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第31話 潜入!魔大陸

魔王軍は、大陸へ進軍する拠点として世界大戦が始まって間も無くの頃、早くもルーシー帝国の一部を占領した。そこは、ルーシー帝国の帝都とも離れていて、国防も疎かな地域だったため、割と簡単に侵略できた。帝国側も奪還作戦を練っては実行しているが、やはり不便な土地であること、元々あまり重要視されていなかった地域で、さらに連合軍との戦況悪化など様々な要因が重なり、未だに奪取に成功していない。


今日も、魔王軍側の兵士は監視を続けていた。とはいえ、ここ最近驚くほど何事もないため、兵士の士気も下がっていた。寒い地域だったため、上官は中で賭博に勤しみ、もっぱら下っ端に監視をやらせていた。


「はーあ、つまんねぇ。俺も中で遊びてえよ」


とある新兵はあくびをしながら言った。


「おい、滅多なことを言うな。今も最前線で戦ってる同志がいるんだぞ」


それを見ていたもう一人の新兵が注意を促す。


「ああ、そうだな。こんな楽な職場に回してくれただけ感謝しないと」


彼は一応働いてる素振りは見せようと、基地の外に目を向けた。すると、1人の人間がこちらに向かってくるのが見えた。


「おい、誰か来るぞ」


人はどんどんこちらに近付いてくる。新兵たちは警戒心を露わにした。


「なんだ、サイか。」


しかし、人物の顔を確認し、2人は胸を撫で下ろした。彼もまた、同じ兵士だったからだ。


「お疲れ。お前、その荷物どうしたんだよ」


サイは、見慣れない大きめの荷物を運んでいた。


「これか? ああ、上に運んでくるよう頼まれたわけなんだよ」


「そうか。まあ、とりあえず通れ」


見知った顔ということもあり、大したチェックもせずに新兵はサイを通した。


「ありがとな。そういえば、大陸へ行く船着場ってどっちだっけ?」


「船着場ならここを曲がって向こうにあるが…本土に帰るのか?」


「いや、この荷物を本土に運ぶよう頼まれたわけでな…」


「そうか。」


サイは、大きな荷物を引き摺りながら船着場へと向かった。

丁度、船が出発するところだった。サイは、大きな荷物があるからと広めの個室に入った。

彼は個室の扉を閉めると、施錠し、荷物を開けた。


「はあ、やっと外に出られたわ。それにしても息が詰まるわね」


「なんとかうまくいった」


荷物の中からリーザと紫が出てきた。不意に何もない空間が揺らめき、ラティーファも姿を現した。


「はあ、本当見張りの兵士がやる気のない馬鹿で助かった。」


サイの姿はそのままに、声だけはキャサリンが喋った。

魔大陸に侵入するため、バラディのメンバーは作戦を練った。まず、適当に1人の兵士を捕まえ、彼の体液を入手する。リーザが彼の体液を使った魔法薬を調合し、それを飲んだ人物は彼そっくりの容姿に変身できる。そこで問題が生じた。姿はそのまま変身できるが、声だけは当人のまま。そこで、誰が一番彼の声真似が上手いか試した結果、キャサリンに白馬の矢が立った。

キャサリンが兵士サイに扮し、デカい荷物を引き摺り、荷物の中に紫とリーザが隠れる。ラティーファは、自身に幻術をかけ、うまく姿を隠した。

こうして、4人はまんまと魔大陸へ行く船に乗ることに成功した。


船はまもなく魔大陸の入口に着いた。サイに扮したキャサリンは、そのまま何食わぬ顔で船を降り、ゲートを抜けようとした。


「待て」


しかし、ゲートにいた審査官に呼び止められた。


「その荷物はなんだ? 最近出来た規則で大陸に出入りする荷物は全て調べることになっている。」


厳つい顔をした審査官は職務を全うしようと、キャサリンの持っていた荷物を開けようとした。


「まあ、まて、その荷物は、上から運ぶように頼まれたものでな…絶対に開けるなと言われているんだ」


キャサリンは慌てて言い訳をし、彼を止めた。


「そうなのか? その上司は誰だ?」


「ええと…」


キャサリンは言い淀んだ。頭をフル回転させ、上手い言い訳を探すが、思い付かない。審査官も怪訝な顔でこちらを見ている。絶体絶命のピンチに陥った。そう思った瞬間、急に審査官が態度を変えた。


「悪い、引き止めちまったな。もう検査は済んだから、行け」


「は、はあ…」


彼は笑顔でキャサリンを見送った。

ピンチを察したラティーファが咄嗟に幻術を使い、窮地を凌いだ。

魔大陸に潜入したバラディは、早速魔王城を目指そうと動き出した。ところが、魔大陸は思った以上に未開の地だった。淡々と荒凉とした大地が広がっているのみで、鉄道などの交通網もないため、自力で移動するしかない。紫はあることを思いついた。


「これ、錬成できる?」


彼女は紙にさらさらと簡単な車の設計図を描いた。


「ええ、もちろんよ。」


リーザは地属性魔法で土を設計図通りに錬成した。すると、簡単な車が出来上がった。


「キャス、あなたは普段爆弾を作っているんだから、これもできるよね?」


紫はキャサリンに天然の魔石を渡した。キャサリンは早速作業に取り掛かり、見事車に魔石エンジンを取り付けることに成功した。


バラディのメンバーは簡易車で広大な魔大陸を移動し、ついに魔王城がある城壁都市へと到着した。


「ここが魔王城ね」


都市の中心部にそびえ立つ城を前に、紫は拳を握った。


「私が全て、破壊する」


紫は復讐の炎を瞳に宿していた。


「この町でテロを起こし、混乱した隙をついて城に潜入する。でも、土地勘がないからどこを攻めればいいのか分からない。まずは、情報収集ね。」


「分かったわ」


「情報収集なら私に任せて!」


「了解」


皆、頷くと、それぞれ作業に取り掛かった。

皆が行ってしまった後で紫は一人呟いた。


「まるでこちらがテロリストになった気分ね。いえ、ここにいる人たちからしてみれば、私は彼らの故郷を破壊する、立派なテロリスト。結局、何が正しいのかは最後に勝った人間が決めること。もし、魔王討伐に失敗すれば、私は大罪人として裁かれるだろうね」

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