第27話 資金集め
「ここを抜けると都市に着き、砂漠は終わり」
「長い旅路だったね」
砂漠を横断する長い旅も終盤に近付いた。これまで、本当に色々あった。砂嵐に遭遇したり、盗賊に襲われて撃退したり、本当にハードな旅だった。
「やっと砂漠を抜けられる! もう、この銀糸の美しい髪も砂だらけ! 都市に着いたらちゃんとした宿でゆっくり湯浴みしたいー!」
確かに、キャサリンの美しい銀髪は砂でくすんでいた。
程なくして3人は都市に着いた。早速宿を取り、中で休憩を取った。
「ラティーファ、砂漠の案内をしてくれてありがとう。おかげでここまでこれた。ご苦労様でした」
紫はラティーファに金銭を渡そうとしたが、彼女はそれを頑なに拒否した。
「報酬はいい。ユカリは、私の恩人だから。」
「そう。それで、これからのことだけど、私たちは魔王を討伐する旅を続ける。あなたとはここでお別れ。元気でね、さようなら」
紫の言葉にラティーファは泣きそうな顔になった。
「え、ラティーファ追い出しちゃうの? 彼女の能力は便利だし、戦力になると思うけど? 第一、ここで彼女を放っぽり出してあんた行く宛はあるの?」
「…ない。私もバラディのメンバーだと思ってた」
ラティーファが悲しそうな表情をし、キャサリンは紫を非難するような目で見た。
「…わかった。ラティーファを正式にバラディのメンバーにする。私たちの目的はただ一つ、魔王を討伐すること。」
こうして、ラティーファはバラディの正式なメンバーになった。
「まずは、資金集めをしないと」
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『バラディ』は、資金集めをするため、船で滞在している都市から近いオットマン帝国の首都イスティクラールに飛んだ。イスティクラールは、西洋と東洋の狭間にある都市で、全体的に西洋でありながらところどころオリエンタルな雰囲気も残っている。大規模な都市なので、当然ギルドもあった。
「なにこれ、すごい綺麗な建物! 中入ってみたーい」
ギルドに行く道中、キャサリンは城壁に囲まれた広い建物を見つけ、大騒ぎした。
「そこは宮殿。スルタンが住んでいる場所だから、一般人は入れない」
ラティーファが冷静に補足情報を加えた。
「なーんだ」
「宮殿よりも、まずは資金集めよ」
紫も気になったので建物に目を向け、とある掲示を見つけた。それは、いわゆる賞金首の情報が載っている掲示で、その法外な額に惹かれた。これだけ資金があれば道中困ることはない。紫は迷いなく目当てのチラシを引き剥がし、懐に入れた。
宮殿の近くで騒いでいる紫たちを見つめている者がいた。マントを羽織り、顔も隠している、いかにも怪しげな人物。彼の目線は宮殿を見て目を輝かせているキャサリンに注がれていた。
「この依頼、受けたいんだけど」
ギルドに着いた紫は例によって応接室に通され、直接ギルドマスターと面会した。紫は先ほど入手したチラシをテーブルの上に置いた。
「これは…不可能ではないですが、彼は犯罪集団を率いるボスで、S級犯罪者に指定されています。相当な実力者でないと…」
「私たちの実力に不安があると?」
「いえ、決してそういうわけではございません。そうですよね、Sランクの勇者様にはぴったりの任務だと思います。」
Sランクパーティー『バラディ』の記念すべき初任務は、Sランク任務、S級犯罪者の討伐となった。
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「ラティーファ、お願い」
「了解」
ラティーファは自身の能力を使い、賞金首の居場所を探した。彼女の茶色い瞳が赤く染まる。
「見つけた」
「はやっ! で、どこなの!?」
「場所は…」
ラティーファの案内通り皆はイスティクラールの町を進んでいく。町は活気があり、海の近くだからか開放的な雰囲気だった。この国の宗教の関係で1日5回、町中にお祈りを促す音声が流れる。ラティーファも同じ宗教の信者らしく、お祈りの時間になるとどこかへ消え、しばらくしてからまた戻ってくる。曜日によっては宗教施設に行くこともあるらしい。
だんだんと人気のない場所へ進んでいき、ついに廃墟と思しき建物に辿り着いた。
「ここにいるはず」
「いかにもアジトって感じの建物だね。なんか、懐かしいかもー。なんちゃって」
キャサリンはへらへらと笑いながらも目は座っていた。
「それで、どうする?」
「正面突破よ。まず私が一人でアジトに突っ込んでいって賞金首を探すから、あなたたちはここで待っていて」
「ちょっとまって。それじゃ、私たちがいる意味がないじゃん!」
キャサリンが紫の作戦に異議を申し立てた。
「あなたたちを危険に晒すわけにはいかないと思って…」
「私たちがただ守られるだけのお人形だとでも? 確かに、私は人形みたいに可愛いけど、ただ守られるだけなんて嫌! 私だって戦えるんだから!」
「それは私も同感。みんなみたいには戦えないけど、瞳術使いなりに戦える。なにより、私もバラディのメンバーだから」
「そうだよ! ラティーファの言う通り!」
「…分かった。じゃあ、やっぱりみんなで行こう。」
「そうこなくっちゃ!」
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物凄い爆発音が響き、煙が立ち込めた。キャサリンがアジトの入り口を爆弾で破壊した。混乱に乗じて彼女たちはアジトに乗り込み、賞金首を探した。結果、そこのアジトに目的の人物はいなかった。しかし、一度組織に目をつけられてしまった彼女たちが無事に帰れるはずもなく、最後は爆弾によって跡形もなくアジトを潰した。
「ここにはいなかったね。」
「大丈夫、私が幻術で他のアジトの場所を聞き出した。一つずつ探せばいい。」
「そうだね」
アジト探索が終わった頃にはもう日が暮れかけていた。夕日に照らされる町を3人は歩き、帰っていく。紫はふと、キャサリンの様子がどこか心あらずなことに気がついた。
「どうしたの、キャス?」
「なんでもない。もう今日の活動は終わりだよね? 私、ちょっと野暮用があるから行くね。バイバイ!」
「あっ…」
何か言う間も無く、キャサリンはイスティクラールの町に消えていった。仕方なく紫はラティーファと帰路に着いた。
「遅いね」
宿に着き、随分と時間が経ったにも関わらずキャサリンは戻ってこなかった。もう既に日は沈んでいる。
「ちょっと心配」
「まあ、あの子に限って何かあるとは思えないけど…。でも、あの性格だし、お調子者だから絶対とは言い切れない」
「その前も、なんかキャサリンの様子変だった。やっぱり何かあるのかもしれない。瞳術で、見てみる」
ラティーファは目を瞑り、再び開いた。
「大変! キャサリンが、宮殿に軟禁されてる」
「えっ! それは大変ね。助けに行かないと」
2人はすぐに宮殿に向かった。




