あいとアイ どっちと行くか
いつか 母さんと また 幸せに
いつか 母さんを 助けて 一緒に 暮らせる
わたしは 信じて いた』
涙を流しながら引き摺られるようにして、あいは、外に出て来た。
アイが私達との通信が切れた事を、作戦の失敗と判断して、助けに来たのだった。
アイとその仲間達は、わざと手薄にされていた施設を、簡単に制圧して、私達のいる地下の最深部まで駆けつけたようだ。
放心状態の、あいを私が腕を引き侵入したとは別の階段を登って行く。
「外は 警備兵が 集まって来ている
早く 都市の外へ
ワタシ達の造った 町が ある 今は そこに 急ぐわよ!」
「コロニーの他に、町があるのですか?」
エージェントA0が、驚いたように聞き返す。
「ええ あなたと 愛には 車に乗ったら 目隠しを してもらうから
一応 念の為 今更 裏切られる事は 無いと思いたいけど
それと 荷物は 全て 置いて行って もらうわ 服も着替えてね」
アイは、エージェントA0と私に告げる。
「それは、盗聴器や発信器の為ですか?」
「そうね そして 頭の装置を書き換える スキャンもするわよ」
「頭の装置を書き換える?」
私は不安な言葉に驚く。
「頭に 生まれてすぐ 付けられた装置は 知ってるわよね?」
「それは知ってるよ」
「その装置は 脳機能の補完 特に翻訳や会話のアシスト機能をしていると言われているけど
機能を書き換えておかないと 位置情報や 生体データを 取られる可能性があるのよ
噂レベルの話しだったから 本当の所は 分からないけどね
ただ 今回の事で 愛やエージェントA0の 正確な居場所を 突き止められているから 噂は本当だったのかもね!」
「アイ達は 書き換えたの?」
「ワタシ達は 都市を脱出してすぐ 書き換えたわよ」
私は頭の装置が、ただの会話に字幕を付けてくれる機械程度にしか、考えていなかった自分を恥ずかしく感じた。
アイを先頭に施設を脱出してみると、外は火に包まれ、夜にも関わらず明るく真っ赤になっていた。
「どーして こんな事に
あい達以外にも 何か テロの作戦計画 あったの?」
「都市政府は この期に 主だった反政府勢力を 潰すつもりで いろいろな 処刑事情を 流していたのよ
殆どの 組織は 囮の偽事情だと 考えていたけど 本当に コロニー関係者が 処刑されて 焦った
それで 多くの組織は 実績のある あい達の組織が 都市に潜入するのと 同じタイミングで 自分達の大事な人を 助ける為に 攻撃を 仕掛けたと言う話しよ」
アイはそう説明すると、合流地点へと急ごうと走り出す。
「ケント ケント達は!」
放心状態だった、あいが突然叫ぶ。
「ケント? あいと一緒に来ていた 組織の人達?
彼等は あい達が 通信途絶したのと同じタイミングで 大規模な爆発音と共に 連絡が着かなくなったわ」
確かに、近くにあった筈の彼等の入って行っていた建物は、姿が変わるほどに破壊され、火に包まれている。
「助けに 行かなきゃ!
わたしが あの人達を 巻き込んでしまった!」
あいは叫び声上げて、燃え上がる建物に向かって走る。
建物の入り口は、完全に潰れている。
「この入り口からの 潜入が難しかった時の為の 別の入り口が あったはずよ!
きっと そっちの方に 逃げてるはずだわ!
アイ! 場所 知ってるわよね!」
あいはアイを見る。
「ここからだと ワタシ達の合流地点とは 反対側なの
今でも 脱出には ギリギリの時間なのよ!
助けに行く余裕も無いし この建物の状態では 助けに行くだけ 無駄だわ!」
「そんな事いいから! どこか 教えて! 助けられるかもしれないじゃない!」
アイはこんな所で、無駄な時間を使いたくないと、もう一つの入り口の場所をすぐに教える。
「ワタシ達は 合流地点に向かうわ
あい達は 自分達の逃走手段を用意している筈よね
それなら ここでお別れよ お互い無事に逃げましょう」
あいとアイはお互いに握手をして頷き合う。
「愛とエージェントA0は ワタシ達と一緒に 脱出するわよね?
もう この都市には いられ無いだろうし」
「ええ、そうさせて、もらいます。
あと、エージェントA0では無く、アオと呼んで下さい。
親にはそう呼ばれていたので。」
「ええ 分かったわ アオ
それで 愛はどうする?」
「私は 」
「愛には わたしと一緒に来て ケント達を助けるのを 手伝って欲しい!
愛の力があれば 少しくらい 建物が崩れてても 通れる道を 作れるでしょ!」
私は、あいとアイを見て。
「あいと一緒に 行く!
あいを助ける為に 協力してくれた人達を 見捨てられないよ!」
私はあいの後ろを着いて走って行く。