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夢の続き  作者: 新田 藻亀
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武者修行-群馬領-編.8

「よし、じゃあ飛ばしていくぞ。1時間くらいで着くだろう」


 太田はそう言うと、真っ青な魔力車を出現させた。この星では軽車両と呼ばれる、自身が力を直接加える、或いは少ない魔力で動かす車が流通している。自転車、馬車、牛車が一般的だ。

 太田が出現させた魔力車は、十数名のみが使用できる希少なコンピなのだ。パワーや速度は比べ物にならないが、その分魔力消費量は大きい。群馬領内では、既に認知が高く騒がれる事もないが、他の領で走らせれば、注目の的となる。


「はい、宜しくお願いします」


 港北は緑のスキルのおかげもあり、不安と焦りで一杯だった表情が、普段の明るい表情に戻ってきていた。


 ガボボボボ…。魔力車が大きな唸りを上げた。この音は走行には無関係で、警鐘音の役目を果たしている。ちょっとうるさ過ぎる気もするが、そこは太田の性格が出ている。尚、太田の意思でオンオフが可能となっている。


 車に乗り込み、道を急いだ。やがて車が制限地帯へと入ると、太田は警鐘音をオフにした。


「太田さん、栃木領の状況、詳しく聞いても大丈夫ですか?」


「ああ。細かい部分までは確認していないが、佐野さんが討ち死にして、啓示を受けた者が現れた。…正確には、佐野領に啓示者が現れたため、そう判断されただな。宇都宮さんは、未だ行方がわかっていない。中と鶴見って人が重体…」


「え…」


 港北は耳を疑った。聞きたくなかった、あっては欲しくなかった事が、事実として告げられた事を認めたくなかったのだ。

 だが生きてはいる。重体って事は、治療すれば良くなるのだ。そのような事を頭に浮かべ、口を開いた。


「遮ってスミマセン、続きをお願いします」


 太田は察する部分もあったが、いったんは全ての情報を伝える事を優先した。


「中と鶴見って人は、宇都宮さんの餃子の皮に包まれて、日光さんの下に飛ばされて来たようだ。重体の内容までは聞いていない。その4人は後方で一緒に戦っていたようで、さらわれたと考えられている。それがもう1体現れた特危と見ているが、未確認みたいだ。最後に、俺達は最前線へ向かう。《暗魂(あんこん)》本体に対する人員が一杯いっぱいのようだ。以上」


「ありがとうございます。」


「俺は、領は違うんだけど栃木の佐野さんには結構世話になったんだよ。手合わせもいっぱいしてもらったし、そう言えばあの人の耳って食べられるんだぜ?美味しいんだこれが。やられちゃったのは信じられないけど、クヨクヨしてても仕方ねえ、ちゃんと受け止めてバッチリ敵を討ってやらあ」


 太田は普段こういった事を口に出さないタイプだが、港北の様子を見て、自分なりに察した上での判断だった。明るい口調で前向きな言葉を作ったのだ。


 パンッパンッ。港北は頬を自分の頬を両平手打ちで2回叩いた。


「そうだったんですね、よし、俺も気合い入れて行くんで。やったりましょう!」


 そこから魔力車を走らせる事30分程で、戦闘区域に到着した。

 そこら中にいる侵食者が、一定方向にじわじわ進む。土煙で良く見えないが、その先では大きな何かが戦闘をしていて、次から次へと豪快に吹き飛ばしていた。


 魔力車から降り、素早く武装して、その者のところに駆け寄った。尚、太田は乗ってきた魔力車を変形させ、それを装着していた。


「どりゃー!おりゃー!」


 衝撃音と共に、雄叫びを放つ。その者は豪快だった。圧倒的巨躯。筋肉ムキムキの極太腕で、拳を只管振り上げている。


「ここは任せておいて問題ないな。奥に日光さんがいるだろうから、そっちへ行こう」


 ちらほら侵食者が道を塞ぐが、それを簡単に退けて奥へ進む。


「この侵食者達…。《暗魂(あんこん)》の魔力もそろそろ限界ってとこですかね?」


 港北は、余りもの手応えの無さに驚いた。最前線でこの程度だ。


「そうだろうな、というか多分もう居ないな」


 合点がいった。この程度なら魔力を使わなくても勝てるんじゃないだろうか。


「ほれ、着いたぞ」


 そこは、結界のような形で守られていた。ぼんやりとした光を放つその中には、閉じ口の開いた大きな餃子が2つ。その餃子に両手をかざしている、美しい着物を着ている女性。そして、猿が座っていた。


「遅くなりました。太田と港北到着しました」


「よく来てくださいました。ウキッ」


 港北は、まさか猿が喋るとは思わず目を見開いてしまったが、すぐさま餃子を確認した。


「はじめまして、港北です。その、中さんと鶴見の仲間です。2人はその中ですか?どんな状態ですか?治りそうですか?」


「桐生さん、ご説明をお願い出来ますか?ウキッ。私は太田さんに戦況の説明を致します。ウキッ」


「はいよっ!2人はこの中だ。この餃子の中は、癒やし成分で出来てたからそのまま使ってる。結論から言うと、死ぬことは無いね!安定してるよ」


 ホッとした。死ぬことは無い。本当に良かった。港北のそんな表情を見た桐生が続けた。


「ただね、欠損箇所がある」


 えっ…。

 港北は思わず餃子を上から覗いた。


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