルテルが目を開ける。
「おはよう、エルテル」
「おはよう御座います、ミラ様。」
私が、転生してから今日で千年。
私が転生者であることも話してある。
だから、今日は私の千歳の誕生日だということも知っている。
今は、私の家でゴロゴロしている。家で待ってろって言われてるからね。
ちなみに、家は私の転生した花畑にある。
ここはいつも静かで、私の求める静かな場所に合格した。
私の存在は人間にも知られていて、『死の大魔女』とか、『不死者の女王』とか、『亡者の魔王』とか、『厄災の死神』とか呼ばれてる。
一番呼ばれてるのは、『不死者の女王』だね。
何度も私を討伐しようといろんな奴が来たけれど、所詮人間、神格存在である私に勝てるわけがない。
結局、何もしなければ何ともない、とい事で最近は来ていないし、きたとしても眷属が追い払ってくれる。
「我が主、準備が終わりましたよ。」
「そう、すぐ行くわ。」
どうやら、準備が終わったらしい。
私は、指定された場所へ転移する。
「「「「「「ミラ様、お誕生日おめでとう!!」」」」」」
こんなにも沢山の仲間たちに囲まれて誕生日を祝って貰えたんだ。
こんな転生も悪くないね。
ただ、1つあのクソ女神こと『蝶の神』言わせて欲しい
私は、『不死者の女王』
人の転生を面倒くさいで片付けるな!
いかがでしたか?
短編小説は初めてなので、楽しんでいただけたら幸いです。