第十三話 スネーククイーン前編
間合いに入った。
「参る!」
2人はほぼ同時に踏み込んだ! 剣と剣がぶつかり合う。加藤が仕掛けた突きをスネーククイーンは上手く弾く。その後スネーククイーンが仕掛ける連撃を加藤はかわす。そしてまた剣と剣が何度もぶつかり合う。剣戟はより激しくなる。
「基本はできてるようだな蛇女」
スネーククイーンは口から何か吹いた。毒針だ!
加藤は剣戟の衝撃を活かして大きく下がって毒針をかわす。
「基本だけじゃないわ。応用もできるのよ」
スネーククイーンは左手から毒針を投げ、加藤がそれを弾く間に詰め寄ってきた。向かって来たスネーククイーンに加藤は日本刀でこたえる。
剣戟が続く。合間合間、スネーククイーンは毒針を投げる。合間合間、加藤は銃を撃つ。
「あんたなかなかやるね。これはどうかしら?」
スネーククイーンが床に手を置く。
すると地面がぬかるんできた!
「なっ!」
「どう? 身動きが取れないでしょ? ここまで来れるかしら?」
加藤は必死に歩く。足がゆっくりと上がりようやく一歩進むことができた。スネーククイーンはジャンプして大きく後ろに下がる。そして刀を収めた。笑っている。
「どういうつもりだ?」
「第二ラウンド開始ってとこかしら? 処刑よ! ここまで来てみなさい!」
スネーククイーンは毒針を取り出し、両手を使って大量に投げ続けた。雨のような大量の毒針が襲いかかる。
「なんの!」
加藤は弾く! 弾く! とにかく弾く!
そして一歩ずつゆっくりと相手に向かって歩いていく。加藤は考えた。これ以上やってもすぐ限界がくる。リボルバーは……確か後一発は残ってたはず。
賭けるしかない。スネーククイーンは笑いながら毒針を投げ続ける。
「諦めてもいいのよ。一本でも刺されば一瞬で死ねる! 毒針はスキルで作るのよ。ここはそういう世界。チートがまかり通るのよ」
加藤は弾き続ける!
「おい、ウッドはな……」
「無駄よ。あなたの話なんて聞かない」
「お前を誰よりも大事に思ってたぞ! ハナ!」
スネーククイーンは手を止める。動揺して左目を見開いて、
「その名で呼ぶんじゃない!!」
ズドォーーン!
「あっ……」
ぬかるんでいた地面は元に戻った。銃弾は彼女の心臓をとらえていた。彼女は右胸の下を抑えた。
「なんで私の……名を……知ってるの? なん……で私……の心臓の場所を」
ウィークショット。このスキルはスネーククイーンの心臓の場所を見破った。
「ウッドの元へ行くんだな」
加藤は冷酷な目でスネーククイーンを見た。リボルバーに弾を装填する。スネーククイーンは倒れそうだった。出血が激しい。
しかしスネーククイーンはまだ諦めなかった!
右ポケットから注射器を取り出し心臓に打ち込んだ。
「はぁーはぁーはぁーはぁー……」
ドクン! ドクン! ドクン!
心臓が動く!
「まだよ。加藤春樹……まだ終わってない! 心臓に打ち込んだこの薬と我らの……吸血鬼族の力を使えばできる禁断の技! 強制蘇生!」
左目が紅梅色に変わる。紫の髪が赤色に変わる。背中から翼が生える。牙が生える。スネーククイーンは手をブルブル震えさせながら刀を抜いた。加藤は驚いて
「カオルさんを襲ったのはやっぱりお前か。吸血鬼だっけ? 二度殺す必要がありそうだな。」
「カオル……アイツは死ぬ! ウッドは私を見なかった! 私は……さびしかった。1人だった」
「カオルは仲間だったんだろ。アイツはお前を1人になんかさせていない。それに、ウッドだってお前を見てなかった訳じゃない! みんな……みんな……みんな不器用だっただけじゃねえか!」
スネーククイーンは少し黙った。
そしてじっと加藤の顔を睨んで、
「ならなんでウッドを殺したの?」
と聞いた。加藤は驚いて
「俺は。殺してなんか……」
問答無用と言わんばかりの勢いでスネーククイーンは斬りかかって来た。加藤はそれを弾こうとした。しかし、あまりのパワーに吹き飛ばされた。スネーククイーンは追い討ちに口を大きく開ける。
ジョアアアアアアアアアアアアアアア!
強力な超音波を放つ! 加藤はそれをマトモに受けてしまった。
「100回。いや、1000回殴られた気分だ」
スネーククイーンはゆっくりと加藤の元へ歩み寄る。
「さてさてどうしたものか。」
加藤は立ち上がり刀を構える。
一方ミャンは長い廊下を走り、見つけた部屋を一つずつ確認していく。
急げ! 急げ! はやくしないと自分の母親、自分にとって最後の家族が死んでしまう。もう失いたくない。守れなかったのだから救うしかない。間に合え。
あれはミャンが5歳になった誕生日。パパとママが誕生日を祝ってくれた。ウッドおじさんやハナさんも来ると言っていた。ジョンさんも忙しいけどママに呼ばれたからきっと来てくれる。にぎやかなパーティーになる。
誰かが来た。パパが笑顔で玄関に向かう。
「おや、誰かな。いらっしゃい!」
ドアを開けた瞬間、パパは襲われた。パパはなんとか生きようとしたけど重症を負った。変な音がしたからミャンとママは駆けつけた。奴はそのタイミングを待っていた。私たちが来たその時、パパを目の前で殺したのだ。
「全く、油断するなんて戦士として情けないわ。もっと楽しませてくれると思ったんだけど……」
その時背後からジョンさんが奴に斬りかかった!
