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元就の野望~全国版~。わたしはガチャを駆使して補佐します  作者: 那田野狐
第9章 九州騒乱編

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第11話 豊後上原館の乱(中編)

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- 豊後(大分南部)上原館 -


「おお、失礼した。(それがし)、大友家の家臣で吉岡左衛門尉と申す」


 そう言ってギョロっとした目の坊主頭は頭を下げる。大友家家臣で吉岡というと吉岡長増さんか?


「お初にお目にかかります。左京大夫さまの食客ですけきよと申します」


「お初にお目にかかります。同じく貫蔵と申します」


 俺と今川貫蔵さんは、事前に打ち合わせていた身分を語り揃って頭を下げる。


「ほう?かなりの手の方とお見受けいたす」


 吉岡長増さんはじろりと俺達の手を見る。たぶん俺と今川貫蔵さんの手に剣ダコがあるとか見ているのだろう。


「はは、ありがとうございます」


 今川貫蔵さんが苦笑いしながら答える。


「で、その飲み物は何でしょう?修験者の秘薬で?」


「大麦を殻付きのまま焙煎して砕いたものを水に浸した麦茶という飲み物です。お飲みになりますか?」


 麦茶自体は麦湯と呼ばれていて、平安時代の昔から公卿の間で飲まれていたりする。これはお手軽に飲めるというのがミソかな?


「麦茶、というのか。頂こう」


 吉岡長増さんは俺から竹筒を受け取るとグビリと飲み干す。凄いな。飲むのに躊躇しなかったよ。


「いいな。ただ水を飲むよりこちらの方が良い」


 吉岡長増さんは笑った。


 - 三人称 -


 上原館の一室、人払いして大内義興と大友義鑑の二人だけで会談が行われていた。大内義興は筑後で自分と誼を結んでおる筑後の国人から苦情が来ていることを大友義鑑に告げ、圧力を控えるようにいう。


「はあ、それはあまりお約束できませんぞ、義父上」


 大友義鑑は薄く嗤う。ちなみに大友義鑑の正室の父が大内義興である。


「はぁ、まあ程々にしてくれれば嬉しい」


 大内義興はがっくり肩を落として溜め息をつく。


『おい止まれ、ぎゃあぁ』


 ドカドカという足音と喧騒が上原館に響き渡る。


「何事だ」


 大友義鑑は叫ぶ。


「大内高弘ご乱心!」


 外で控えていた小姓の一人が叫びながら飛び込んでくる。


「「なんだと?」」


 大内高弘という名前に奇しくも大内義興と大友義鑑の声がハモる。大内義興は周防(山口南東部)から追い出して二度と会う事はないと思った弟が?大友義鑑は身柄を拘束したはずの人間が屋敷に乱入してきた?ということにだ。


「見つけたぞぉ義鑑!うん?まさかそこにいるのは周防の兄上ではないか」


 壮絶な笑いを張り付けた大内高弘の全身は血塗れだった。それが自身の血なのか返り血なのかは判らない。というか、何故ここまで侵入できたのかが大友義鑑には判らない。


「はん。子飼いを使っていろいろヤラセせているのはお前らだけの専売じゃないんだよ」


 大内高弘は大友義鑑の困惑顔に満足そうな笑みを浮かべる。そしてわらわらと数人の鎧を着た男たちが大内高弘の後ろから現れる。


「ご乱心ご乱心、不忠者を討て」


 廊下に大声が響き渡る。


「くそっ」


 大友義鑑はとっさに部屋に戻るが、大内義興と会談するにあたって人払いをしたとき刀を小姓に預けて下がらせたことを思い出す。


「しねぇ」


 大内高弘が刀を振り下ろす。「ざしゅ」という音ともに大友義鑑の額がぱっくりと割れる。しかし本人の身体能力のお陰か掠った程度で致命傷には至っていない。


「うおぉぉぉ」


 咄嗟に大内義興が大内高弘に飛びかかる。


「ひっこめ」


 大内高弘は、どかりと大内義興を足蹴りにして引き剥がすと大内義興めがけて刀を振り下ろし、大内義興はとっさに右腕を払うように上げてこれを防ぐ。切断こそされなかったが、大内義興の右腕から大量の鮮血が飛び散る。


「しね」


 大内高弘はもう一度刀を振り上げたが、その瞬間「ドスン」と鈍い音が響き渡る。そして「がらん」という音と同時に床に刀が落ち、続いて石礫というには不自然に丸い石が二つ床を叩く。


「間に合ったか?」


 右半面は嗤い左半面は泣いているように見える道化師の仮面を装着した男と真っ赤なハートマークを描いた覆面を装備した男が大内高弘と大内義興の間に身体を滑り込ませてくる。


「貴様ぁ」


 数秒遅れて、大友家家臣である吉岡長増が飛び込んできて大内高弘目掛けて刀を振り下ろす。


「ぎゃあ!」


 まさに袈裟切りという太刀筋で大内高弘の右肩から腰に向かって鮮血が噴き出す。


「おい湯を沸かせ!部屋を用意しろ、典医を呼べ。傷を塞ぐぞ」


 道化師の仮面を装着した男が叫んだ。

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