第7話 魔王
魔王初登場シーン
魔王城
第126代魔王シャイターンは、玉座に座り、家臣からの報告を受けていた。
「我が君、フランツィア領ラスカム王国の首都アラバードを陥落しました。」
「よくやった、ルドラ。あとで褒美をやる。」
魔王はひざまづいている家臣、四天王の一人ルドラの手を取ると、口付けを与えた。
「ラスカムが手に入ればパイプラインが繋げる…」
シャイターンは呟いた。
「ラスカム国内にいたフランツィア軍は?」
「撤退しようとしていましたが、1人残らず殲滅しました。」
ルドラは胸を張って答える。
「住民の被害は?」
「特に戦闘が激しかった地区はもはや何も残っておりませんが、事前に襲撃予告ビラを配っていたおかげで被害は最小限に食い止められた模様です」
「そうか。…これでまた一つ、植民地が解放された。」
シャイターンはそう呟くと、玉座を降り、窓から階下の景色を見下ろしながら言った。
「今、世界の実に半分がブリジット王国やフランツィア王国、ルーシー帝国など列強の植民地となっている。このままでは魔大陸が植民地化されるのも時間の問題だ。植民地化されてしまえば、財産は没収され、人民は奴隷のように働かされるだろう。」
魔王城の外に広がる世界を見渡す彼の顔には、憂愁の影が差していた。
「だが、そうはさせない。私が魔王である限り、命をかけても魔大陸を守る。それが、この残酷な世界で私に課せられた使命だから」
「我が君、報告が…あります」
その時、音もなく1人の女が謁見の間に現れた。
「ヴィーシャか…なんだ?」
四天王の1人、ヴィーシャは彼に促され、報告した。
「ブリジット王国が勇者召喚に成功…しました。」
勇者召喚、という言葉にシャイターンは反応を示した。
「そうか。して、勇者はどんな人物だ?」
「あくまで私の印象…ですが…普通の少女…のようでした。しかし…勇者である以上、脅威であることに違いありません。どうしますか…消します…か?」
彼女は物騒なことを言う。
「いや、それではテンプレに反してしまう。やはり魔王は魔王城で勇者を迎え入れるべきだ。」
魔王は他の家臣にとってよく意味が分からないことを言った。だが、ルドラは反駁する。
「そんな、〝てんぷれ〟というのがなんなのか自分にはよく分かりませんが、我が君のお手を煩わせるわけには参りません!」
「そうだな、何の対策もしないわけにはいかないか…。ヴィーシャ、勇者はどのルートを通ってくると予測する?」
「はい…」
ヴィーシャはどこからか地図を取り出し、魔王に献上する。
「本来ならこのルート…を通ってくるはずですが…ここが激戦区になっていることを考えると…迂回してくる可能性…もあります。…となると、おそらくこのルート…を通ってくるでしょう」
シャイターンは彼女の地図を睨み付け、考えた。
「そうか。…であればルドラ、勇者に挨拶をする必要がある。」
シャイターンはにやりと笑った。
「威力偵察も含めて、な」
「承知いたしました。」
ルドラは返事をすると、すぐさま自分の仕事に取り掛かった。