2話 聖女に拾われる
あそこか。
森に囲まれた街道で激しくぶつかり合う戦闘音が近づいてくる。そこには豪華な馬車を守るように数人の兵士がオークの群れと戦っていた。
「くそ!なんでこんなところにオークの群れが!」
「何としてもあのお方をお守りするのだ!」
戦闘が激化しオークの群れに押される兵士たち。何とか押し返そうとするが数で不利な兵士たちは防戦一方で苦戦を強いられる。
「ゾラ!後ろ!」
一人の兵士が後方にいるオークの姿に気づかず襲われかけていたその時。
「風刃!」
兵士を背後から襲うオークに勢いよく風の矢場が飛んできてた。直撃した風の刃でオークの首を一瞬して跳ね飛ばした。
「ま、魔法!?でもいったい誰が?」
腰を抜かし座り込んでいると一人の少年が近寄ってきた。
「大丈夫ですか?」
「あ、ああ。君があの魔法を?一体君は?」
「それは後で。今はこいつらを何とかしないと。剣お借りしますね。」
兵士の剣を拾い上げほかに襲われている兵士のもとへと駆けていった。
馬車に近いな。魔法は使えない。そしたら。
借りた剣を握りしめ襲われる兵士のもとへ行くと上段からオークめがけて勢いよく剣を振り下ろした。オークはそのまま後方へと倒れこみ沈黙する。
「き、貴様いったい何者だ!」
「そんなことより、後方の馬車まで下がってください!」
襲われていた兵士に警戒されるが指示を出した後、次の目標に勢いよく向かった。そして、残っているオークを次々と倒していき、最後に一回り大きなオークがアウルの前に立ちはだかった。
ハイオークか。厄介だな。だが。
ハイオークはオークの上位種で物理攻撃に対して特に耐性を持っているため、魔法での討伐がセオリーだ。
仲間を倒されたことに怒りを感じたハイオールはアウルめがけて携えていた棍棒を振り回すがアウルはその攻撃を軽々とよけ、馬車から距離を取らせる。
よし、この距離な大丈夫か。
後方に勢いよく飛び一度ハイオークとの距離を取ると右手を突き出す。
『獄炎』
ハイオークを勢いよく炎の渦が飲み込み体が焼ける痛みでもがき苦しむハイオークは10秒と持たず消し炭とかした。
「ふう。何とかなったな。」
オークの群れを残らず撃退し、一呼吸置くと兵士の集団がアウルを囲み剣を向けてきた。
「貴様!いったい何者だ!」
「えっと....。」
急な出来事に慌てるアウルを見て兵士たちは疑いのまなざしを向けてきた。
「その慌てよう怪しい。このオークたちはお前の仕業か!」
そんなわけあるか!囲まれて剣を向けられたら誰でも慌てるだろ!
「お待ちなさい!」
声とともに豪華な馬車が開くと中から執事の格好をした老人と真っ白な長髪と青く輝く瞳がきれいな女性が現れた。
「ひ、姫様!?」
兵士が馬車から降りてきた女性をそう呼ぶとアウルは目を見開き兵士の囲みを風のようにすり抜け女性の前へ立つと手を取りその場でかしずいた。
「お怪我はありませんか、姫様。」
「え、ええ。大丈夫です。」
その光景にその場にいた全員が唖然として固まった。
や、やばい。姫様って言葉に体が勝手に動いてしまった。執事としての習慣がまだ抜けてなかったか。
そんなことを思っていると時間が動き出したように兵士たちがアウルのもとに集まり、姫様と呼ばれる女性から引きはがされた。
「貴様やはり姫様が狙いか!」
「ち、違います!」
再び剣を向けられ首を青ざめた表情で顔をブンブンと横に振るが疑いの眼差しと向けられた剣をおろしてもらえない。
「いったはずですよ。今すぐ剣をおろしなさい!」
女性の一喝で兵士たちは向けていた剣をゆっくりとおろし始めた。
「大声を出してしまってすいません。ですがこの方は私やあなた方を救ってくれた命の恩人です。そんな方に剣を向けてはいけません。」
すると、一人の兵士がアウルに近づいてくる。申し訳なさそうな表情をして頭を軽く下げる。
「申し訳なかった。先の件でこちらも気がたってたとはいえ剣を向けてしまったことを謝る。」
「い、いえ。先に名乗らなかった私にも非があります。どうか頭を上げてください。」
和解を済ませた後女性がこっちに向かってきた。ほかの兵士も集めるとゆっくりと詠唱を唱え始めた。
「我らが神よ。どうかこの者たちに慈悲の光を。『癒しの光』」
淡い光がアウルと兵士たちをゆっくりと包み込む。すると、疲れが一気に消え兵士たちの傷もみるみる治っていった。
驚いたな光魔法だけでも珍しいのに回復魔法を使えるなんて。それにこの効力すごいな。
「さすが聖女様だ。」
その言葉に驚きの表情浮かべるアウル。そして、馬車のをよく見ると大きなユニコーンの家紋が描かれていた。
あの紋章。それにこの回復魔法に聖女と呼ばれるこの女性、もしかして。
「あの、あなた様はもしかして...。」
「はい。私はノイシュタイン王国第二王女アリアフ・ォン。ノイシュタインと申します。」
やはりか。あのユニコーンの紋章に聖女と呼ばれる姫君。まさか、敵国のノイシュタイン王国の王女だったとは。でも、休戦中とはいえどうして帝国領に?
「この度は我々をお救いくださいましてありがとうございます。よろしければお名前を教えていただけませんか?」
「申し遅れました。アウル・アストリアと申します。以後お見知りおきを。」
「アウル様はもしかしてどこかの使用人か何かだったのですか?」
その言葉にびくりと体を跳ね上がらせ、冷や汗をかき始める。
まず、ここで帝国のそれも皇女の元執事だとばれたら何をされるかわからないぞ。
「な、なぜですか?」
「その立ち振る舞いや言葉遣いがとても自然だったのでそう感じました。」
またやってしまった。今まで当たり前のようにやってきたからつい癖で。
「わ、私の母が貴族のメイドをやっていまして教育の一環で教わりました。」
「そうだったのですね。ご聡明なお母さまなのですね。」
「は、はい。」
うう、心が痛い。身を守るためとはいえ噓をついたことに。
「それでアウル様はどうしてここに?」
「以前の職場をクビになってしまい、どこか遠い村でのんびりと暮らそうと思いまして。その村に向かっている最中でした。」
「まあ、そうだったのですか。でしたら、お礼をしたいので一度私たちと城へ来てくださいませんか?」
ん!?なんでそうなる!
「とても喜ばしい申し出ですが先に行かせた馬車を追いかけなくてはなりませんのでまたの機会に..。」
「それでしたらこちらで対応します。爺、その馬車と村にアウル様は一度王都に行く旨を伝えて頂戴。それと迷惑金も渡してもらえるかしら。」
おいおい!だからなんでそうなる!それになんか賄賂みたいだし出し。
「かしこまりました。」
すると、執事は文を書きお金の入った袋を兵士に手渡すとその兵士は村に馬を走らせた。
(文とお金を渡された村は大いに喜んだそうだがそれは別のはなし。)
「これで何も問題ありませんね。それでは一緒に馬車へ乗りましょう。」
「は、はい。」
そして、アウルはアリアたちとともにノイシュタイン大国王都へと向かっていった。
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