第一話 敗北
純は勢いよく走り出す。
外から激しい銃撃が行われた! 窓ガラスが勢いよく割れ、観葉植物などもボロボロにされた。
先程の堅気に当てたら面倒だというのは嘘ではないのかと疑うほどの攻撃だ! 中の客はみんなかがみながら恐れている。
純はかつて金稼ぎのため親友と裏社会で暴れていた。しかし、なぜ今更、しかもこんな人数で襲われなければならないのか様々な疑問を抱きながら銃弾の雨をかいくぐって純が真っ先に向かったのは先程殺したヤクザ。彼らのバッグにいい物はないものか……
ビンゴ! とつぶやいて純が取り出したものはアサルトライフル! 大勢の敵を殲滅することが可能な強力な銃。まだ良いものがと純がワクワクしながら取り出したもう一つの物、
それは「日本刀」
言わずもがな最強の武器である!
日本人いや、熟達の技を持つ者が日本刀を持つ時、それは最強爆誕の瞬間である! 純は神に感謝しつつ日本刀を脇に差そうと申し訳なく思いつつ、ベルトとヤクザからぶんどったテープを使って日本刀を固定した。これで武装完了! 迎え撃つのみだ。
銃撃が鳴り止み、突撃! という声と共に自動小銃を携帯したヤクザがなだれ込んできた。スーツ姿でヘルメットを被っており、まるでどこかの国の特殊部隊のようにも見える。
純は、先程と全く雰囲気の違う敵に困惑しつつも飛び出すタイミングを見計らっている。
ヤクザは客やスタッフの顔をこまめに確認し、顔を隠すものには銃を突きつけ脅すなどの徹底振り。
二階を探索するぞ! とヤクザが言った時、店のマスターが関係者以外立ち入り禁止だから鍵を出さねばと言ってヤクザを手こずらせていた。
ヤクザ数人が店のマスターに注目していた。これはチャンスだと純は思った。さらに客とスタッフはもちろんのことマスターも丁度座っていた。
純はすかさず隠れていたキッチンのロッカーから飛び出し、アサルトライフルをぶっ放した。ヤクザ達が倒れていく。失敗した時の恐怖を抱きながらも豪快に撃ちまくった。
純の攻撃に気付き次々と敵が襲ってくる。純は背後から迫る敵を始末し急いで物陰に隠れる。リロードをゆっくりして深呼吸をする。
(敵は大勢。俺は1人。きっと油断して近づいてくる。訓練されているのか統制がとれている。恐らくさっきのヤクザとは違う奴らだ。さあ。来な。アサルトライフルは近距離が最も輝く)
敵が並んでゆっくりとやって来る。
(もう1回足音が鳴ったら飛び出してやる)
コロンコロン……
「あっまじい」
グレネードだ! 敵の方が一枚上手。
純は逃げずに日本刀を構える。どうするんだ? 純はグレネードと向かい合う。日本刀で爆発を防ぐつもりだ。上手く弾けば衝撃を和らげられるはずだ。しかし問題がある。破片だ。運が悪ければ目や心臓に刺さってしまう。
「無茶だ。なんで逃げないんだ?」
「純。ダメ。日本刀を過信し過ぎたら」
客とミンはつぶやく。正論だ。だが純は正論なんかより日本刀を信じた。
「来いよ欧米の鼻くそ爆弾。てめえが日本の神聖なるにほんと……」
ドカァーーーーン!
「純ーーーー!」
ミンは思わず叫ぶ。純は手榴弾の爆発に吹き飛ばされた。当然だ。純は煙をあげながら床に倒れている。動かない。死んでしまったのか?
ヤクザは純に近づく。1人が純の首を触る。
「馬鹿が死んだ。心臓が止まり首もかなり熱い。後は石井ミンだけだ」
ヤクザが散らばろうとするとミンが立ち上がった。
「私はここよ」
ヤクザ達はミンの方を向く。一瞬の隙も逃さない日本刀が牙を剥く。
「ありがとよ……ミン!」
死んだはずの高道純が起き上がってよそ見するヤクザ達を斬り殺す。
「馬鹿な! カタナ! あがぁぁぁ!」
他のヤクザ達は焦って銃口を向けるが間に合わない。純は速すぎる。次々と斬る!
ヤクザが3人並んで銃を構える。間に合うか?
純は飛び上がって一太刀で3人の首をはねた。
「油断しやがって。義務教育を終えれば心臓を任意で止めることなど簡単。子供騙しだかな」
純は刀を収め、血塗れの胸から煙草を取り出す。ライターで火をつけ煙を吸って一服。
「火傷にはこれが一番効く」
こうして全てのヤクザを倒した訳だが違和感が残った。このヘルメットを被ったヤクザ、血が出ていないのだ。それに、一太刀で首が一気に3つも斬れるほど斬れやすい。
プシューという音が鳴り始め、それはだんだんと大きくなった。死んだヤクザからピンク色の謎の煙が放出されたのだ。それはレストランを不可視空間へと切り替えた。客もスタッフも叫び出し、混乱状態。
純はミンが心配でならなかった。死が怖いのと同様
人はどうすることもできず、予測もつかない状況に直面した時、恐怖を味わう。
さらにそこに足音でもしよう物なら……
不気味な笑い声とともに足音が響き渡る。謎の足音の主が純の耳元に囁いた。
「神の魂は貰った……楽しませてもらった。せいぜい殺されないようにな。スゥーー」
息を大きく吸ってそいつは耳元で叫びやがった!
ううう…
耳が痛い!
純はあまりの衝撃とその声の大きさに怯んで膝をついてしまった。謎の男は笑いながらどこかへ歩いて行った。それにしても純が不思議に感じたのは周りにいる人誰一人としてあの大声に反応しなかったことだ。
まさか、あれは自分だけの妄想だったのか?
そんなことを考えながらやっと起き上がって、目を開いた時、最初に襲ってきたヤクザの死体を残して、謎のピンクの煙とヘルメットを被ったヤクザの死体はなくなっていた。
ミンの姿もなくなっていた。




