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音のない歌詞

擦過傷

作者: 渋音符
掲載日:2020/07/16




 ぴりぴりする。

 痛いのかな? いや、違う。

 ちょっと、ぴりぴりするだけ。

 じくじくするだけ。


 ちょっと、コンクリートで()っちゃって。

 ほら、肘の辺りに、こんな小さな傷。

 ちっちゃい絆創膏(ばんそうこう)と、(つば)で十分だよ。

 心配してくれて、ありがとね。


 なんか、こういう傷って、気になるよね。

 いや、そんなに、痛くはないんだよ?

 骨折とかした時の方が、もっと痛かったかなぁ。

 でもねでもね。

 こういう擦過傷(さっかしょう)って、さ。

 ぴりぴりするよね。

 じくじくするよね。

 血が、さ。ちょっとずつ、さ。

 出てる感じが、するのよね。

 

 傷がさ、あったかいんだよ。

 傷があると、あったかいのね。

 そりゃあ、おっきい傷は、嫌だけどさ。

 こんなこと言っちゃ、君に怒られるけどね。

 こんな傷なら、いくらでも歓迎だよ。

 生きていることを、直に、肌で感じられるから。


 全身を擦り傷で覆ったら。

 どれくらい、あったかいんだろうね。

 君の腕くらい、あったかいかなぁ。

 ………うそだよ?

 君の腕の中の方が、あったかいに決まってる。


 ぴりぴりする。

 痛いのかな? いや、違う。

 ちょっと、ぴりぴりするだけ。

 じくじくするだけ。


 擦り傷だらけの、わたしのこと。

 あなたはきっと、ぎゅっとする。

 だよね?



 

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