第十一話 インダ・コイズミの正体
インダは激怒した!
こんな屈辱は初めてだ。首に刀を突き刺され、吹き飛ばされたからだ。首から血が垂れる。
次の瞬間、インダの首の出血が止まった!
空気が変わる!
スゥーーーーー。
加藤とミャンは呼吸を合わせ、インダと睨み合う。
バッ!
加藤とミャンが同時に飛び出した! インダは両手から触手を伸ばして攻撃する。インダの触手は素早い! 当たれば人間の体など容易く切れてしまうだろう。加藤とミャンの2人は立ち止まって攻撃を防ぐ。生き物のようにクネクネと動きながら襲ってくる触手の動きを読むのは難しい!
2人とも防御している間、肩や脚から血を流した。切られたのだ!ミャンは小刀で反撃し、触手を刻む! しかしすぐに再生され、触手の薙ぎ払いを腹に受けてミャンは吹き飛ばされた! 両手からの触手2本が加藤を襲った!
「終わりだ! 死ぬがいいさ!」
インダは笑っている。
加藤も笑った。そして左から来た触手を左手で掴み、右足で踏み付けもう一本の触手を斬る!
「お前の攻撃はもう読んだ……」
加藤は左足で踏み込み前進する! インダは引き下がって触手を再生させて攻撃する。だが加藤は一歩も引かない。インダは焦る。
激しい攻防が繰り広げられた! 加藤が防ぎ、触手を斬る! インダが触手を再生させ、攻撃を続ける!
この光景を見たミャンは日本刀の達人の恐ろしさを目の当たりにした。体力、握力などの身体能力ではミャンが上回るものの、インダの複雑な攻撃を見切る加藤には敵わない!
加藤は全ての攻撃を見切り、触手を再び斬った後、再生の隙を狙って首を狙う!
インダは焦った顔をしながら口を大きく開けた。口から触手が何本も束になって出てきた。それは一斉に襲いかかる!
しかし、加藤はすぐさま床スレスレまで体勢を低くし、インダの両足を斬った! 転倒しそうになり、体勢を崩すインダに追い討ちを仕掛け斬り刻む!
インダは倒れた。触手を再生させる気力もない。
加藤は剣先をインダの眉間に当てる。
「覚悟しろ。それとウッドを撃った理由を教えろ!」
加藤が怒鳴った後インダはボソッと何か言った。
「バーニング……ボッ……ム!」
「大変!」
ミャンが加藤を両腕でガシッと掴み、そのまま一緒にインダから離れた。
ドカーーーン! インダが爆発した!
とんでもない威力だった。
「ミャン、お前がいなけりゃ死んでた。ありがとう」
ミャンは首を振って、
「まだ、まだアイツは生きてる!」
真っ黒な煙の海から男が姿を現した。
インダ・コイズミが再び現れた!傷も消えて服も元通りになっている。元通り? いや、前より綺麗になっていると感じるほどだ。インダは眼鏡をクイッと整えて
「俺は多くの異世界を旅し、何百年も生きてきた!
そして兄弟達も知らない俺だけが習得した能力!」
「兄弟達は何百年、何千年と死を怯えながら生き続けているが、俺は違う! 俺は不死だ! 何をされても死なん! 神も魔王も俺を殺すことはできん!」
加藤とミャン驚愕した。相手が本当に不死なら為すすべがない。だが、落ち込む訳にもいかない。加藤はインダに向かって話した。
「お前も魔王と同じ、異世界を自由に移動できる存在。トラベラーなのか?」
インダは答える。
「なるほど……お前達は俺達をトラベラーと呼ぶのか。面白い。そう、俺は魔王とかつては同じ魂で、同じ体で生きてきた。世界崩壊の力で魂が分裂してしまったが、いずれは元に戻る!」
加藤がもう一度話かける。
「俺は親友の恋人、石井ミンを探しにここに来た! どこにいる?」
「魔王の所だ。まだ死んでない。俺は偉大なる神への祈祷があるのでな。帰る」
インダが背中を見せた。ミャンが逃すまいとインダの頭を刺す! 小刀はインダの脳天に命中し、深く刺さった! しかし、インダは全く動じずミャンを無視して歩く。
「待ちやがれ!」
加藤もインダの所へ向かう。インダはミャンを突き飛ばし、加藤の方を向く。頭には小刀が刺さったまま。血が流れている。加藤とインダのにらめっこが続く。インダが上を見上げた。
加藤も上を向くと頭上に何やらゲートのようなものが発生していた。それはブラックホールのように黒色やら紫色やらが混ざっていて、ビリビリと電流が走っている。人間1人分くらいの大きさで、そこから何者かが出てきた!
加藤はすぐに離れて刀を抜く!
ミャンは武器がない。ミャンが戸惑っているとインダは頭な刺さった小刀を抜き、勢いよく投げつけた!
小刀はミャンの顔を狙って一直線に飛んできた!
危ない所で加藤が小刀を弾いた。まさに危機一髪であった。
「兄弟、あとは頼んだ」
インダはゲートからやってきた男にそう言って立ち去った。
ゲートから出てきた男は左手がなかった。フードを被っており、顔には包帯が巻かれている。右目も失っているように見える。武器は持っていない。
「異世界から来たのか? ミャン、こいつただものじゃないぞ」
ミャンは小刀を拾い、頷く。
「貴様が加藤か。親友の高道純は死んだぞ。ククク…加藤春樹! そしてそこの女! 私の空手で沈めてやる」
「空手は人殺しの武道じゃねえぞ。にわかが……それに、俺の親友が女残して死ぬ訳がねえ」
加藤の言葉に反応せず、空手男は右手を握り、手を振り上げて思いっきり振り下ろした! 地面を殴ったのだ!ミャンが加藤に、
「きっと何かのスキルよ! 全方向注意して!」
「何か来る前に殺すまで!」
加藤がリボルバーを取り出し、銃口を奴に向けた瞬間、地震が起きた! ほんの一瞬の揺れ! だが、それによって加藤は大きく姿勢を崩す!
敵は一瞬にして間合いに入り、加藤の頭を狙って拳を振り下ろした!
ズドォーーン!
大きな轟音! 男が悲鳴をあげる!
ミャンは地震の揺れにびくともしなかった。人間離れした体幹だ。すかさずコルトパイソンで敵の拳を撃った! 親指と人差し指が吹き飛んだ!
「グォオオオオオオ!」
男は怒り狂い、ミャンに蹴りをしかける。だが背中を見せた男の後頭部に加藤は銃口を突きつける!
勝負は一瞬で決まった!
「クソ! クソ! 殺してやる!」
「動いたら撃つぞ!お前の負けだ」
加藤は銃を向け、ミャンは小刀を向けた。加藤は尋ねた。
「おい!高道純が死んだってなんの話しだ? 後、お前の兄弟は何人いる? 魔王とインダはどこにいる?聞きたいことが山ほどある」
「何を聞かれても答えない。無駄だ」
「それはどうかな? なあミャン! こっちは無理矢理にでも吐かせるつもりだぜ」
ミャンは頷いて、
「はやく喋った方がいいよ。爆竹まだ余ってるし」
ミャンはニコッと笑った。
サディストコンビは拷問してでも情報を得るつもりだ。しかし、相手は動じない。
「俺はそこらの犬とは違う。兄弟を売らない。狼は飼いならせない。餌付けしようと痛めつけようと。三国志の孫権が関羽を飼えなかったように」
男は左を向く。
「おい、動くなって言った……」
そして勢いよく頭を右に360度回転させた! 骨の砕ける音が鳴った後、男は死んだ。