「うおおおおあー!」
勝負にならなかった。
ジョンさんは半殺しにされた。奴は笑いながら帰って行った。あの悪夢を忘れない。
ミャンは次の部屋に入る……違う。
次の部屋を見る……違う。
次の部屋に向かう。
扉を開けた瞬間大男の姿が見えた。奴は槍を投げて来た! ミャンは槍を掴んで止める。貫通することは防いだが、腹に槍の先が刺さる。
「ウッ……」
大男は笑う。彼は黒い帽子を被っている。黒い革のジャケットを着ている。髭も生えていて丸のサングラスをしている。
「プハハハハ! 姉ちゃん! 僕が銃を持ってたら死んでたよ。まだ槍で良かったね。こいつはどうかな」
大男が指を動かすと槍が動き始めた。槍が体に押し込まれる。このままじゃ深く深く内臓まで槍が進んでしまう。ミャンは両手で槍を掴み、力を入れて槍を抜こうとする。
「僕の名前はボアさ。ゆっくりと時間をかけて戦うのが好きなんだ。遊んでおくれ」
「急いでいるの! あなたと遊んでる時間はない!」
ミャンはやっと槍を引っこ抜きボアに投げる。ボアが指を動かすと槍は止まりゆっくりとボアの所に戻って行った。
「この槍は僕の言うことをしっかり聞くんだ。偉い子だろ。かわいがってくれ」
そう言ってボアは槍で突きを仕掛けてくる。ミャンは日本刀を抜きとっさに槍を受け流す。5、6回槍で突きをされたがミャンは全て受け流す。
「ほお……こいつはどうかな。」
ボアは槍を大きく振りかぶりミャンに向かって叩きつけた! 速すぎて避けれないと思い、ミャンは受けた。刀が折れそうなくらい力が強い。ミャンは踏ん張っている。ボアは笑う。
「槍はね。叩くと瓦を何枚も割るくらい強い力を持つんだ。この攻撃を受けるとは、相当の手練れかゴリラか。フフフッ。しかし後何回耐えられるか」
フン!
と勢いよく槍で何度も何度も連続で叩き付ける。ミャンはそれに合わせて力を入れ、何度も踏ん張った。
相手も疲れて来た。ミャンはそれを狙って次の攻撃を返し、胴体に攻撃を当てる。
「グハァ! まさか斬られるとは面白い!」
ボアは笑いながらもう一度攻撃する。次はバットのように横に振って来た。ミャンはなんのこれしきと槍を受けたが、なんと槍が刀に触れた途端、生き物のようにミャンの体に巻き付いてきた! そして槍は完全にミャンに巻き付きミャンを締め付ける。
「言っただろ。この槍は僕の言うことをしっかりと聞くんだ。今から君を4時間かけて絞め殺す。全身の骨を折ってね。しっかり時間をかけて」
「あっあああっやっんだあっあっ」
ミャンは苦しそうだ。槍による圧迫はどんどん強くなる。ボアはニヤニヤしている。
「僕に出会ったのが運の尽きだ。僕と君とでは差が大きいのでね。ん?」
何者かが両足をボアの首に巻き付けてボアにしがみついた。そしてボアの喉に刃物をあてる。
「すぐに離しな! 私の大事な娘なんだ。」
髪は白いままだがそこにいたのはカオルだ。
「どけ! いいところなんだ!」
ボアは刃物を無視してカオルを左手で引き剥がし投げ飛ばした。
「死ね!」
すぐに槍を元の状態に戻し、突き刺そうとした。
ギャーーウィーーーン!
銃声が鳴った。
カオルに気を取られ、ミャンを放してしまったため、ボアは顔面を撃たれてしまった! サングラスが割れている。ミャンは荒れた呼吸を整えて母親に話しかけた。
「もう元気なの? 解毒剤は?」
カオルは親指を立てて、
「体はなまっているし、老化もしたけどバッチリ。それでさ、解毒剤って何?」
「ママ大変! ママの寝ていた部屋はどこ?」
ミャンは必死になって訴える。カオルはやれやれと思いながら娘を連れて戻ることになってしまった。
ジョン、彼は屋敷を完全に包囲させた。
「スネーククイーンめ。なぜだ! なぜ見張りの1人もつけない! まるで俺達を呼んでるみたいだ」
「私も分かんなーい。ノーライトだね」
「ヒカリ。変な話し方をやめろと何度言ったら分かるんだ。お前は立派な騎士団の一員なんだぞ」
「あっかんべー」
ヒカリという名の少女はあっかんべーをしてどこかへ行った。ジョンは腕を組んでいる。そしてしばらく考えた後、部下を呼んで指示した。
「スネーククイーンを倒せるのは今しかない。ヘンドリュー将軍を呼ぼう」
部下は驚いて、
「し、しかし、最近の将軍は機嫌が悪いですし、何より怖いです」
「だが彼がこの王国で一番強い。スネーククイーンも相当強いとの噂だ。それに頭もいい。将軍の力を借りよう!」
ヘンドリュー将軍。魔王亡き後統制のとれなくなった魔物の軍をいくつも壊滅させ、英雄となる。その後、新魔王と何度も対決し、今に至る。魔王との戦いで負った火傷を隠すため一日中、常に兜を被っているという。この世界の人間達を支配する王国の中で最も強い、最強と呼ばれているのがこの男だ。
ジョンの部下はヒカリを連れてやってきた。
「ヒカリ様が将軍と連絡をとってくださりました。来てくださるそうです。ヘンドリュー将軍!」
「私チョーー怖かったんですけどもう!」
ジョンは笑って、
「まさか将軍が来るとは思うまい。スネーククイーン……お前はもう終わりだ」




