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ヘルトリガーズ  作者: じゅんくん
Part1 異世界トラベラー
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第八話 恋

 時は25年前に遡る。

 この世界に1人の男がやって来た。


「異世界に1つ何を持って行きますか?」


「俺の部屋。最強の武器が揃ってらあ」


 男女が草原を歩いている。男の方が、草原に突然現れた小屋に興味を持っていた。


「俺ウッドだけどなんだあれ?」


「うるさいわね。変な喋り方しないでちょうだい」


「なんだよハナー。こんな何もない草原に小屋一つ。変な奴が住んでるに違いない」


 ハナ、後のスネーククイーン。ウッドとは幼馴染で小さい頃から一緒に冒険している。長い付き合いだ。


「興味ないわ。ウッド。あなた以上に変な人はいないもの」


「とにかく入ってみようぜ」


「人の話聞いてた? 私は行きたくないの。いい、男の子はね。女の子を楽しい所に連れて行くことが義務なの。そのために産まれてきたの」


 ハナはムッとしている。

「つまり俺はお前を遊ばせるためだけに産まれてきたのか? 俺はお前の犬か何かか?」


 その言葉を聞いたハナは表情を明るくして


「おおー、理解できたようね! そう。あなたはワンちゃん、偉いわー! とても賢い。いい子いい子!」


 ハナは笑顔でウッドの頭を撫でる。

 ウッドは不満そうだ。


「はやく行きましょ。こんな所にいたって仕方ない」


 ハナははやく行こうとウッドの手を引っ張る。

 ウッドはまた何か見つけたようで、


「おい、誰か来るぞ。おーーーい! おーーい!」


「何声かけてんのよ。頭おかしい人だったらどうするのよ?」


 謎の男はこっちにやって来て、

「あのう、私物を運びたいんだ。手伝ってくれ」


 これが全ての始まりだったのかもしれない。

 その後、彼の部屋にある物を運んでいるうちに暗くなり、3人は安眠屋という宿に泊まることになる。そこで3人は初めてカオルに出会った。


 そこから何があってか4人でパーティーを組み、旅をすることになる。物語の始まり。

 謎の異世界者、ムードメーカーのウッド。明るくて無邪気なカオル。少し色っぽい大人のカオル。

 みんな強くてとてもいいメンバーだ。


 1年間冒険した後のある日、ハナとウッドは2人で酒を飲んでいた。


「こうして2人でいるのも久しぶりね」


「そうか」


「だってあなたずっとカオルちゃんといるじゃない?好きなんでしょ? カオルのこと」


 ウッドは顔を赤らめる。


「やっぱりね。話なら聞くわよ」


「いい、いいって。そんなんじゃねえ」


「フフッ、アハハハハハ!」


 久しぶりに楽しかった。


 でも、言うべきだった。


 寂しかったって。



 時は現在に戻る。


 3人は気付いていないが5人がミャンを囲んでいた。一斉に襲えば武器などなくても3秒で殺せる。


「な、なんなの? キャーーーーー!」


 ミャンが突然捕まってすごい速さで遠ざかって行く。


「ミャンーーーー!」


 加藤は焦る。ホラー映画のように、飛んで行くかのようにしてミャンは遠ざかる。


「待ってな兄ちゃん、俺がお前の女助けてやるよ」


「ウッド。ショットガンじゃ……」


 ウッドは笑った。ショットガンを捨て、腰に付けていたキーホルダーを握る。


「最小化解除!」


 ウッドがそう言うとキーホルダーは巨大化し、斧になった。


 バンッ!


 床を破壊するほどの踏み込みでウッドはミャンに追いついた。斧を勢いよく振る!


 ぎゃああああああああああああああ!


 3人は吹っ飛んだだろう。とてつもない威力だ。ミャンは振り落とされた。


「いててて」


「透明か……意味不明なことしやがって面倒くせえんだよ!」


 ウッドはバットのように斧を振りかぶる。衝撃波が透明人間達を吹き飛ばし、着ている透明着を破壊した。


「ミャンに何しようとした? みんな死ね!」


 バンガンバンガンバンガンバンガンバンガン!


 明らかになった敵の位置に加藤は正確に銃弾を当てた!


