武者修行-群馬領-編.18
大きな拍手で迎え入れられた英雄たち。皆が皆、威風堂々たる様相で歩みを進め、綺麗に整列した。
全員が揃ったところで、1分間の黙祷が捧げられた。この式典の様子は、リアルタイムで全国的に放映されている。人々の為に散った英霊に、皆の想いが届く事を祈る。
「続きまして、開会のお言葉を徒導不剣栃木氏より賜ります」
式典は粛々と進められた。開会、主催者の挨拶から始まり、来賓の紹介。今回は、東京と親交のあるニューヨークやローマ等といった、海を超えた遠方の者の姿も見られた。実際にそこに居るのではなく、投映スキルによって映し出されている。
そしていよいよ褒章授与が行われる。港北の出番は、割とすぐにやってきた。
東京による手渡しの授与。両サイドには、千代田と港が護衛として寄り添う。
まず、今回名誉の戦死を遂げた佐野と宇都宮に名誉金綬褒章が与えられた。受け取ったのは、新しく啓示を受けた両名だ。授与の際には、中と鶴見を救った重要有形財の餃子が登場し、2人の勇姿が語られ、涙を流す者や、敬意を表現する者が多く見られた。
まだ若き佐野と宇都宮は、それら全てを受け止めるように、深く一礼した。
続いて、総指揮を務めた日光が金綬褒章を与えられた。日光は防衛に際し、部隊を6つに分け、ジリジリと栃木領から《暗魂》を後退させ、3つの前方部隊で包囲、3つの後方部隊で防衛という策を採った。後方の1部隊が《探求の竜》の出現により崩れた際も、素早い切り替えと配置換えにより、一般庶民の被害者を出すことなく撃退に成功した。
尚、戦闘用の武装を解いているため、今日は猿の姿ではない。
そして、群馬領の高崎、前橋と、横浜領の中、鶴見に銀綬褒章が与えられた。港北は、療養中の2人の代役としての登場だ。
高崎と前橋は、1週間休むこと無く戦い続けた。まさに獅子奮迅の活躍だ。正確には途中に休憩や仮眠をしていたが、戦いは続けていた。2人のスタイルが、それを可能にした。
中と鶴見は、未だかつて成し得なかった、禁域からの生還者となった。例えそれが本人だけの力ではなかったにせよ、人類にとって非常に大きな功績である。
(来た、こうさんだ!)
普段は「がっはっは」と、笑顔に溢れ豪快な港北であったが、そこにいる彼はいつもの彼ではなかった。
(ふふっ、こうさんめっちゃ緊張してる。あー、手と足が一緒になってるよー!)
引きつった表情で、動きがカクカクしているように見える。入場時の時とは大違いだ。一身に注目を浴びるとこうなるのか、憧れの港が目の前にいるからそうなのか。後で聞いてみよう、と思う都筑であった。そう、港北は港のファンだった。戦闘スタイルも、武器も防具も、全部そっくりだ。本人は認めていないが。
最後に、防衛戦に参加したすべての者へ銅綬褒章が与えられた。
式典はその後、日光の受章代表挨拶や花束の贈呈があり、正午過ぎには終了となった。この後、関係者は懇親会が行われるようだが、都筑達は参加出来ないため、先ずはお腹を満たす事にした。だが、当然どこもかしこも人で溢れている。
「どうしよう、これじゃお店に入るのにすごく時間が掛かりそうだね」
一行は、ぐぅとなるお腹の音を抑えこみ、先に中と鶴見のお見舞いに行くことにした。伊勢崎は中と鶴見と、共に面識は無いが、離れると迷子になりそうとの事だったので同行した。
道中は、式典の話で持ち切りとなった。ここにいる4人に、ああいった場での表彰経験は無い。伊勢崎と緑はそれに対し特別な感情は無いが、都筑と青葉は違った。実際に目の当たりにした事で、いつか自分も、という想いが強く再燃したのであった。
-宇都宮総合魔力病院-
病院に着いた一行は、1階にある果物屋と花屋に立ち寄った。
「お見舞いの品って言ったらやっぱメロンだよな?見ろよこのまんまる!」
「えー、絶対リンゴがいいよ!」
「いやいや、みかんが最適ですよ!」
ここでちょっとした争いが勃発した。高級感たっぷりのメロン派の青葉、栄養バランスばっちりのリンゴ派の都筑、ビタミンCの豊富なみかん派の伊勢崎。それぞれの意見がぶつかりあった。
「メロンの栄養も侮れないんだぞ?」
「リンゴは皮ごといけるよ?」
「みかんが1番気軽に食べられますよ?」
同い年だから余計そうなのか、誰も一歩も引こうとしない。
「これにしよー」
緑がフルーツの盛り合わせを持ってきた。流石皆より年上のお姉さんだ。皆の意見を取り入れつつ、この場を丸く収めたのだ。尚、花屋では争いを避けるため、最初から店員さんに聞いたので、スムーズに購入する事が出来た。
受付で2人の部屋の場所を尋ねた。病室は3階と6階で離れていたが、どうやら今はリハビリをしている時間のようだ。
一行は、リハビリセンターへと向かった。
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