番外編 家族に囲まれて
加藤は純を見送り、純のためにガードマンを付けた。信頼できるガードマンだ。
「林、青烏団の野郎はすぐにでもミッチーの命を狙ってくる。親友の命はお前らに任せる」
東京では世話になった組の先輩と青烏団に対抗する組織のトップと会談するため、加藤は車で待機していた。先輩と共に会談に参加する予定だ。
この会談で雉爪団の運命が決まると言っても過言ではない。運転席にいる水野は上から言われた命令を思い出す。
「加藤春樹を殺せ」
水野は当然今まで多くの暗殺をこなしてきたが、今回の命令は簡単に引き金を引けないと感じた彼は、後輩の後藤に銃を預けた。
「サプレッサーは付いている。どこで撃ってもいい。いつでも安心して撃て」
水野はただ怖かった。
だが、後藤と加藤の仲の良さは知っている。
もしかしたら後藤が加藤を逃がしてくれるのかもしれない。そんな僅かな希望を持って、ハンドルを握っていた。加藤は煙草を吸いながら、
「おい後藤、なんか今日元気ねえぞ。これ渡すからよ、俺が行ってる間みんなで飯でも行けや」
加藤は後藤に封筒を渡した。加藤は後輩を心配していた。後藤は遠慮する仕草をして首を横に振って、
「いや、いいっすよ兄貴、俺達腹減ってないんで」
「遠慮は入らねえ。俺はお前らをこき使い過ぎてしまった。ボーナスだと思って受け取ってくれ」
後藤は封筒を受け取り、
「ありがとうございました。兄貴、今まで俺たちなんかのために」
後藤は泣きそうになっていた。
「おい、今日のお前らなんか変だぞ」
加藤は笑った。
しばらく暖かい会話と笑顔が続いた。
まるでこの車内にいる人間全員家族であるかのようだ。加藤は家族に囲まれながら幸せを実感していた。
後藤は前を向くターゲットに銃口を向け、引き金を引いた。その目には涙一つなかった。
ビュンという静かな銃声が鳴った。
町を歩く人間誰一人として発砲に気付かなかった。
「よし、死体に布を被せてこの後、二手に分かれる。一方は会談に向かえ。集合している奴全員殺せ。1人も逃すな。もう一方はこの後ここに来る加藤の先輩を殺せ。躊躇うな。これが俺たちの仕事だ」
後藤は落ち着いて指示をした。もうそこに、加藤を兄貴と呼ぶかわいい弟はいない。
ヤクザ達はすぐに行動を開始した。
ただ1人、加藤の顔を見て何もできない男がいた。
水野だ。彼は僅かな希望に期待し過ぎていた。
もう、誰も殺したくない。
そう思い、水野は逃げ出した。
後藤達の仕事はすぐに済んだ。青烏団の反乱分子のトップはみんな死んでしまった。東京どころか関東全域において、青烏団の勢力は一気に強まった。