「はあっはあっすぅーーっ」


 1人生き残りがミャンの首を絞めようと背後から襲った! ガシッ! とミャンの首を絞める!


「うっ……あっ。ううう……私の…プリケツにキスしやがれクソ野郎!」


 ミャンはいつぞやのジャパニーズセクハラワードを叫び、刀を勢いよく後ろの敵に突き刺した! 

 ギャア! と苦しみながら敵は倒れた。まだ生きている。


「やああああああああ!」


 ミャンは叫びながら相手をめった刺しにした。


「はあっはあっはあっはあっ」


 加藤はミャンに駆け寄り両手でミャンの肩を持ち、なだめる。ミャンの息はなかなか落ち着かない。


「大丈夫か。悪いな。俺が守ってやらねえからお前をこんな目に。いつもそうだ。いつも」


「いいの。気にしないで」


「それよりも、春樹くんが教えてくれた魔法の言葉。勇気が出たよ。ありがとう」


 加藤は少し安心して、


「いいか。とりあえず日本刀を返せ。こっちの方がお前を守りやすい」


「ダメ。今だけは、自分を守らないと。もう、ピンクちゃんはいないし、春樹くんだって命を狙われている。ミャンなんか守ったら……」


「そうか……とりあえずやりたいようにやりな。だが、危ない時は俺が来る」


 男のよくやる守らなければいけません的なお約束みたいなのは時としてウザくなる。女だって自立する。強くなる。ミャンだってそうだ。

 ウッドは腕を組みながら辺りを見渡す。


「あーあ、店荒らしやがって。片付けするの嫌だな。なあ、お前ら今度片付け手伝ってくれよ」


「もちろんです」


「ハハハッミャンちゃんは良い子だ!そうだ兄ちゃん、まだ名前聞いてなかったな」


「加藤春樹だ。マスター、棚にある酒飲んでいい?」


「好きにしろ」


 ウッドは加藤の隣に座り、


「なあ、俺も10代じゃねえ。30代でもうすぐ40になってしまう。そろそろ結婚したいと思ってな」


「いきなり何の話だ? ミャンならやらんぞ」


 ウッドは強い酒を注いでガブガブ飲む。


「今日、人形だったがアイツに久しぶりに会った。アイツがスネーククイーンになってからアイツの素顔を見ることは少なくなった」


「あの女か。確か昔仲間だったんだっけ?」


「そうだ。ずっといた。ミャンちゃんの父親に会うまで2人きりだった」


「恋をしていたのか?」


「当時はまず考えなかった。昔の俺はカオルに恋をしていた。馬鹿だよな。結局フラれるだけだった。フラれてもなお、カオルを気にしていたが彼女は旦那を失い、もう恋人なんて作る気ねえ。そんな虚し時、アイツを思い浮かべるんだ。これは恋なのか?」


 ウッドは話を続ける。


「分からねえ。そんなこと今まで考えたことがなかった。なかったのに、俺はアイツに会わない日が長くなるたび、今この瞬間も頭の中にはアイツがいる。

 怖い。怖いんだ。アイツの顔をいつか忘れてしまうんじゃないかって」


 ミャンが話に入った。


「会いにいけばいいんじゃないかな。普通に。悪の組織だろうが関係ないよ。彼女をびっくりさせちゃってもいいから会いに行こう」


「へっ女の子の考えることはユニークだな。会いになんて行けねえよ……」


 ミャンは机をバンッ! と叩いて、


「関係ないってば! 別に告白しに行く訳じゃないんだから顔忘れちゃうくらいなら会いに行ってあげて。追い出されてもいいから」


 この世の中には、子供が言うことが正しいことがよくある。大人は様々な考えをめぐらせ、物事を複雑にするが、子供の単純な思考こそ問題を解く近道だったりする。


 気まずいやら、こうされたらどうしようなどという無駄な感情が2人の関係を引き離しただけ。会いに行けばいいのだ。会いに行けば。


「考えてみれば、ミャンちゃんの父さんが死んでからカオルも何を考えてるか分からないし、ハナはスネーククイーンを名乗って訳分からない仕事をしている。全部あの時から。気まずい関係が続いたんだ」


