5話 聖女の一日
「それで今日の予定は?」
「はい。本日は朝食の後、都内の教会の訪問、昼食後はダンスとバイオリンのレッスン、ティータイムの後に魔法と勉学になります。」
お嬢様の専属執事になってから思う。王女である彼女はいつもこんな詰まった予定を文句の一つも言わずにこなしていることに驚く。俺と大して年齢も変わらないこの少女は王女という立場をちゃんと理解しているのだろう。
対して、元主であるソフィアは皇女にもかかわらず毎日わがまま三昧。日ごろのスケジュールを組んでも自分の損得勘定で動くため予定通りいったことがない。
「そう。ありがとうアウル。それと教会の訪問の時いつも持って行っているお菓子があるのだけれどその準備もしてもらえる?」
「それに関しましてはセバスより聞き及んでありましたのですでに準備をしております。」
「さすがアウルね。」
その後、朝食を済ませ教会訪問のために馬車に乗り込み王城を出て都内へと向かった。
「ああ聖女様。どうか私の息子をお救いください。」
「聖女様。以前お伝えしたことなのですが。」
「聖女様が持ってきて来るれるお菓子おいしい!」
ここに来るまでもそうだったがお嬢様は本当に国民に愛されているな。王女という身分にもかかわらず平民や孤児院の子供たちにも分け隔てなく平等に接している彼女自身も国民を愛しているのだろう。
「おねーちゃんだーれ?聖女様といつ一緒のおじいちゃんは―?」
王女の執務を少し離れたところから見ていたアウルのそばに教会の孤児院の子供が近寄ってきた。アウルは子供に目線を合わせるためにゆっくりとしゃがむ。
「私はお嬢様の新しい執事です。前のおじいちゃんからお嬢様を任されました。それと私は男ですよ。」
「じゃあのにーちゃんなの?」
「こら!お仕事のお邪魔をしてはいけません!」
すると、若いシスターがアウルと子供たちのそばに駆け寄ってきた。慌てた表情でアウルに頭を下げてくる。
「本当に申し訳ございません!」
「いえ、大丈夫ですよ。」
アウルは懐から小さな小包を出すと中に入っていた飴玉を子供たちに渡した。子供たちは喜び小包をもって教会の外へ走り出していった。若いシスターもお礼を言いぺこりと頭を下げると子供たちを追いかけて外に走っていった。
「アウル。」
子供たちが走り去っていったあとアリアが執務を終わらせアウルの元へやってきた。
「申し訳ありませんお嬢様。仕事中に勝手なことを。」
「それは構わないのだけれど..。」
すると、アリアはアウルの顔や体をじろじろと眺め始めた。それを疑問に思ったアウルは首をかしげる。
「どうかなさいましたかお嬢様?」
「アウルって男性のわりにかわいらしい顔立ちだし、綺麗で長い黒髪に細い体だから本当に女の子みたいね?」
「お戯れを。」
「ふふふ。ごめんなさい。困った顔のアウルを見たかったの。子供に取られて焼いちゃったのかしら。」
ニコニコと謝るアリアのその表情はとてもかわいらしく少し頬を赤く染め苦笑いで返すアウル。
「ちょっとやめてください!」
たわいもない話をしていると教会の外から女性の大きな声が聞こえてきた。アウルとアリアは急いで教会を出るとそこには泣きじゃくる子供たちとそれを庇う若いシスターとそれを取り囲むように三人の男たちがいた。
「ぶつかってきたのはそっちだろ?」
「こりゃあ慰謝料もらわねえとな?協会は国からたんまり兼ねもらってるんだろう?それぐらい払えるよな。」
「そんな言いがかり聞き入れられるわけないでしょ?」
「じゃあ、お前の体で払ってもらうしかないな?」
男は若いシスターの手首をつかむとぐいぐい引っ張り連れて行こうとする。
「お嬢様。」
その光景を見ていたアウルはアリアに目線を向けるとアリアも同じことを思ったのだろう視線をアウルに向けコクリとうなずいた。それとともにアウルは男たちの元へとかけていく。
「やめて!離して!」
引っ張る手を振りほどこうとしたとき横からアウルがやってきて男の手首を強く握りしめた。
「そのぐらいにしておけ。」
「なんだてめぇ。関係ねえ奴はすっこんでろ!」
すると、男はシスターから手を放しアウルめがけてこぶしをつきだし殴り掛かってきた。しかし、拳が届く前に男の視界は上下反転し、何が起こったかわからい男は目をぱちくりとさせその場に座り込んだ。
「なめたマネしやがってくそが!」
男はすぐに立ち上がり腰に携えていた剣を抜くと後方にいた男たちもそれにつられ一人はナイフを抜けもう一人は魔法師なのか杖を取り出した。
アウルの後方にいた子供やシスターたちは男たちが武器を抜いたことで動揺した表情を見せる。しかし、アリアだけはすました表情でその光景を見ていた。
剣とナイフを持った男たちはアウルに襲い掛かり魔法師は魔法を唱え始める。前衛の二人の男がアウルめがけて剣を振りかざすが攻撃をかわしたアウルに後方を取られ一人はクビにもう一人はみぞおちに一撃を与えるとその場で気絶して倒れた。そして最後にの一人に視線を向ける。
こんな街中で魔法を使わせるとは。
そして、詠唱を唱えていた魔法師の元へ駆けると男は慌てて魔法を放つがアウルを通り過ぎあらぬ方向へと飛んで行った。そして、その先いたのは。
「お嬢様!」
石つぶては一直線にアリアの元へと飛んでいく。思いもよらぬ出来事にアリアも慌てた表情を見せる。
アウルは瞬時に方向転換をし放たれた魔法よりも速いスピードで駆け抜けるとアリアの正面に立ち向かってくる石つぶてを素手を使って一瞬で砕いた。
「お嬢様!?お怪我はありませんか!」
「え、ええ。大丈夫よ。ありがとうアウル。」
「もうしばらくお待ちください。すぐに終わらせますので。」
主を危ない目に合わせた元凶である男に鋭い目線を向けると男はアウルの恐ろしい形相に震えがった。
「ほどほどにね?」
「わかっております。」
その後、男をすこーし痛めつけた後騒ぎを聞きつけた兵士に男たちを預け、事が済んだ。
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