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夢の続き  作者: 新田 藻亀
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武者修行-群馬領-編.21

 どうやら足利は、禁域や侵食者について、自分なりの推論を港北に聞かせているようだ。足利は、武でなく知で戦うものとして栃木領では名を馳せていた。様々なことに知識欲が疼くのだろう。


「〜だもの。あと僕が思ったのは、《探求の竜》は禁域を拡げる事は頭になくて、ひたすら強くなる事しか求めていないんだと思います。だって、おかしいもの」


 都筑は反応した。《探求の竜》。それは、中と鶴見を傷付けた特危であり、佐野と宇都宮を葬った、いつか倒さなくてはならない存在だったからだ。都筑は2人の方に、身を向けた。 


「あの、私も聞いてていいですか?」


 足利はニコリと笑顔を見せ、話を続けた。


「今回の調査資料を読んでみて、僕が1番違和感があったのは、その圧倒的強さです。佐野さんの道路元標(どうろげんぴょう)は、武器であり鉄壁の盾でもあります。それがただの右薙ぎでふっ飛ばされるなんて」


 中をかばった時の事だ。都筑はこの内容を、お見舞いの際に中から聞いていた。《探求の竜》や禁域の調査も前進したとも。


「だから、過去の資料を確認しました。《探求の竜》は、これまで8度の戦闘記録が残っています。最も少ない人数での防衛は3人、そしてこの時の面子は新潟領の新潟志氏(にいがたしし)と新潟志領内の秋葉(あきは)氏と長岡氏でした。ただ、細かく見てみると、戦闘を行っていたのは、ほぼ新潟志氏と長岡氏の2名でした」


 啓示を受けた者の中には、徒導不剣(とどうふけん)と同名の者も複数存在する。その場合は、名前の後に位を付けて呼ばれる事が一般的だ。新潟領の新潟がそれにあたる。


「僕は、この方達にお会いした事はないのですが、知る人の話を聞く限り、佐野さんと宇都宮さんと同じ位の力だと思っています。しかもその特徴も似ています。長岡氏の花火を用いた攻撃は、宇都宮さんのように遠距離攻撃を得意とし、新潟志氏の萬代橋という武器は、佐野さんのように、攻防一体のタイプなんです」


 足利は、更に話を続けた。


「もちろん、細かい部分は違うので一概には言えませんが、やはりどう考えてもおかしいです。成長している可能性も頭に浮かびましたが、整合性がありませんでした。なので、吸収した魔力を全て力に変え、その多寡により強さにばらつきがあるのではないか。加えて、出没のインターバルが長い程魔力が蓄えられ強力になる。これが僕の推論です」


 足利は、深く調べているようだった。他の者も、そうなんじゃないか。と予測していた事を、理論付けたのだ。


「なるほどな。ついでにもう一つ意見を聞きたいんだが、禁域についてはどう思う?」


 港北も足利と同じ考えだった。そして、それが正しければ避けられない事を聞いてみた。


「直近の侵攻は130年前。禁域に入って戻った者は、中さんと鶴見さんのみ。禁域には玉座があり、魔力吸収の樹木、及び樹液がある。侵食者はそこらで発生する事は無く、必ず禁域より出づる」


 足利は、現状分かっている事を敢えて述べた上で話し出した。


「僕の推察からお話をさせて頂くならば、《探求の竜》は、彼らにとっての邪道でしょう。だって、類を見ないもの。では正道は何か。これは公式見解の通り、徐々に禁域を拡げて行くことで間違いないと思います。なので港北さんが今思っている事、すなわち禁域への侵攻なくして人類に明るい希望は無いでしょう」


 どうやら足利は、結論を最後に言うタイプだ。話はまだ続く。


「さて、そこで問題となるのが、どのようにして侵攻するのか。過去に行われた方法が、遠距離からスキルをひたすら放つ。一点突破。包囲とまでは行かないが、点ではなく面で前進侵攻。これらは失敗に終わっています。但し、前提として、過去の侵攻の9割は、本丸と見られる永年樹を囲う禁域です」


 足利は、禁域についても過去の資料を漁っていた。

 本丸と見られる禁域は、神奈川領のすぐ西にある永年樹を囲うように拡がっている。隣接する山梨領と静岡領は、対本丸禁域の領として、戦闘が絶えない。幸いなことに、特危が現れた記録は無い。


「当時は禁域自体が1つしか無かったので、当然ではあるのですが…。ですので、過去の資料を鵜呑みにして良いかというと、一概には言い切れないです。さて、結論ですが、人の生死に関わることなので軽はずみな事は言えないのですが、僕としては、侵攻すべきだと思います。特に、厄介な《探求の竜》は今こそ勝機が見えます」


 最後の一言。まさに港北は同意見であった。専門家達も同じであろう。ただ、大きな問題として、禁域の場所の特定だ。ここで思考が潰えてしまうのだ。絞って4箇所。同時に侵攻は現実的ではない。ならば特定するか。どうやって?港北は、この思考をグルグル堂々巡りしていた。足利に明確な答えが有れば良いのだが。と期待を胸に、更に問う。


「俺もそう思う。だが、どこを攻める?」


「仮説を立てます。根拠は残念ながら弱いですし、1つには絞れません。《探求の竜》の住処と思われる禁域は4箇所。内2つを消去します。先ず、永年樹周囲の本丸。あそこは特危の出現情報が長い間ありません。次は、新潟領と福島領の間。あそこは出現の偏りから推測し、《最後の幻想》の住処と判断します。ですので、東京領と千葉領の間か、長野領の近くにある禁域のどちらかが《探求の竜》の住処です。こればかりはどちらかはわかりません。だって、どちらもあり得るもの」


 港北は頭の中で問う。足利の推測通りなら2箇所を攻めれば済む。果たしてこれは現実的なのか。徒導不剣(とどうふけん)ならどのように判断するのか。


「ありがとうな、足利さん。色々と答え合わせが出来た気がするよ」


「あくまで推測です。間違っている可能性はおおいにありますよ。先生とか言われてますが、ただの人間だもの」


 都筑は、生徒になったように話を聞いていた。青葉も、餃子を食べる手は止まっていないが、耳にはしっかりと入れていた。


 都筑は、この人なら、今朝の襲撃の事や夢の事について何か分かるかもと思い、港北もいるこの場で聞いてみようと思った。


「こうさん、足利さん。ちょっと聞いてほしい事があって…」

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