 ウッドは酒を飲み、


「ハナとはずっと一緒にいたのに今はアイツのことが全く分からねえ」


 コイツいきなり名前で呼び始めたぞと加藤は思いながら口を開いた。


「これ以上何言っても無駄だ。俺達と行けば安全にスネーククイーンの元に行けるはずだ。明日出発だ! 店も汚ねえし、しばらく閉めちまえ!」


「そうだな。お前ら、ありがとう!」


 この日はもう遅いし、いったん安眠屋に帰った。次の日カオルにしばらく帰らないと伝えて昨日の酒場に向かった。


「寂しいわね。それにしてもウッド……懐かしいわね。ハナとウッド。ようやくくっつくのかしら。ウッドも私じゃなくてはやくあの子の元に行ってあげるべきなのよ。あの子はずっとウッドが大好きだから」


 カオルは独り言を呟いて2人を見送った。まさか娘が親友のキューピットになるだなんて。


 酒場に付くと店は荒らされたままだ。

 扉には”closed”の文字。


「おいウッド。腹決まったようだな。行くぞ」


「ところで、お前ら飯は食ったか? カウンターに飯置いてるから食えよ。うまいぞー。俺は外の奴らに水やってくる」


「外のやつ?」


「植物だ。乾燥したところに住んでるから水やりは一週間に一回ほどでいいんだが、遠出する前にやっとかないと不安でな」


「なるほど。ミャン、せっかくだし食うぞ!」


「おじさんありがとうね」


「感謝するのはこっちの方さ。俺は人生が変わりそうでワクワクしてるんだ。前までハナに会うのは怖かったが今はとても楽しみなんだ」


 恋に年齢は関係ない。今ウッドは恋をしている。

 ジョウロを持ってウッドは外を出た。植物達に水をやる。空を眺め深呼吸する。こんなに早起きしたのもいつぶりだろうか。



 ボタン……ウッドはジョウロを落とした。


「ガハッ!」


 そしてウッドは倒れた。地面に血が広がる。


「ウッドーー!」


 加藤が叫んだ!

 ウッドの胸から血が出ている! 大量出血だ! 

 ミャンは数秒無言のまま止まった後、席をすぐ降りて涙を流しながら、


「嫌だ、嫌だミャンがすぐ治すから」


 ミャンはウッドの元へ走る。それを加藤は止めようとミャンの襟の後ろを強く掴む。その瞬間ミャンの顔を銃弾がかする。


「は、離して……」


 加藤は目に涙を浮かべながら、


「駄目だ。スナイパーはウッドを瀕死にして俺達が助けるのを待っている。行ったらおしまいだ」


「離して! 自分のことは自分で守るよ!」


「死んで欲しくない。守るとかそんなんじゃない」


「うっううっ」


 ミャンはようやく収まってくれた。それにしてもこの異世界、本来は銃など存在しない。持っている人物で把握しているのは加藤とウッドと魔王だけ。だが、魔王がわざわざ今こんな方法で襲うとは考えにくい。


「ウッド! 聞こえるか。這いずってなんとか俺たちの所に来れないか? まだ間に合う。ミャンが助けてやる。おい! ウッド! ウッド!」


「肺を……やられた。もうダメだ。助からねえ。伝えてくれないか。ハナに、俺は愛していたと。気付かなかった俺が悪かったと」


「馬鹿野郎! そんなもん……人生を変えるんだろ。ここに来い! なんとかする」


 ウッドが動くと血が噴き出した! もう一発ウッドに撃ち込まれた。


「グアーーー! うぐっうぐっ。駄目だ。奴ら、こんなこと想定内だ」


 加藤は新しい案を提案する。


「ウッド! 鍵借りるぞ。スナイパーライフルを取ってくる。ふざけた野郎を殺してやる!」


 ウッドは鍵の位置を指差し、口を開く。


「お前から見て西寄りに40度程の方角に高い建物がある。そこからだ。ハァハァ……ウッ……失敗……したら、トイレの前のじゅうたんを…めくれ。下にハッチがある。そこから裏口に抜ける」


 加藤は急いで店の奥に入る。階段を下る。下る。

 これだ! 今行く!


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