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元就の野望~全国版~。わたしはガチャを駆使して補佐します  作者: 那田野狐
第4章 東部戦線 戦あり編

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第2話 大内氏が安芸(広島)に侵攻してきた

1520年(永正17年)11月


 高橋久光さんが討たれて半月が経った。高橋久光さんを討った三吉軍はその勢いのまま近隣の国人である久代氏、杉原氏、上原氏、楢崎氏などの援軍3000騎を得て高橋氏の本拠地である石見(島根西部)本城を包囲。元就さまの後詰めの軍は三吉軍が石見本城に至る道すがら落としていった城を奪還しながら三吉軍を背後から急襲。撃退に成功すると、三吉軍を追って再び加井妻城を目指して進軍を開始したという。

 史実と違うのは高橋・多治比(毛利)連合軍ではなく多治比氏による単独進攻だ。高橋久光さんの弔い合戦なのに高橋軍が出てこないのには理由がある。

 元就さまの側近で唐芋(サツマイモ)教の敬虔なる信者である志道広長さんとその父である志道広良さんが、石見の江の川と出羽川が合流する口羽地域にある矢羽城に入って城を明け渡さなかったのだ。

 この矢羽城は、出雲(島根東部)と石見銀山を望める好位置にある城なので、将来的に石見進出の際に押さえるべき城だとして献策していたのだけど、どうやら好機と見て占領したようだ。

 形としては三吉軍に奪われた矢羽城を多治比(毛利)軍が奪還したって事なんだけど、近くにある幡屋城は高橋氏初期の本拠地だからこの行動に警戒している。同じく奪還した近隣の幡屋城は高橋氏に還したのだから尚更だ。


「うーむ。志道家が優遇され過ぎてるな」


 吉田郡山城での本家での評定からの帰り、志道広門さんが唸る。芸南を睨む三入高松城と石見を睨む矢羽城。どちらも要衝で志道家が守ることになることで妬まれることを危惧しているようだ。


「備後方面は本家の重臣に任せるのでは?」


 俺の指摘に志道広門さんはふむと頷く。これからの高橋氏との交渉次第だが、たぶん矢羽城から東にある三吉氏が占領した高橋氏の領地のいくつかには毛利から近隣に領地のある渡辺氏か本家と多治比家どちらにも縁がある井上氏の誰かが派遣されるだろう。

 これにより、四方を毛利氏の城に囲まれ援軍の当てが無くなる宍戸氏は毛利に従属するしかなくなるはずだ。史実通り高橋領の一部を割譲して婚姻関係を結ぶ辺りで話を付けて支配下に収めるはず。

 確か元就さまの次女「しん」さまが宍戸氏に嫁ぐ・・・あぁ、毛利家当主の祖父であった久光さまが亡くなり、関係も若干悪くなったいまなら長女「たま」さまも嫁候補になるのか。


「で、お主は石見矢羽城の縄張りのために出向と」


「領地の祭りも無事終了しましたし、三入高松城の空堀にも目途がつきましたからね」


 そう。高橋氏に矢羽城は返すつもりがないということをアピールするために矢羽城を改修することになったのだ。担当は俺。三入高松城に来た腕っぷしもよさそうな人足を50人ほど引き抜いて現地に向かうことに。ついでに畝村にいる開墾ゴーレム、木こりゴーレム、鉱夫ゴーレムも力作業はできるのでこっそり移動させるつもりだ。



「三四郎。ちょっといいか」


 矢羽城改修のための縄張りをしていた俺に志道広長さんが声を掛けてくる。


「これは太郎三郎さま。いかがなされましたか?加井妻城が落ちましたか?それとも武田が三入高松城に攻めてきましたか?」


 俺の返しに、志道広長さんはわずかに顔を歪めるが、こほんと咳払いをすると手に持っていた書状を手渡してくれる。その書状には、周防の大内義興軍4000が安芸に侵攻してきたことが書いてあった。大内義興軍の総大将は陶興房。

 この事を知った元就さまは三吉氏と和議を結ぶべく交渉をしているらしい。


「今回の大内侵攻の目的は、緩んでしまった安芸国内の引き締めでしょう」


 最終的には尼子氏を安芸(広島)に釣り出すための策だろうけど、状況だけ見ればいまの安芸は武田氏、吉川氏、毛利氏、高橋氏が尼子氏にすり寄っていて大内領が東西に分断されつつある。

 しかも、1508年に大内義興につき従って上洛し京で客死した厳島神主家当主の藤原興親の後継者問題が親族の間で起きている。武田氏や近隣の国人の支援を受けている友田興藤が有利で大内氏に従属している小方重康※(たぶん加賀守)がかなり不利だ。


「おそらく相手は武田光和。ただ・・・」


「ただ?」


「佐東銀山城を攻めるにしては兵数が少ないですね」


 そう。先代の武田元繁は3年前の有田城攻めに5000人を動員して見せたのだ。有田城の戦いでそれなりに名声は落ちたが、城に籠れば4000の兵に負けることはないだろう。尼子氏を安芸に釣り出したいのなら数が少ない。武田氏が救援を求めたら尼子氏についた毛利が後詰めを送る必要があるぐらいだ。


「太郎三郎さま。上野介(広良)さまにお願いして殿に手紙をお願いします」


「親父殿に?それは構わんが」


 志道広長さんにお願いして、元就さまに手紙を書いてもらうことにする。今年、吉川氏に誘われ元就さまと高橋久光さん主導で毛利家は親大内派から親尼子派に舵を切った。しかし、毛利宗家の家臣にはそのことに納得してない親大内派の人間がいる。

 今回の大内軍の安芸侵攻で親大内派の家臣が騒ぎだせば、尼子経久さんから圧力がかかる可能性がある。事前に毛利家内の意見を統一させるか、親大内派の人間を切り捨てるか、元就さまには今の内に決めて貰わないとね。

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