第1話 戦国モノのWeb小説みたいな大河ドラマが視たくなったらしい
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真っ白な世界に意識が飛んだ。なぜそう言えるのか?どう視線を動かしても手足を動かしても俺の身体が見えないのだ。漫画で言うなら幽霊になって空を漂ってる。そんな感じ。
「よう来た若いの」
俺の前に現れたのはギリシア神話に出てくる全能の神ゼウス・・・によく似た老人。というかビックリ男チョコのSゼウスといったほうがいいな。額には星印があって、胸の鎧には神という字のマークが描いてある。たぶん俺のもつ神というイメージの投影なのだろう。
「貴方は死にました。なまんだーぶ」
Sゼウスさんはお悔やみの言葉と称名念仏として称える言葉を唱える。
「お前の信仰する宗派に合わせたお悔やみの言葉じゃ他意はない」
見透かされている・・・
「お主の事じゃ。もう。ある程度の事情は察しておるのじゃろ?」
はい。あれですね。Web小説定番の異世界転生。チートな武力で敵をゴミのように蹴散らす無双をするもよし。現代知識でいろんな便利道具を生産したり農業技術を伝授して内政チートで時間を大きく進めてもよし。
「そうじゃ。あれはええの。儂も読んでとても楽しんでおる」
Sゼウスさんはうんうんと頷く。
「それでな。儂は天之御中主神たち三神が造った日本の戦国時代を舞台にしたWeb小説がとても大好きなんじゃ」
剣と魔法の異世界の神さま(見たまんまでした)であるSゼウスさん。毛色の変わった日本の戦国モノのWeb小説みたいな大河ドラマが視たくなったらしい。
小説でもなく漫画でもなく大河ドラマ。で、白羽の矢を立てたのが、Web小説ではイマイチ人気の低い毛利元就(神さま調べ)。
毛利元就。有名な戦国武将でありながらWeb小説の主人公としては存在の薄い人物だ。安芸(広島)の小規模な国人領主の次男として生まれ、兄や兄の息子が急逝すると毛利家当主の座につき、権謀術数を駆使。
安芸(広島)・周防(山口南東部)・長門(山口北西部)・備後、備中(岡山西部)・伯耆(鳥取西部)・因幡(鳥取東部)・出雲(島根東部)・隠岐(対馬)・石見(島根西部)を所有する戦国大名となった毛利家中興の祖。
ただ世代的には、戦国時代の煌く星である織田信長、羽柴秀吉、徳川家康の親の世代の人だ。京より東を物語の舞台にすると、元就の孫である輝元がフルボッコされるラスボスとして出てくるのが関の山だったりする。
で、俺が毛利元就に転生でないのは、勢力が拡大したとき元就では自由度がなくなるからだそうだ。意味がよく解らない・・・
一応、「大河ドラマというなら毛利元就なら既にあるだろ?」と言ったら、Web小説的展開・・・つまり、歴史改変ものが良いのだと力説された。まあ、歴史改変モノのドラマは少ないから言いたいことは何となく解るけどね。
あとジャンル的には逆行転生ではなく、Sゼウスさんによって1514年(永正11年)までの地球の歴史を完全コピーした異世界への転生らしい。これは自分の勝手で天之御中主神たちの世界を棄損させないための処置だということだ。でもなぜ俺なんです?
「そりゃあお前なら、毛利のために全力を尽くすだろう」
自信満々に答えるSゼウスさん。毛利元就は俺の郷土の英雄。さもありなんである。
しかし、そうか。小田英信は地球の輪廻の輪に入ったか。
「いや、あれはブラックが東に」
え?なにか言いました?
「いや、何でも。では次にお前の身体とお約束のチ-ト能力じゃな」
Sゼウスさんは持っていた杖をかざす。見る間に白い空間に一人の少年の身体が創り上げられていく。神さまなだけあって人を造るのはお手の物らしい。
どちらかというと四角い顔の輪郭。太い眉。きりりとした目。どこかで見たような少年が創り上げられていく。
で、Web小説の定番として貰った特典は。
・病気に掛からない。怪我をしても即死でない限りは大丈夫という15歳の丈夫な身体。(転生特典)
・エクスチェンジボックス付き1日1回限定ガチャ箱。(技術補助特典)
・地球の情報に接続できるタブレット。(情報補助特典)
・アイテムボックス。(定番特典)
ただし、スキルは習得しないとダメなので(逆に鍛えればスキルが得られるらしい)身体を鍛えるのは決定である。
「転移する場所は・・・ここでええか。では頼むぞ」
「はい」
俺は元気に返事をするのであった。