武者修行-群馬領-編.2
藤岡との訓練まで2時間強。総合運動公園は目と鼻の先だった為、馬車を役所に預け、徒歩で移動する事にした。
アイスとクリンは解除した。
「お腹と背中がくっついちゃうー!」
「腹減ったよぅ!」
都筑と青葉がこの調子なので先ずはご飯だ。朝食を摂っていなかった4人は、昼食も兼ねた朝食を取ることにした。
「ごちそうさまでした!」
「美味かったなー、キムトマ焼きうどん!」
「ねー、絶妙な組み合わせだったね!」
「がっはっは。スクランブルエッグまで乗って豪華だったな!」
「おやつ用に4個テイクアウトしたよー」
腹を満たした4人は、早めに現地入りする事にした。戦闘用コスチュームを装着し、体を温める。都筑と青葉は模擬戦闘をやりたがったが、他の住民も公園を利用したため却下した。
約束の時間の5分前、藤岡は雲のような物に乗ってやって来た。
「ギリギリになってしまってかたじけない。思いの外仕事が片付かなくてのう」
「お忙しいところ時間を割いてもらってスミマセン」
「ふぉふぉふぉ、気にするでない。お主達がどんな戦いをするのか気になって仕方なくて、集中出来なかっただけじゃよ」
「おじいちゃん、その雲みたいな乗り物何?」
「浮いてるじゃん!乗ってみたい!」
「ふぉふぉふぉ、これはのう、中空の繭じゃ。儂のコア・コンピじゃよ」
「コア・コンピ?コンピの仲間?」
「コンピって何だったっけ?」
以前港北より簡単に説明を受けたが、青葉は既に忘れていた。
「ふぉふぉふぉ、コア・コンピとはのう、永年樹様から啓示を受けた際に、先天的に身についておる"自身のみの強み"じゃ。コンピとは、それを基にしたスキルの事じゃ」
「確か必殺技だったよね!」
「そういや港北さんに聞いた記憶があるな!」
「ふぉふぉふぉ、その通りじゃ。後はそうじゃな、コンピは後天的な物もあるんじゃよ」
「先天とか後天とかさっぱりだぜ!」
「むむむ…」
「がっはっは。そのあたりはしっかりと座学してやるよ!」
「ふぉふぉふぉ、それは港北殿に任せるとするかのう。では、身体が疼いて仕方ないわい。始めるぞい」
藤岡はそう言うと、公園の敷地内にある大きな建物に案内した。どうやら、ここが戦闘訓練用の施設のようだ。
各領内には、大なり小なりこういった施設が必ずある。中には屋外の領もあるが、侵食者の存在がある限りは、ソースを割かなければならないのだ。
5人は、施設の中で1番大きなホールに入った。
「では、先ずはお主達の力量を知りたい。儂は攻撃はしないから、全力で参るが良い」
「1つ言い忘れておった。儂は戦闘モードに入ると豹変してしまうんじゃ。そのつもりでおってくれのう」
そう言うと、藤岡の衣服が光を放ち、戦闘用コスチュームに変化した。
顔には化粧が施され、胸のあたりまであった白髪が逆立つ。その長さは30センチ程有り、高かった身長が更に伸びた。見事な鬚髯は揺らめきを見せている。
コスチュームは、全身が黒一色で纏め上げられていて、その素材は動物の皮だろうか、鈍い光を放っている。
「待たせたな、何処からでもかかって来な!」
その変わりように、都筑と青葉は一瞬後れを取ったが、すぐに切り替えた。
「青葉ちゃん、私から行くね!」
都筑は一直線に突っ込んだ。先ずは山田富士を両手に持ち、連続刺突攻撃を仕掛ける。
パンッ、パンッ。という音と共に弾かれる。
(あれ、どうやってはじいてるんだ?)
藤岡は手を使っている様子はない。だが弾かれた。都筑はもう1度、今度は三つ富士で同時に連続刺突攻撃を仕掛けてみた。
パンッパンッ。これも全て弾かれた。
(全然わからないっ、まさか肉体が強靭すぎるとか?)
都筑は山田富士を巨大化させた状態で投擲した。轟音と共に一直線に藤岡に迫る。
パァァァーン!
巨大化した山田富士も弾かれてしまった。
(えー、これでもダメなの?)
「どうした小娘?その程度か?」
(こわーい)
「魔力よ、早渕の奔流の如く、天から降り注いでおくれ!」
すると藤岡の頭上から大量の水が現れた。瀑布のように降り注ぐ。それと同時に、藤岡の足下から川和富士を発生させ、突き上げる。
(これならどうだ!)
理に適った攻撃ではあるが、これも防がれてしまった。
藤岡はその身に水を受けてはいる。だが、勢いが完全に殺されているため、ダメージは受けていないだろう。
川和富士は動きが止まっていて、藤岡に到達していない。目を凝らして見てみると、大量の糸のような物が絡みついていた。
その糸を辿っていくと、藤岡の横には、宙に浮く小さな家のようなものが見える。
その糸のような物は、そこから発生していた。
「小娘、なかなかやるな!」
「都筑、交代だ」




