武者修行-栃木領-編.4
その後、夕食を皆で食べに行った。様々な選択肢の中から、横浜勢たっての希望でシウマイ屋に決まった。夕食の席では、皆同年代という事もあり、打ち解けるのに時間は掛からなかった。
「皆さん、我が領のシュウマイを気に入ってくださったようで、本当に良かったです」
「いつも地元で食べてたけど、シウマイとはまた違った美味さだよな!」
「ソースをかけるなんてビックリだよね!」
「がっはっは。お店のも美味いけど、足利さんが作ってくれたのも、美味かったぞ!」
「ふふ、甘くておいしー」
横浜勢は、すっかりお気に召したようだ。緑は砂糖をかけて食べているようだ。
「大阪領もめっちゃ美味いもんあるけど、このシュウマイいうやつも美味いねんな」
「せやな」
食い倒れの街の住人達も舌鼓を打っている。
お店のシウマイが売り切れる程に堪能した面々。途中、シウマイかシュウマイか論争が巻き起こったが、それ以外は何も問題無く時は進んだ。
北と梅田も、私設学校にある宿泊スペースにお世話になる事が決まった。酔っ払い組の要望で、簡単な二次会をする事になり、必要なものを買い込んで学校に戻った。
港北と緑、そして梅田も成人しているので、結構お酒が入っていたのだ。
「さ、港北の兄貴、緑姉さんもっと飲んだってや」
「梅ちゃんサンキュー、注いでもらうお酒は美味しいなあ」
「梅ちゃんありがとー」
酔っ払い組は楽しそうだ。どうやら梅田は飲ませ上手のようだ。
「えーっ!北さんって特危2体も倒したんですか!」
「まじかよ…そのヒョロい体でか…」
「もちろん私だけの力やない、たまたまや」
「特危と何度も相対する事が出来る、という時点で実力者ですからね。だって、僕は相対した事ないもの」
「詳しく聞きたいです」
「大将教えてくれよー」
「しゃーなしやで」
北は、過去に2体の特危を討伐していた。個体により力量差はあり、《探求の竜》のような凶悪さ、《暗魂》のようなやりにくさは無かったにせよ、金1つ、銀1つの褒章を授与される程の活躍を見せた、とても素晴らしい功績だ。
「《超兄弟》は、連携が恐ろしかったみたいですね。しかも攻撃が多彩で、火の玉を投げたり巨大化したりするんですよね?」
「あいつらは確かにしんどかった。でもまあ、コンピの相性良かったのが幸いやった」
「火の玉は雪で弱体化出来たしな。後、弱点もあってな、あいつら茸に目が無い。茸書いたら寄って来よる」
「なるほど。自分のコンピを相手に合わせて上手く使うんですね!」
「確かに。都筑のは応用効くから色々出来そうだな!私は応用って感じじゃないからなー」
「皆それぞれ役割はあるものです。分析、戦略、適材適所。いやー、やはり生の声は勉強になります」
「せやな、人間の強さは独りじゃないって事や。足利さんの頭脳もあるし、《探求の竜》と戦うのが楽しみや」
ぐがーぐがー…
どうやら酔っ払い組は眠りに落ちたようだ。夜遅くまで続いた簡易的な二次会も、終わりを告げた。
翌日からは、足利の出した申請の結果が来るまで、北と梅田を交えて訓練を行うことにした。北は都筑や青葉と同位の"煦"ではあるが、その力は港北や緑よりも頭2つ3つ程抜けていた。
足利は、領の統治や新しく啓示を受けた佐野への指南のため、訓練には参加せず、忙しなく過ごしていた。
申請結果が届くまでの間、禁域侵攻戦の準備が急ピッチで進められていた。どうやら今回は包囲とまではいかないが、6ヶ所から同時に侵攻するようだ。各領からの参加者が続々決まっていった。
そして6日後の夕方、足利の申請結果が届いた。足利は笑みを浮かべ、すぐに訓練施設へと向かった。
「皆さん、結果が届きました。文京さんは侵攻戦準備等で忙しいようなので不可。ですが、小金井さんがこちらに来てくれる事になりました」
「ホントですか?良かった!」
「な!」
訓練をしながらも、心のどこかで不安があった都筑と青葉。夢の事についてはしばらくお預けになりそうだが、皆を危険に晒してしまう可能性のある、襲撃に備える策に目処が立った。
「3日後に来て頂けるみたいです。僕も同席させて頂きますね、それと…」
「みなさん、初めまして、佐野です…」
足利の隣には、式典で立派な姿を見せた少女が子犬を連れて立っていた。
あの時は遠くてわからなかったが、とても幼く見える。
「今僕は佐野さんに色々と教えているのですが、これからはここでの指南等もあるので、皆さん宜しくお願い致します」
一同は快く受け入れ、挨拶をした。
「なあ、こいつは何で頭に丼かぶってるんだ?」
青葉とジュンとチュンは、犬と戯れながら佐野に聞いた。
「お気に入りみたいで…取ると悲しむんです」
先代の佐野は連れていなかったが、現佐野は犬を連れて戦うタイプのようだ。




