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夢の続き  作者: 新田 藻亀
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武者修行-栃木領-編.3

「あっ、お前は餃子大食いの!」


 昨日、青葉に気付かれる事無く、見事に5,000円をぼったくった少女がそこに立っていた。


「ウチは梅田や、よろしゅうな!」


 金色に近い茶髪のその少女は、小池に石を投げながら自己紹介した。


「お前、何でこんなとこに?」


「ウチの大将が、そこの本屋に用事があるみたいやで。暇やったから出てきたんや」


 足利領の私設学校は、見た目に違わず全国的に有名だった。栃木領外からの来館者も少なくはないのである。


 意表を突かれた面々であったが、取り敢えず自己紹介をした。


「なんや、武者修行やったんか。ウチと同じやんか。只者やないとは思うとってん」




「駄目やないか、また勝手に出歩いて」


 大将と思われる男性が戻ってきた。


「私、この人見たことあるような気がする」


 都筑が目を細めてジッと男性を見つめる。大将と呼ばれる男も、都筑を観察するように、目をギョロッと見開いている。


「昨日あっただろ?」


 青葉には、都筑と同じ感覚にはならなかったようだ。昨日梅田を連れて行った人、という認識しかない。


「違くて、有名な人だよ確か…うぅ、誰だっけ」


 都筑はギョロ目に恐怖を覚え、目を逸らした。


「ウチの大将の北やで!歳下やけどな!」


 都筑はハッとした。

 大阪24柱の北だ。西の広報担当として活躍するところを、見た事があったのである。


「あー!夜の底は白かった!の北さん!」


「え?見た目全然違うじゃん!着物じゃないから全然わからなかったぜ」


 東の東京23柱、西の大阪24柱は、対を成して全国的に有名であった。気付けなかったのは、スーツスタイルだからである。都筑達が知っているのは、着物姿の北であった。


「わー、光栄ー」


 緑も嬉しいようだ。


「私の事を知ってくれているんですね、光栄や。梅、皆さんを紹介してや」


 梅田は昨日のことも踏まえ、紹介した。


「なあ、やっぱり禁域攻め込むらしいで」


 梅田は早速さっき聞きかじった情報を伝える。どうやら予期していた感がある。


「…ほな私達も加えてもらいましょう」


「北さんも加わって頂けるんですか?それはとても心強いですね」


 足利にとって、いや、皆にとって北クラスの者の参加はとても有り難かった。何せ相手は《探求の竜》である。戦闘経験の豊富な者は、とても貴重な戦力となる。


 しかし、足利は腑に落ちない様子だ。このタイミングで西側の人間が東側に居る。昨日大規模な式典が催されたので、それの観覧のためかもしれない。またはこの学校、図書館が目的なのかもしれない。だが、まるでこうなる事がわかっていたかのように、絶妙なタイミングでの滞在。邪推をしてしまう。


 東と西はそれぞれ樹東、樹西と呼ばれ、基本的にはそれぞれ生活圏が確立され、往来は決して多いとは言えなかった。それは、永年樹が東西を分けるようにそびえ立っている為だった。永年樹の周囲には禁域が広がり、常に戦闘が行われていた。


 そんな足利の表情を見てか、北は口を開いた。


「《探求の竜》は、友の(かたき)なんや」


 その一言だけで十分だった。いや、表情は変えずとも、空気が変わった事を皆が感じた。


「《探求の竜》が100%あそこに居るとは限りません。ただ、もし《探求の竜》が居るのであれば、討伐出来る可能性はとても高いでしょう」


「私達も仲間が酷い目に合わされたんだ。ぜってー倒す!」


「私だって何かの役には立てるはず。中さんと鶴見さんの為にも頑張ります!」


 青葉と都筑も意気込みを見せるが、足利がそれを制した。


「都筑さんは例の件がありますので、お留守番になるかもしれません」


「東京領の小金井さんって方が捕獲を専門とされていて、その方にこちらにお越し頂けるよう依頼を致しました。もしそれが叶わなかった場合は…」


 足利は、都筑の身に起きている事を北と梅田に話した。


「そないなケースは初めて聞きました。確かに無策で外へは出せませんな」


「おびき寄せて取っ捕まえたらええやん」


 強気な発言だが、北も梅田も過去に捕り物の経験はあった。ただ、それは特危ではない侵食者だ。


「小金井さんがおれば出来るかもしれんな」


 北も、特定の個人を狙うという初めてのケースなので、結構な興味を惹かれていた。


「私…、何か悪いんで小金井さん迎えに行きます!」


「都筑!それじゃ意味ねーだろ」





 そうこう話をしていると、港北が戻ってきた。港北も、既に禁域への侵攻については耳に入っていた。


「旦那とは話したよ。神奈川領からも応援は出すようだ。なんと、旦那と川崎さんは決まりっぽいってよ!」


 横浜と川崎は、神奈川領において二大巨頭と言える。その2人を応援に出すという事は、徒導不剣(とどうふけん)も今回の侵攻には期待を込めているという事が窺える。


「浜さんが来てくれるんだ…」


 都筑は絶対に参加したかった。だが、小金井が不在での参加は、皆を危険に晒してしまう。という事も理解しているため、今はただ祈る他なかった。


 青葉は都筑を見て肩を抱いた。青葉も同様の想いだからだ。

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