第1話 三河は沼。いいね?
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1535年(天文4年)12月
- 京 山城(京都南部) 施薬不動院 -
僅かな収獲を終えた近江(滋賀)で、大規模な検地が行われた。近江では大飢饉の予兆があったので、検地のついでに川、道、耕作地の整備が行われ、民には賦役と称して動員し金と食料をバラ撒き餓死者が出ないように差配する。ただ、美濃(岐阜南部)と三河(愛知東部)で近江以上に酷い大飢饉が発生。食料を求め大量の難民が隣国へと流入しており、織田、浅井、朝倉領では難民と農民との間では衝突が発生しているという。
「首領。三河岡崎の松平次郎三郎が、尾張(愛知西部)に攻め込みました」
ふらっと部屋の陰から現れた二代目世鬼煙蔵くんが報告をする。松平次郎三郎は徳川家康の祖父である松平清康のこと。ここ数年、頻繁に尾張に攻め込んでは略奪の限りを尽くしているとは聞いている。今回の侵攻は恐らくこの夏の洪水被害の補填だとおもうが、史実的には森山(守山)崩れという死亡フラグなんだよね・・・
「斯波殿に何か支援を?」
「そうですね・・・松平の情報を提供してください。松平の状況を知れば三河を攻めるでしょう?」
松平清康はいま西三河で一番勢いのある若き英傑だが、近隣の国人領地をたびたび略奪してまわるので恨みを買うことも多かった。史実で彼の死後に松平一門で争いが絶えなかったのも彼が原因だったといって良い。
彼がこの戦で排除されれば、西三河は暫く混乱することになる。まあ、史実だと尾張攻めを唆したのは今川で、その後三河に出てくることになるのだが・・・
「斯波殿には是非とも遠江(静岡大井川以西)を目指して貰いたいのです。北上して越前に色気を出されても困りますからね」
理由を説明すると、世鬼煙蔵くんも納得したような顔をする。商業を重視する織田信秀さんだと、松平清康を討ち取ったとき一向宗蔓延る西三河より、近江、越前(岐阜北西部を含む福井嶺北)、信濃(長野及び岐阜中津川の一部)に道が繋がる美濃(岐阜南部)を抑えるために兵を出す可能性があるんだよね。なら織田氏の主家である斯波氏の目を遠江に向けてやればいい。遠江の奪還は斯波家の悲願だからね。
「まあ、今川も東を武田に塞がれている以上は勢力拡大のために三河に来るだろうから、とっとと潰しあえと言うのが本音なんですけどね」
「実に清々しいですね・・・」
世鬼煙蔵くんは苦笑いするけど、史実と違い駿河(静岡中部から北東部)、遠江(静岡大井川以西)、伊豆(静岡伊豆半島)、相模(神奈川の大部分)を領する今川氏輝さんが武蔵(東京、埼玉、神奈川の一部)、上野(群馬)、安房(千葉南部)上総(千葉中南部)、下総(千葉北部)を領する武田信虎さんと激突する可能性は低いんだよね。斯波氏と今川氏で三河を巡ってくれれば時間が稼げて有難いというのが偽りのない本音なのだ。
「武田に横から掻っ攫われ・・・ああ、うちが東海地方を東に進むときは海から支援ができるから問題ありませんね」
世鬼煙蔵くんはポンと手を叩く。うん理解が早くて助かる。畿内は予想以上に荒れていたから、復興する時間はあればあるだけ良い。仮に東海道を武田氏に取られても、近江より西をガッツリ安定させてから東海道を取りに行ったほうがいい。
近江を取ってすぐに無理に尾張に手を出しても、近江あたりで復興作業をサボタージュされたり武装蜂起されても困るからね。
「斯波殿に情報を提供する策は煙蔵くんの名で稟議を上げて。すぐに通すから」
「御意」
世鬼煙蔵くんは大きく頷く。
「ああ、そうだ」
立ち去ろうとする世鬼煙蔵くんを呼び止める。
「折角だから押していきなさい」
俺はアイテムボックスからガチャを取り出す。
「よ、よろしいのですか?」
「はは、子が出来た祝いですよ。遠慮なくどうぞ。ああ、できれば紙おむつを願ってください。圧が凄いんです」
恐縮しきりの世鬼煙蔵くんにそう声をかける。そう畝方一門は年頭にあった朝顔婚姻の際の大集合が理由か、空前の出産ラッシュである。
そして先日、朝顔に妊娠の兆候が表れたことで完璧となった。みんな好きよね!俺もだが!!なお元就さまのところも子供が出来たらしい。
「何が出るかな、何が出るかな、ちゃらぁららら、ららららぁ、ぽちっとな」
世鬼煙蔵くんが『吟じます』みたいな口調でガチャ箱のボタンを押す。いや、いいんだけどね。
がしゃん。ぽん。
R キャベツのタネ100粒×100
ジャガイモに続き欧米で貧農家を支えた救荒植物来たな・・・キャベツは世界最古の野菜のひとつでビタミンCやビタミンUを多く含む薬としても活用されたことのある野菜だ。耐寒性が高いので夏に種を撒いて冬に収穫することができる貴重な野菜。そしてビタミンCを含む保存食として長い航海の壊血病予防食の材料でもある。
ガチャ、ぽーん
室町幕府の管領が足利一門という家格が必要ということなので168話で元就を足利一門で没落している畠山長経の養子にして家格にあう足利一門へと引き上げたことを追記しました。まあすぐに意味なくなるでしょうが




